第2話 プロローグ2
手を振るクギは光の粒子となって消え去り、そこから光が真っ暗な空間を打ち消し――そこは青空と草原だけが広がる空間となった。この場には私だけ……いや、一匹の狼がいた。
"グレイウルフ(チュートリアル用)"
あ、狼注視してたら名前が見えた。その名の通りチュートリアル様に弱体化された個体なのだろうな。ぱっと見弱そうに見えないんだけど。
低い声を上げて私を睨んで威嚇しちゃってまぁ狼さんたら。ウフフ?
「何見とンならワレェ?」
「キュウン!?」
試しに凄んでみたら情けない声上げて縮みこんじゃいましたね。モンスターと言ってもプレイヤーを襲うだけのAIでは無いんだろうか。
しかししかし、今は好機!ブルブルと震えるグレイウルフに私は、ズンズンと迫るようなイメージで近づく。おぉ、こんなに近づいても逃げることはないのか。いや腰が抜けたのかな?でもこの状態のグレイウルフ殴るのって体勢低くしないといけないから、ちょっと面倒だよね。という訳で
「メリケンキック!」
「ギャワン!」
という名の空き缶を蹴るような蹴りをグレイウルフの腹に叩き込む。
これ傍目酷いことしてるよなぁと良心が痛むが、彼奴はモンスターじゃ。滅せねばならぬ!ということで、私に蹴り飛ばされ倒れ伏しひくひくと動くだけのグレイウルフに私は今度こそメリケンサックを握り締めた拳を振り下ろした。
そこで体力が切れたのだろう、グレイウルフは光の粒へと姿を変え消えた。
"戦闘チュートリアルをクリアしました"
"戦闘行動により、スキル威圧眼を取得しました。保有スキルはステータスを見ることで確認できます"
おん?チュートリアルクリアしただけじゃなくて何かスキルももらった?
威圧眼て、絶対にグレイウルフ相手に凄んだからでしょ。詳細見れるみたいだから見てみようか。
威圧眼
睨み付けることで目を合わせた同等もしくは格下の相手の動きを止める。バトル中、同じ相手に使うごとに成功率は低下する。
プレイヤーもしくは特定のNPCが対象の場合、対象のレベル関係なく使用者に恐れを抱いた時硬直する。
このスキルを取得したプレイヤーは発動の有無関係なしにNPCに恐れられる場合がある。
目を合わせなければいけないという条件こそあるが、これは中々に有用なスキルなのでは?プレイヤーの場合格上の相手でも効くかもしれないというのはPvPをする際に武器となるね。
ただデメリットヤバくない!?この世界のNPCに恐れられるって最悪街にいられないのでは?
おっと目の前にウィンドウが。
"戦闘チュートリアルを終了して始まりの街、ウーノに転送いたしますがよろしいですか?Yes/No"
「あ、NOで。まだステータス確認したいし。」
"かしこまりました。転送準備が整い次第声を掛けてください。"
という訳で私のステータス見てみようかなっと。
名前:オウカ 種族:ヒューマ
Lv1
HP:30 MP:10
ATK:10 INT:4
DEF:5 DEX:3
スキル 格闘術Lv1 威圧眼Lv1
これは……比較対象いないから分かりにくいけどHP・ATK特化はちゃんと反映されてるみたいね。
格闘術はメリケンサック選んだからだろう。と言っても格闘術なんて名ばかりの喧嘩キックしたんだけどね。
スキルが2つしかないのはあれだけど、このゲームは行動次第でどんどん増えるみたいだから気にしないでも良さそうだね。
あ、ステータスに持ち物欄もある。
持ち物
初心者向けポーション×5
所持金:1000G
あら、回復薬最初から5個くれてるんだ、ありがたいなぁ。
装備も確認したけどこれは全部が初心者用布服とかそんなところだった。野暮ったいから着替えたいなぁ!出来ればヤンキーっぽいの!あるか探さなくちゃね!
よし、確認はこの辺で十分でしょう。よし、ウィンドウを再び呼び出しYesを押す。……転移したその瞬間、私はヤンキーオウカだ!なり切るぞぉ!
・
・
・
「ようこそいらっしゃいました、渡界者さ……ヒィッ!」
はい、早速怖がられました。
目を覚ますとそこは教会のようで目の前には手を組んでいる女性を象った石像がある。女性には羽根も生えているし女神様とかそんな所だろうかね。さて、ヒィだなんだと悲鳴を上げてくれたのはシスターさんですね?おや、震えていらっしゃいますが?
「あン?何なん、シスターさん。人の顔見るに悲鳴上げてどしたんなら。俺の顔に蜘蛛でもついてたンか?」
「いっいえ!申し訳ございません!そのようなことは一切!」
涙目で首と手を横にぶんぶんと振るシスターさん。これはあれだね、威圧眼の効果がちゃんと適応されているということだね、悲しいことに。
自分で設定しておいてなんだけどそんなに怖い顔してるの?手を加えたの目つきをもっと鋭くくらいだけど……ちょっと面白いな。
さて、この教会リスポーン地点でも兼ねているのかそこらにプレイヤーいるねぇ。シスターさんが悲鳴なんてあげちゃうもんだから注目浴びちゃってるね。……ふむ。
「オイ、何じゃあお前らジロジロ見んなや!」
声を上げると遠巻きに見ていたプレイヤーたちが露骨に視線を逃がす。
流石にやり過ぎたかと思ったけどここで怯んでちゃヤンキープレイは出来ないと言うもの!私頑張る。クギと約束したからね!
……あれ、シスターさん私が声上げちゃったからか泣く一歩手前になってるね。うーん、これ以上話したらダメそうだな。出ていこうか―
私は小さく舌打ちをし、「邪魔したな」とシスターさんだけに聞こえる声で呟くと乱暴気味に扉をあけ放ちそこから外へと繰り出す。
顔は出来るだけ引き締めてるけど内心滅茶苦茶ウキウキしてるよ!
私のAnother fantastic world生活がこれから始まる!
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