第102話 ファッションヤンキー、再び潜る
はい、ログインしました。今日の朝ご飯は珍しくおうどんだったので私とても嬉しかったです。さて、昨日は何といいますか、インパクトが強すぎでございまして?私、ドラゴンに会うなんてレベル的に段階すっ飛ばししている気がするんですけど……まぁ終わったこと言ってもしょうがないか。
というわけで、今日はとりあえず、例の洞窟にもう一度潜ってみよう。今回はクエストを受けずに自由にね?その方が色んな発見できそうだし!のりこめー
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洞窟内。私、バイク形態の犀繰に乗ってぐんぐんと奥に進んではいますが――
「あんまり変わりないのぉ」
『そうそう環境は変わらないぞ、姉貴』
私の手によってマザーファンキースパイダーを倒したわけで、捕縛されていた青龍トルネイアを救ったわけで、何かしらこの洞窟に変化が起こっているのではと思ってみたものの。現実は非情である。あまり変わらなかった。まぁ1プレイヤーが起こした出来事で何万人もプレイしているゲームで変化が起こっちゃあたまったもんじゃないよね。
しかし、それもそれで味気ないんだよね。出現してくるモンスターは皆犀繰の轢き逃げアタックで倒せるくらいのモンスターだから一々私が直々に戦うほどではない。そんな連中と降りて戦ったところで味気ないと思うだけだしね。それこそマザーファンキースパイダーぐらいじゃなきゃ……ところで、犀繰に任せてるけどこれどこに向かってんのかな?
「のぉ、犀繰。何基準に進んどるんなら?」
『ランダムに選んでいる』
「ラン……ダム?」
『前回のルートも記憶しているが、既に最初の分岐点から10ほどの分かれ道を進んでいる』
そういえばそんな指示出してたね。前回と同じじゃつまらないから適当に進んでくれーって思い付きで言っていたような。最悪これ一撃で死ぬようなデストラップを踏む可能性もあるのでは……!?でもまぁいいか、それもゲームだもんね。
「まぁええじゃろ、そのまま轢けそうにない敵出るまで進んどってや」
『了解だ』
聞く人が聞いたらクズと思われかねないなーと思いながらも私はその命令を撤回せず、犀繰のハンドルを握り締め洞窟内を走る。これ、どこに行きつくんだろうね……でもまぁそれもゲームか。
あ、またベビーファンキースパイダー轢いちゃったよ、これで何匹目?
そうして走っているうちに犀繰が足を……いや、タイヤを止めた。犀繰がタイヤを止める時、それは轢き逃げアタックが通用しない相手を指す。突然急停止をし、体を揺さぶられたがすぐに気を取りなおした私が見たものは……何か黒ずくめの人だった。
「な……ンだてめぇ!」
「いや、その台詞そっくりそのまま返すわ」
黒ずくめの人物……と言えばぱっと思い浮かべるのは情報屋だけど、彼ないし彼女は私と気づけばきさくに話しかけてくるだろう。知らないふりをするとするならその限りではないけど。
だがしかし、目の前の人物は私を見るや否や武器の短剣を取り出し突っ込んできた。であれば敵間違いなし!そして私がとる行動と言えば……とりあえず受けますかね、話はそこからだ。
黒ずくめは防御体勢すら取らず、悠々と犀繰から降車する私に一切の疑問は持たず、短剣を突き刺す。――私短剣使わないから知らないんだけどさ、これそんな正面から刺すような武器なの?不意打ち向きじゃないの?なんて軽く考えていたけど……それが間違いだった。短剣が突き刺さったかと思うと、私の体は痙攣し思うように動かなくなっていた。ステータス画面を見てみると麻痺!?
「なんじゃあ……!毒でも仕込んどるんかぁ!?」
「へ、へへ!んだよ見た目だけでビビらせやがって!だけど痺らせちまえばこっちのもんだ!おらあああああああ!!」
私が動けないをいいことに、黒ずくめは下卑た笑みを浮かべると次々と短剣をそれはもう楽しそうに私の腹部に突き刺す。流石に油断し過ぎた!?こうなったら犀繰に戦わせ……ん?
「おっら!」
"0ダメージ"
「オラァ!」
"0ダメージ"
「ヒャハハ!」
"1ダメージ"
「死ねぇ!」
"0ダメージ"
えっと、えぇっと……死ぬ気配一切ないのですがこれは。確かに麻痺で私動けませんよ?でも、ダメージ一切負ってませんが?あの、何か申し訳なく思ってくるんですけど。その状況に気付かないのか、黒ずくめは未だ攻撃してくるし……どうすればいいんだろう。
いや、ダメージが無いとはいえ、喰らいっぱなしじゃな駄目だよね。という訳で――
「おい」
「あぁん!?っ……!?」
はい、麻痺返しです。といっても威圧眼で睨み返しただけなんですけども、黒ずくめはまんまと私の目を直視してくれたおかげで麻痺ってくれた。そうなれば私がすることと言えば
「犀繰!轢け!」
『ウス』
動けない私の代わりに犀繰が動きだし、黒ずくめを轢き逃げアタック。彼奴は跳ね飛ばされ天に……あぁ、洞窟の天井にぶち当たっちゃったよ。すっごく痛そう……
だけど、黒ずくめは予想と反し、気絶したり死に戻りすることなくぴくぴくと痙攣している。割と丈夫なんだね。って私はそこで気付いた。
奴の背中に蜘蛛を象ったマークのような物がある事に。
え、厨二病?
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