第70話 ファッションヤンキー、ゴーレムとぶつかり合う
私の体とサイ型ゴーレムの体……正確には角がぶつかり合い、物凄い衝撃が走る。
まずはぶつかるなり吹っ飛ばされなかった自分を褒めて欲しい。今のところ、何とか持ちこたえ……駄目だ。踏ん張り所が適用されているはずなのに私は奴の力に押されて後退し始めている。相撲で言うところの電車道が出来ちゃってるよ。
うーん、しかしどうしよう。このままじゃ私攻撃できないよね。このまま吹っ飛ばされるのはちょっと癪なんだけれど……と思ったその時だ。
サイ型ゴーレムの方から爆発音が聞こえたのだ。ゴーレムの体の方もかすかに振動している気がするってところで私の視界が体の浮遊感と共に一気に変わった。
「あっ、空が近いのぉ……」
吹っ飛ばされましたねこれ!今はまだ上昇しているけれどそろそろ……そうだよね、いくらファンタジーな世界観でも重力は勿論存在するよね紐なしバンジー流行ったことないんですけどちょっと待って本当に怖い怖い!地面近づいてきてるマジすかこんなこと出来るんですかAFW!!
そして地面とキスですよ!ぶへぇ!
"パッシブスキル 踏ん張り所の効果が適用されました"
どうにか死に戻りせずに済んだみたいですねぇ……ヤンキーRP中じゃなければ悲鳴を上げていたことでしょう。そもそもヤンキーでもあれは普通に悲鳴を上げるのでは?我ながらよく我慢できたな。
あぁもう、さっさと起きないと恥ずかしい格好晒しちゃうよ。あれ、待って動けないんだけど。正確には体を横に動かせないんだけど。視界真っ暗なんだけど。
「おうい、君大丈夫かい?」
「誰かおるんか!?俺今どうなっとるん!?」
「君今ギャグ漫画みたいに埋まっちゃってるよ?待ってて、今引っ張り起こすから。」
おおう、背中が引っ張られる感覚。体が持ち上がっていくよ。ってか私埋まっていたのか……この助けてくれた人以外に見られてなきゃいいけど。
にしてもこの人の声どこかで聞いたこと……おぉ視界が明るく……あぁ、まだゴーレム元気に走り回ってるねぇ。はい、穴から脱出完了。助けてくれた人にお礼を言わねば。
「すまんのぉ、助かったわ。って玄道さん?」
「いやいや、いいんだよ。困ったときはお互い様だよ。君は確か、オウカちゃんだったよね?」
そう、私を助けてくれたのは以前プレボイベントで私に流れ矢を当てた玄道さんだったのだ。まさかこんなところで再開することになるとは……
とりあえず私はゴーレムが別のプレイヤーに構っている隙に、体力回復のためにポーションをがぶ飲み。結構消費したけど全快できた。
「玄道さんもイベントに参加しとったんじゃのぉ。」
「まぁね、何とかやれているよ。それに今だってオウカちゃんのおかげであのゴーレム?に一矢報いれたからね。」
「俺のお陰?」
「オウカちゃんがゴーレムを止めていたおかげで爆弾矢を当てることが出来たんだよ。」
へぇ、あの時の爆発音って玄道さんによるものだったんだ。爆弾矢か、某ゲームを連想させるけど、ということは火だったり雷だったり氷の矢もあったりするんだろうか。いや、爆弾矢があってそれ以外がないわけないよね。
で玄道さんが言うには私が止める前も何回かゴーレムに攻撃を仕掛けていたそうだったんだけど、そのどれもが芳しくなく唯一私が止めたときに当てた爆弾矢が効果があったそうな。
「走っているときは防御力が増すんか?」
「どうにもそうみたいだねぇ。逆に止まればダメージが与えられるって感じかな。」
「……ちなみに玄道さんは奴の動きを止められそうなスキルとか……」
「いやぁ、ごめんよ僕には無理そうだ。」
申し訳なさそうに困り顔で頭を掻く玄道さんだが、駄目で元々で聞いてみただけなのだから気にする必要はない。となると、私が奴をせき止めるしかないよねぇ……それしかないかぁ。
中々に辛い役割だけれど、そうでもしないと決定的なダメージを与えることは出来ないよね。意を決した私は立ち上がり、玄道さんに声を掛ける。
「玄道さん、すまんけど他のプレイヤーにゴーレムが走るのを止めたら攻撃が通る事を伝えてくれん?あと出来れば俺みたいなこと出来るやつと回復してくれるやつ探してくれると助かるんじゃけど。」
「わ、分かったよ。僕、気配消しながら速く移動するのは得意だから任せてくれ。」
お互い頷きあい、行動に移す。……待って、玄道さんもう姿見えないんだけど?気配消すレベルじゃないよね、姿消しているよねそれ。
そう言えばなんだけれど、何で私生存してたのに玄道さんと話している間、ゴーレムこっちに来なかったの?ほら、現に今ゴーレム私目掛けて来てるよ?存在強調がオフになっていたわけでも無いみたいだけど……まさかそれも玄道さんのおかげ?何あの人怖い。そしてもう来たよゴーレム。
「かかってこいや!お前を攻略しちゃるけぇのぉ!」
私頑張って耐えるから、玄道さんお願いしますよ!?
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