第99話 ファッションヤンキー、噂のあの人と対面する
しかしドラゴンの羽ばたきってすごいなぁ。未だ上空を飛んでいるはずなのに、強風とまでいえる程の風を感じる。うん?手を振ってた人が引っ込んだ。どうしたんだろ……ってドラゴンから飛び降りた!?
「のぉ、何か落ちて来とるんじゃけど、飛行能力とかあるん?」
「聞いたことないんだけど」
サラマーダと思しきドラゴンに乗ってきたのだから彼が例のムラムラマッサンだとして、知り合いであるパックンさんに聞いてみたんだけど彼女も唖然として答えた。ということはダメじゃない?ムラムラマッサンが踏ん張り所のような根性スキル持ってなけりゃ……死では?
そうこうしている間に落下スピードは徐々に増していっている。あぁ、もしかしてドラゴンの力を借りた紐なしバンジーとか?あれ?心なしかドラゴンも焦ってない?え?打ち合わせしてないの?
「ああああああああああああああああああああ!!!」
何か絶叫してるけど。え、本当に何の脈絡もなく紐なしバンジーしてるの?え、これ私ら受け止めた方が良いの?流石の私も落下する人間を受け止めたことは無いんだけど……え?どうすんのこれパックンさん!?
「何もしなくてもいいわよ。あいつの自業自得だし、最悪料金アイツ持ちで蘇生薬ぶん投げるわよ」
パックンさんがそう言うのであればそうさせてもらおうかな。下手したら私まで死に戻っちゃうもんね。踏ん張り所のクールタイム全然まだかかるし。てかさり気に蘇生薬言ったなこの人。
おっとそろそろ地面に……って絶叫がいつの間にか止んでるし何か武器を……長細い……あれは刀?刀で一体どうしようと――
「"斬衝"」
へ?落下しながら刀を地面に向けて振ったと思ったらムラムラマッサンがふわっと浮いた?え?落下によるエネルギーどこへ行ったんです?一振りで相殺したんですか?ゲームの世界だから深く考えてはいけないんだろうけどとんでもないことしてるねぇ!?
驚きすぎて声も出ない私の意識を戻したのはパックンさんの溜息だった。「またアイツは」と漏らし、ムラムラマッサンが降り立った場所に脚を向け私もそれに続いた。あ、ドラゴンも高度落とし始めた。
「あぁ、いたいた」
あの、パックンさん。いたいたじゃなくてですね?ムラムラマッサンらしき人うつ伏せのままピクリとも動いてないんですけど?死んでるんじゃないのこれ?草原に降り立ったドラゴンもドラゴンで口元の辺りをポリポリと掻いてるんだけど。
「ほら、起きなさいよ」
「ぶげっ」
「「えぇっ!?」」
蹴りおったよ。パックンさん、一切の躊躇なくムラムラマッサンの腹蹴り飛ばしたよ。ムラムラマッサン、変な声上げて舞い上がっちゃったよ。私とドラゴンビックリして声出ちゃったよ。
蹴られたことで腹を抑えながらもようやく起き上がったムラムラマッサン。その外見はヒューマで……真っ黒なスーツ?え?この異世界でスーツ着てるのこの人?学ラン着た私が言えた義理じゃないかもしれないけど。しかもグラサンなんだこれヤクザの若頭かこの人。
「ほら、オウカ。こいつが噂のムラムラマッサンよ、どう?」
「どうと言われても……すごい反応に困る見た目じゃのぉ」
「最初に会った時はこんなのじゃなかったんだけどね。サングラスなんていつの間に……」
「ギラウェア火山で拾ったんや。イカすやろ?」
「そこまでいったらいよいよ完全にヤの付く職業でしょうが」
「ヤクルトレディか?」
「そんな厳ついヤクルトレディいやよ!」
「俺もいややな」
おおう、パックンさんが突っ込み代わりに大槌を振り回す。それをムラムラマッサン、紙一重で躱す。じゃれてるように見えるけど、あのオーガラビットを一撃で倒せる一振りとそれをあっさり躱すって相当では?
あの、パックンさんそろそろ私の紹介の方も……
「こいつはオウカ。私の得意先の1人よ」
「オウカじゃ」
「なんや、厳つい兄ちゃんかと思ったら女の子か。俺はムラムラマッサン。好物は韓国のりや。」
好物は別にどうでもいいんだけど?何、プレゼントしてくれってか?韓国のりこのゲームで見たことないから知らないけど。
にしてもなんだこの人……情報屋とはまた別のベクトルの胡散臭さを感じる。パックンさんと仲がいいみたいだし悪い人ではないんだろうけど。あれか、スーツサングラスのせいか。これがコング・コング・コング初討伐したり私より先にムラカゲに勝利した人か。正直そんな強そうには見えないなぁ。
「なぁムラッサンよ、そろそろ我の紹介をだな?」
そんなこんなしてると、随分重低音な声がムラムラマッサンの背後から聞こえた。その声の主は、伏せの体勢をとりちらちらとこちらに視線を向けるサラマーダだった。こいつもこいつで何かイメージ違う。最初に会ったのがトルネイアってのもあるんだけど、ドラゴンって尊大なイメージがあったんだけどサラマーダはそんな風には見えない。
「おぉ、すまんな忘れてた。オウカちゃんの顔が怖くてな」
「忘れないでくれるか?」
「俺にも失礼じゃのぉ?」
「こいつは火竜サラマーダ。俺の友達で……別名は、えぇっと」
「ギラウェア火山の守護竜」
「せや、ギラウェア火山の守護竜や」
あの、お二人さん?丸聞こえなんですけど……
「こいつ本当に疲れるわ……」
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