第101話 ファッションヤンキー、実力の一端を垣間見る
はぁ、金華龍クリューソルスさんですか……そうですか。実感わかないなぁ。
最初はただの格好いい龍のワッペンだなぁと思っていたよ?そしたら青龍トルネイアと出会いましたよ?その次は火竜サラマーダと出会いましたよ?そしたらなんとなーく、この背中の黄金龍も実在する龍なのかなーって思っていた。いるんですね、元ネタ。
んで、サラマーダは今私の背のワッペンを見ている訳なんですけど。マジマジ見過ぎて鼻息がね?来るのよ。しかも熱風だし。
「うーむ、見れば見る程クリューソルスの躍動感をうまく表現できている。彼のものの信者が見たら崇め奉りそうだな」
「そんなに凄い龍なんか?」
「そうだな、世間一般には受け入れがたい龍かも知れぬ。見た目派手で口調も悪い。加えて傍若無人だからな。が、彼の龍は仁義を通す者だ。その姿に惹かれるものは少なからずいる。我も――信者ほどではないが、彼の龍を認めてはいる」
聞いた感じクリューソルスはアレだ、前田慶次に似ているね。本人とかじゃなくて漫画とかゲームに出てくる方の前田慶次。どのメディアにも漏れず派手だもんね。
まぁ別にそのクリューソルスがどんな人柄……いや龍柄か?でも私からしたらどうでもいいね。言うて背中にワッペン付けてるだけだし?クリューソルスに下ったわけじゃないし?
ところで――
「お前はいい加減に諦めんさいや」
「くそっ、ええやん乗らせてぇな!」
『姉貴か姉貴と相乗りでなければ許可しない』
相変わらずムラムラマッサンは犀繰に乗ろうと飛びついては躱されていた。人型に変形すればいいものを、犀繰は挑発するようにバイク形態のままだ。仲がいいようで何よりだけど……正直な話ムラムラマッサンの最前線組ステータスなら乗れるんじゃないのかな?ただじゃれてるだけ?
パックンさんは……何してるんですか、サラマーダの鱗をそんなに見つめて。
「ねぇ、サラマーダ。あなたの鱗をもらうことは出来るかしら?」
「ほう、ドワーフよ。我が鱗を欲するか……友の友故1枚なら構わぬぞ」
いいんだ。そこは腕試しをして認めさせたうえで贈呈される物じゃないんだ。ほら、パックンさんもポカーンとしながら空から落ちてくる鱗を受け止め、受け、止め……でかない?パックンさんどころか私よりも大きくない?これ絶対潰れるでしょ。私だったら潰れるね、自信あるよ。パックンさんだって……はーい、パックンさん余裕でキャッチできましたー実力の差をまざまざと見せつけられましたっと。
そんな時だ。
『姉貴、モンスターだ』
「あン?」
犀繰の呼び声に視線を向けると、なるほど確かに結構な大きさの虎型モンスターがこちらに向かって走ってきている。というか、虎さんや。こっちにドラゴンいるんですけど見えてないんですか?それともドラゴンなんてやっつけてやる!とか思ってるの?君私よりは強そうだけど私よりは弱そうだよ?
「ほう、タイガスか。オウカの弱さに気付いて来たか。それ故我をも見えぬとは疎かな種族だ」
え、アイツ私を狙いに来てるんですか?それを言語化されるとかなり落ち込むんですが?でも文句を言ったところで事実だからなぁ……パックンさん辺りに「事実じゃない」って言われること間違いなし。
しかし私じゃあれは処理できないかー。ってことで犀繰も無理。となると他の2人と1体に処理してもらわねば――
「しょうがない、ここは我が――」
「あ、ええで?もう終わっとるから」
サラマーダが「しょうがない」って言った辺りから彼がやっつけてくれるんだろうなと思ったけど予想が外れた。そもそもが終わっていた。サラマーダの言葉を遮りムラムラマッサンがそう言い、そのすぐに刀を鯉口にしまう音が鳴ったと同時にタイガスと呼ばれたモンスターは力なく沈んだ。
「はぁっ!?」
そんな光景を目の当たりにし間抜けな声が出たことを誰が責めることが出来るだろうか、いやいない。それほどまでに理解できなかったんだよ。仮に刀を振っていたとしてだよ?振るスピード見えなかったよ?振った時の「ブォン」みたいな音聞こえなかったよ?
そんでもってパックンさんも驚いてる。
「アンタ、また伸びたの?」
「そりゃもう。強くなってん、俺」
「前はあそこまで届かなかったでしょうが!?」
おや、パックンさんはムラムラマッサンが何をしたか分かっているご様子。チラッとサラマーダを確認すると「我の見せ場……」と呟いていた。何だこのドラゴン。
でさ、ムラムラマッサン。お土産にタイガスの素材はいらないです流石に人の倒した素材を受け取っちゃあヤンキーの名折れなんで……いや本当に犀繰に迫ったことは関係ないんで本当。
途中で変な横やりが入ったが、結局のところトルネイアは何者かに弱点を突かれ身動きが取れなかったところを蜘蛛に襲われたというのがサラマーダの考えということになる。はは、進展らしい進展ないってのは言っちゃダメ?さいですか。
時間は……おっと、そろそろご飯の時間じゃないか。ログアウトせねばお母さんに怒られちゃう。その件を伝えた所で、今回は解散ということになった。そしてその別れ際、サラマーダに小さな結晶のような物を渡された。
「これは我の爪のほんの欠片でな、もしお前を未だ敵だと勘違いしているトルネイアに会うことがあれば見せるといい。我がお前を認めているという保証になろう」
「……分かった。どーせ、今の俺じゃ絡まれても太刀打ち出来んじゃろうけぇな。有難く貰うわ」
そして私とパックンさんは再び犀繰に乗りドヴァータウンまで戻りログアウトした。――だって道中で勝てないモンスター出ても困るし……その点パックンさんといると安心だからね!
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