第85話

「……なるほどねー出来るよー」

『マスターであれば可能かと。』


 私の変形が出来るのかという疑問に、クリカラは察したのかニヤリと口角を上げその目に強い光を灯らせた。隣のシュバルツは本当に目を光らせなくてもいいです眩しいから。

 可能だと分かったところで、私とクリカラ、加えてゴーレム観点から意見できるシュバルツと共に私のゴーレムの構想について話し合いが始まった。情報屋?奴なら追い出したよ。私じゃないよ?クリカラが「お前いたら話こじれそうだから駄目だー」なんて言って追い出しゴーレムを用いて追い出した。


「ここはこう組み合わせて――」

「この部分は伸縮可能な素材がいいなー確かまだあったはずだー。」

『マスター、オウカ様。ここをこうすれば格好良くなるのでは』

「お前思った以上に見た目拘るんじゃのぉ。いや、格好いい方が俺もいいけども。」

「ここはこれを使うぞー。ファンタジー素材万歳だー。」

「おいシュバルツ、電飾は止めぇや。そっち方面は嫌。」

『仕方ありません。ではシンプル寄りの格好良さですね。』


 おかしいな、ゴーレム観点のシュバルツは特に見た目重視しているぞ?こいつ本当にゴーレムなのか疑わしくなるよ?私のゴーレムもこんな感じになるのかな……ちょっと嫌だな、喧しいのは。これも要望できるのかな?


「のぉ、クリカラ。ゴーレムって寡黙とかには出来んのんか?」

「喋らないじゃなくて寡黙かー?出来るぞー」


 であればやってもらおう。一切喋らないとなるとそれはそれでさみしいかもしれないからね。私基本ソロだし。かと言ってパーティ組むのは疲れるから嫌だ。となれば相槌を返してくれるゴーレムは打って付けではないだろうか。……ぼっちではないよ?


「なー、オウカー。これ作るの楽しそうだし素材も揃ってるからいいんだけどさー。結構お値段するぞー?」

「……どれくらいなん?」

「シュバルツ-」

『かしこまりました、マスター。計算いたします、計算いたします……ハイ、こちらになります。』


 そう言って指し示されたシュバルツの胸のパーツには金額が表示されていた。その額……ひぇっ私の所持金殆どじゃん!これ払ったら私の所持金残り150Gとかになっちゃうよ!?いや、でもここまで話が付いて「お金がないからやめる」はヤンキー的にも漢らしくない。くそう!男は度胸だ!


「は、払う……!」

「おぉー、いい判断だぞー。こういうのは思いきりが大事なんだー。」

『漢らしいですよ、オウカ様。女性には失礼かもしれませんが。』


 あ、シュバルツは気づいてたのね。クリカラは気づいてなかったのか素っ頓狂な顔してるけど。

 そうだ。ゴーレムを作るってんだったらもしかしてこれって使えないかな?ということで私が取り出したのはリノギガイアホーンだ。


「クリカラ、これは使えるんか?」

「うんー?うーん……金核見せてくれー」


 言われた通りに金核も取り出し、クリカラに差し出す。それを受け取ったクリカラは金核と角を交互に見、しばらくすると私に返した。

 

 

「うん、相性良いぞー。もしかして破壊したゴーレムの一部だったものかー?」

「おう。」

「納得だー。」


 核と素材で相性があるのね。そのことを聞いてみると、相性が悪い物でゴーレムを作ると壊れやすくなるらしい。そんでもってゴーレムクリエイターのスキルでその相性の良し悪しが分かるらしい。本当にゴーレムを作ることに特化してるんだなぁ。


「こんなもんかー。他に素材になりそうなものあるかー?」

「……このブトーレントルーパーのフィギュアは」

「論外だぞー」

「じゃろうな。」


 相性よかったら困るわ。それ以外だと……うん、ないな。

 私は2人と1体で話し合って出来上がった完成予定図を眺める。作画クリカラ……こいつ絵も上手いのね、絵が上手い人って尊敬する。

 中々……いや、素晴らしい!でもあまりも素晴らしいから……出来るのこれ?再現できるの?


「任せろ任せろーシュバルツを作った俺だー信じてくれー」

『そうです。マスターならこれくらい一晩で出来ます。』

「じゃあ頼むわ。金は今から払おうか?」

「完成してからで構わないぞー」


 と言うのでお願いすることにした。完成した時はメッセージを送ってくれるということなので、クリカラとフレンド登録っと。おっと、外に放置していた情報屋を回収しなきゃ。


「出来たのか?俺にも見せて――」

「ダメだぞー。どうしても見たければ完成したものを見せてもらえー?」

「……ヤンキーちゃん。」

「分かった分かった。ギャラリーもいた方がえぇけぇの。クリカラに呼んでもらえ。」

「ひやっほう!」


 ガッツポーズまでして、そこまで見たかったのかこいつ。まぁ人に見せるってのは悪くない。私も人間だから良い物を手に入れたら自慢したくなるのも当然なのだ。やり過ぎないようにはするけどね、嫌われたくは無いし。


「話はついたなー?それじゃあ制作に入るからなー?帰った帰ったー。情報屋も今日は人連れてくるなよー?」

「言うてお前の所に連れてきた人なんてヤンキーちゃん入れて2人じゃないか。」

「そうだけどなー?万が一があるからなー?」


 はいはいと手を振り了承の意を示す情報屋。という訳でドア君、バンル君に見送られ今日は別れることとなった。クリカラの作業小屋は覚えたし、とりあえず今日は狩り作業でもしていよう。明日には有り金無くなってしまうのだから……せめてポーション買えるくらいには。



 はい、日が変わって今日です。ゴーレム完成が楽しみで寝れなかった――なんてことは無かった。快眠でしたとも。昨日は慣れない狩り作業で疲れたなぁ。滅多に狩り作業しないからなぁ。楽しくはあったけどね。ただ殲滅用のスキル無いいちいち殴る蹴るするのは疲れた。

 おっとクリカラのメッセージは……10分前に届いてる!んでもって昼までならいつ来ても大丈夫って書いてある!よっしゃあ急げぇ……!"猪突"ぅー!



 作業小屋にはクリカラは勿論のこと、情報屋もすでに来ていた。そしてすぐ傍には黒い布が被さった物体が。あれがもしかして……


「来たなー?」

「早いじゃん、ヤンキーちゃん。」

「お前が私より早いのが驚きなんじゃけど。」

「だって遅れたら2人とも絶対構わずに先にやるでしょうが。」

「「正解。」」

「知ってた。」


 だって待ってるよりも早く見たいもん。ぶっちゃけ見せるだけなら私と一緒に見る必要は無いしね。クリカラの方は顧客の私以外に見せようが見せまいがどうでもいいことだものね。

 そんなことよりもゴーレムだよゴーレム!はよ見せて!


「どうしたーオウカー目が怖いぞー?」

「いや、普通にしとるだけなんじゃけど……」

「そうかーんじゃとっととお披露目だぞーっと」


 そう言うと、クリカラは黒い布を勢いよく捲り上げた。その布の下には――


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ゴッツく黒いボディに金色のラインが入った三輪バイクがそこにあった。

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