第25話 ファッションヤンキー、一矢報いたが

 ビックリしたぁ!まさか、自分ごと爆発するとは思わなかったよ。あーあ、体力が3分の1減らされちゃったよ。でも爆発と言っても、流石に音は軽減されているのか、耳は全然聞こえるね。その代わり煙がもうもうと立ち込めて、視界がよろしくない。

 何もしないわけにもいかないし、さっきまでシャドルがいたであろう方向に向かって木刀を突いてみよう。


「そりゃ。」

「うぇあっ!?」


 む、この木刀の感触……掠った?それにシャドルの珍妙な悲鳴も聞こえたな。

 攻撃するところは間違っていないようだね、よーし連撃連撃。突き突き突き!

 なんて、流石に退避しているのか、一撃目以降は当たった感触は無かった。その代わり煙はどんどん晴れていく。ほら、シャドルの姿も見え……いないじゃん!


「"フレイム"!」


 背中ぁ!背中に衝撃が走る!シャドルの奴、また背後にいたよ!

 忌々し気に振り向くと、そこには私同様に爆発を喰らったはずなのにピンピンとし、笑みを浮かべたシャドルがいた。何か優位取られているみたいで悔しいなぁ。


「なんならシャドル!お前、ワープみたいな魔法持っとるんか!」

「そういう魔法はあるみたいだよ?でも私はまだ使えないんだ!使えないかもしれないけど。」


 じゃあ何でさっきから私の背後とれてるんだよ。ワープ以外であんなに速く私の後ろに回り込むなんてそんなの頑張って走らなきゃ……走らなきゃ?いやいやまさか、そんな単純な訳はないよね?だってあの煙の中、シャドルの足音聞こえなかったもん。

 うん?シャドルも何かしら考えているのだろうか、動こうとしないね。

 ふむ、硬直状態はあまりよろしくないし、検証のためゴブリン棍棒を投げてみよっと。とりゃ。


「オウカ棍棒投げるの好きだね!?でもそれ、遠距離攻撃それしかないってことだよね?」

「どうかのぉ?」


 はい、遠距離攻撃これしかありません。まぁバレるよね、あからさまだもの。

 シャドルは私の投げた棍棒を身を屈めることで回避し、その回避した勢いで地面を踏みしめ、走り出した。

 その速さは私の思っていた以上で、グレイウルフ以上じゃないかな。まさかの正解かよ、この子ただ単純に走っていたのかよ!

 真っ直ぐこちらに向かってくる彼女に対して、攻撃範囲に入ったこと見計らい私は迷うことなく、木刀を振り下ろす。

 しかし、その攻撃は空を切ることになる。シャドルは急旋回し、右手に持った木刀を左に回避する。そしてタクトを私に差し向け、唱える。


「"ウィンドショット"!」


 タクトから発せられた突風が私を襲う。ダメージもあるが、突風に煽られ脚が地面から離れかける。何とか残った脚で踏ん張ることで事なきを得、浮いた足をそのまま地面を強く踏みしめ"震脚"を発動させる。


「え、うわ何っ!?」


 突然の地震に対応しきれなかったシャドルは、勢いそのまま派手に転ぶ。よし、隙が出来た!

 私は近くに転ぶシャドルに向かって喧嘩キックを仕掛ける。蹴りは無防備な腹部にクリティカルヒット!思いっきり蹴りぬかれ、「ふぐぇ」だなんて変な声を漏らしたシャドルの体は宙を舞う。我ながらリア友に向かって何をしてるんだとは思うけど、許せシャドル、勝負の世界だ。


「ひどっ!酷いよオウカ!よくそんなこと出来るね、尊敬するよ!?」

「おぉ、すまんのぉ。でもこうでもしなきゃお前に当たらんじゃろうが!」

「いいもんいいもん!大体オウカのスタイル分かったもん!」


 吹っ飛ばされたのち、体操選手ばりにくるくると回転し見事に着地したシャドルは当然私に文句を言ってきた。そりゃそうだ。

 私のスタイル?この場合身体的な意味ではないよね。AFWでの立ち回りのことを言っているのだろうね。

 まぁ隠しているわけでもないし、別にバレてもいいんだけれど。

 それにしても結構いい一発入ったと思うんだけれど、シャドルは倒れていない。レベルは私に合わせてあるはずだし、もしかしてあと少しで勝てるかもしれないね。


「フレイムボムで吹っ飛ばずに攻撃仕掛けたときはまさかとは思ったけど、ノックバック耐性持ってるね!?ウィンドショットでも吹き飛ばなかったし!あと私の攻撃4発食らってピンピンしてるし体力に振ってる!それにリスクバリアとは言えダメージ軽減あっても私の体力結構削るし、オウカは近距離カウンター特化なの!?」

「そうなん?」

「そうじゃないの!?」


 あんまりカウンターとか意識したことなかったなぁ……ただヤンキーらしく殴られたら殴り返すみたいなことを意識しているだけなんだけど。あれ?カウンターかこれ?

 そんなことは置いといて。まー、結構把握されちゃうよね。

 対して私がシャドルの戦い方で分かった点と言えば、何かすごい走る・走るのに音が全く聞こえなかった・近づいて近距離で魔法を放ってくる・フレイムボムとかいう魔法使う前に何とかバリアって言ってたからダメージ軽減できるとかそんな感じ?


「ま、まぁオウカが戦法の名前知らなくても、そういう戦い方なら私の方が分があるよね?この勝負、貰うよ!」


 そう言うと、シャドルは駆け出した。

 しかし私に向かってくることはなく私を中心に一定の距離を保ち、円を描くように走っている。……まぁそうなるよね。

 試しに震脚を試みるが、シャドルの勢いは止まらない。ううむ、震脚の範囲も把握されちゃったか?


「"フレイム""フレイム""フレイム"!!」


 四方八方から炎の玉が飛んでくる。くそう、シャドルお前MPどうなってるんだよ!この数を喰らい続けたら流石の私の体力でも尽きちゃうぞ!?気は進まないけど回避するしかない。幸いフレイムの速さはそうでもないから他のは5発中3発は当たっても2発は避けれる!

 ほら、この正面のなんて顔を傾けるだけで避け


「ブフッ!」

「あはは、顔面アウト!」


 避けたはずのフレイムが何故か顔面に直撃した!?曲がった!?今曲がったの!?未だ走るシャドルを睨むと悪戯が成功した子供のように笑い、タクトを振るっている。何がどうなってるんだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る