第40話 ファッションヤンキー、モグラを……

 それはまさしく、モグラだった。ただ少し……デカいかな。車、それも消防車位のサイズはあるよね?

 うーん、でかいモグラねぇ。見ようによっては可愛い……かな?いや、小さい方が可愛いな。

 さてこいつはっと――


"グランドドラグン"


 モンスター名はグランドドラグンって言うのか。ドラゴンっぽい名前だなと思ったらモグラは土竜ってあぁ……そういう。

 念のため、辺りを見渡してみるけど私たちの乗ってきた馬車と目の前のグランドドラグン以外には所々に生えている木々しかない。

 てことはこいつだけを倒せばいいのかな?


「ウボボッ!」

「うわっ!?」


 やるべきことが分かったところで、グランドドラグンに視線を戻したところですぐに視界に映ったのは奴の巨大で鋭利な爪だった。流石に悠長が過ぎた!反射で腕を交差させ爪攻撃を受け止める。うへぇ、流石に盗賊とは違ってHPの減りが大きい。 

 だけど、攻撃されたのなら今度はこっちの番だ!爪を押しのけ、木刀を……あ、駄目だ。顔は届かない。ならば腕!当たりはしたけど、ピンピンしてるなぁ。もうちょっと痛がってくれてもいいんだけど!?


「ウボォッ!」

「チッ!」


 今度はこちらの番だと言わんばかりに爪が振るわれる。私は回避行動をとらず敢えてその攻撃を受け止める。結構痛いけど所持しているスキル、"踏ん張り所"と"不動"のお陰で吹っ飛ばされることは無かった。そして!振りかぶられた奴の爪を両腕で抱きしめ――掴む!

 そしてその状態で発動するのは"リフトアップ"!む、盗賊に比べて結構重さ感じるぞこれ……そうだよね!人間と消防車ほどの体積持ったモンスターどっちが重いかってそりゃ後者だよね!でも弱音を吐いてたまるか!


「こなくそおおおおおおお!!」

「ウボボボボッ!?」


 気合の声と共に全身に力を入れる。グランドドラグンの体は少しずつ持ち上がり、奴も自分の体が浮き始めたことに困惑の鳴き声を上げる。ふはっふはははは!ざまぁ見晒せモグラ野郎!小さい人間に持ち上げられないと思ったか残念だったなふははは!持ち上げた後の事考えてなかったなぁ!?

 あーどうしよ。なんというかこう、ベアハッグみたいに絞め技覚えないかな……?いや、流石にそうポンポン理想的なスキルなんて覚えられないか。

 さーて、ここからどうするかね。持ち上げているとはいえ、奴はバタバタと手足を動かし抵抗している。投げるのも……無理だな。ダメージ与えられそうにない。いっそのこと叩きつけようか?そこまで考えた時、背後から声が聞こえた。


「オウカお姉ちゃん!そのまま持ってて!」

「あン!?」

「プリキュル!"アクア・スプラッシュ"!」


 キュルピンキーちゃんの声が聞こえたかと思うと、突然私の頭上――グランドドラグンの背中あたりに強烈な勢いで大量の水が直撃した。


「ウボァ!?」


 もはや激流とまで呼べる水の勢いに私の手を離れたグランドドラグンは、地面へ不時着し、苦悶の声を上げる。私の攻撃時とは異なったこの反応から見るに、こいつ水が弱点なの?

 そして、水が放たれた方向に視線を向けると、杖……というよりキラキラした装飾を付けたステッキを構えたキュルピンキーちゃんが立っていた。やはりあの水は彼女のもたらしたものか。ピンキーちゃんの傍らには、ソレイユとリヒカルドもそこにいた。


「オウカお姉ちゃん、私も戦うよ!」

「大丈夫なんか!?」

「うん!モンスターさんなら大丈夫!怖くないもん!」


 盗賊怖くてこの巨大モグラは怖くないのか……私的にはつぶらな瞳していても普通にデカいグランドドラグンの方が怖いなぁ。盗賊はほら、簡単に持ち上がるし私の顔に比べたら怖くない。

 だが、魔法の使えるピンキーちゃんの参戦は正直有難い。私の物理攻撃通りにくいみたいだから代わりの攻撃役となってくれれば嬉しい限りだ。だけどその……そこのリヒカルドは。

 私の言いたいことに気付いたのか、彼は苦笑いを浮かべる。


「安心してください。確かに戦うことは出来ませんが戦闘をサポートするスキルはありますから。」


 本当かなぁ……?でもリヒカルドは私よりかは頭良さそうだしピンキーちゃんに関わること以外では無駄なことはしなさそうだから信用するか。

 おっと、話しているうちに吹っ飛ばされたグランドドラグンが忌々しげな声を上げながら戻ってきた。

 さぁ、戦闘の続きだ。

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