第104話 ファッションヤンキー、蜘蛛蜘蛛しい奴らと

「帰蝶、お前そんな風に呼ばれていたのか……」

「違う!違うのよリーダー!このヤンキーの狂言よ!」


 あの、私の背中ぶっ刺したまま金切り声あげないでもらえますかね?ゲームだから鼓膜が破れるなんてことは無いけど普通に不快ですので。

 それにしても呆れた様な偉丈夫をリーダーって呼ぶってことは仮面女も仲間か。にしても私の狂言とは失礼な


「嘘言うなや、お前実際に仲良かったのが気に入らなかったって言うとったじゃろうが」

「言いはしたけど!カップル云々じゃなくて仲良しこよしが気に入らなかったってだけ!」


 一緒では?


「帰蝶、それは一緒だろう」

「リーダー!?」


 ほら、偉丈夫も一緒って認めてるよー……でさー、こんな茶番してるんだけどさ私今毒状態みたいなんだよね。原因は間違いなく仮面女なんだろうけどさ。

 話している間にもどんどんと私の体力は削られていく。これはそろそろ動かなきゃ不味い。まずは背中の仮面女を外すところからだ。と言っても私は動かなくてもいい。1対2になったんだから……


「犀繰!」

『ウス』


 すぐさま人型へ変形を遂げた犀繰がバイルバンカーを構え仮面女――いや、偉丈夫リーダー曰く帰蝶か。――に攻撃を仕掛ける。まぁ帰蝶も黙って攻撃を受けるのは流石に避けたいのだろう、短剣を引き抜き女スパイのように跳躍しリーダーの横へと並んだ。にしても犀繰君?帰蝶が避けなかったら私諸共パイルバンカー喰らっていたわけだがどうお考えなのかな?あとでゆっくりと話そう。主にクリカラとな!?

 よし邪魔な仮面女も退いたことだし毒状態を回復させてもらおうかね。毒ポーションを使用。それにしても


「仮面女ぁ、お前帰蝶いうんか。じゃあリーダーは信長で、転がっとるのは蘭丸か?」

「残念、外れだ。俺の名前は……いや、別に言ってやる必要はないか。お前も名乗っていないんだからな」

「オウカじゃけど」

「名乗るのか。だがまぁ名乗らないがな。俺のことは好きに呼べばいい」

「分かった、横槍偉丈夫リーダーって呼ぶわ」

「土蜘蛛と呼べ」


 好きに呼べと言ったから好きに呼ばせてもらうと思ったのに。しかし、蜘蛛のマークに土蜘蛛って名前かぁ……いよいよもって蜘蛛推しが半端ないね。……蜘蛛か、最近本当に縁があるけど、まさか。


「のぉ話が飛躍して悪いんじゃけど、お前らこの洞窟の地底湖にいた蜘蛛とはどういう関係じゃあ」

「あら、それって冒険者ギルドの依頼の蜘蛛のことでしょう?やだ、こじつけは良くないんじゃないかしら?」

「こじ付けされかねない見た目しといてよく言うのぉ」


 進んで自供するわけないか。そもそも私の推察が間違っている可能性だってあるからね。

 だからと言って戦わないって選択肢は無いけどね。土蜘蛛は、私に突っかかってきた黒ずくめ君のとどめを邪魔されたし、帰蝶は初対面の時、辛酸をなめさせられた。この落とし前はきっちりと付けないとね。

 とりあえず1対1に持ち込ませてもらわないと話にならないね。土蜘蛛に構っている間に帰蝶にまた背後から刺されちゃたまったもんじゃない!だから相性的に良さげな犀繰に彼女の相手を務めてもらおう。


「犀繰、お前はあの仮面から性悪さが滲み出ている女を狙え。あの時のように轢いてもええけぇの」

『了解だ、姉貴』

「ちょっと、聞こえてるんだけど?」


 そりゃ聞こえるように言いましたからね。これで少しでも直情的な攻撃をしてくれれば犀繰も楽になる事だろう。私はバイク形態の犀繰に乗り込み発進させる。行先は勿論、帰蝶だ。

 勿論、あんな華奢な体の帰蝶に犀繰を迎え撃てるわけがない。間に割って入ったのは土蜘蛛だ。彼ならば犀繰を止めたり逸らしたりすることは出来るかもしれない。そして私はそれをさせるつもりがないわけで。

 サドルに脚を乗せ力の限りジャンプする!さっきの帰蝶のように華麗に跳べないのはご愛敬!いや、ヤンキーにご愛敬はいらないわ何言ってんだ私。その跳躍の行き先は勿論


「お前は俺と遊ぼうや」

「丁重にお断り願いたいがな」


 落下エネルギーとあらん限りの力を込めて振り下ろした不動嚙行の一撃を土蜘蛛はまたしても何気なく受け止め……いや、顔が少し歪んだかな?少しは意趣返しが出来たみたいでちょい満足だよ。

 運転手を失った犀繰はそのまま帰蝶の元へ。悲鳴と土を蹴る音から、どうやら回避されちゃったみたいだね。そっちは任せたよ、犀繰。私はこの横槍偉丈夫リーダーと楽しく遊ぶから!

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