第114話 ファッションヤンキー、気を取り直して

戦闘開始時にreadygoを加えました


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  解せぬ。今、私の心境を語るのにこれほど適切な言葉はあるだろうか。いや、ない。マコト君とやらが勝手に降参したのにポイント貰えないとはこれ如何に。もう一度ルール見直してみようかなっと。

 これかな?"メニュー画面よりサレンダー(降参)することは可能です。ただし、戦闘開始から戦闘ログが限りなく少ないうちからサレンダーした場合、次回以降緊急時以降のサレンダー禁止のペナルティが発生します。また、対戦プレイヤー双方にポイントの増減はありません。"……ねぇ。うーん、相手が勝手に降参して勝ったのにポイント付与されないのはちょっとなぁ……運営にメール送ってみよ。

 要約すると「何で勝ったのにもらえないの?」って趣旨のメールを送ったところで、情報屋が戻ってきた。うっわ、気持ちの良さそうな顔してるわ。勝ったなこいつ。


「あれ?ヤンキーちゃんお先?早くない?まさかワンパン?」

「だったらよかったんじゃけどのぉ……」


 私の言葉に意味が分からなかったのか、首を傾げる情報屋。教える外ないけど、どーせ笑われるんだろうなぁ。こいつのことだから大爆笑されるんだろうなぁ。

 かくかくしかじかまるまるうまうま


「ぶはっ!即サレって!ふふふ……っ!はははっ!あはははははは!!!マジかあはははははは!!!!」


 予想通りではあるものの。心に来るものがあるなぁ……しかも三段笑いまでやりやがったよこいつ。まぁ私も同じ立場だったら笑っているかもしれないけども。とりあえず小突いとこ。チッ避けられた。


「ごめ、ごめん……ブフッ!面白……っあ゛ー落ち着いた。まぁ災難だったね。運営には?」

「今さっきメール送った」

「んじゃ、俺も送っておこう。こういう意見は数が大事だからな」


 それは助かるなぁ。最悪埋もれてしまうかもしれないからね。ってところでメールが来た。送ったばかりなんだけど、まさかと思ったら運営からでした。早くないですか?

 とりあえず、情報屋と一緒に見てみよう。


"オウカ様、この度はイベントについてお問い合わせいただき、誠にありがとうございます。お問い合わせの件に関しまして、同様のご意見が多数寄せられており、今現在、管理AIチームビルドと運営で協議しております。少々お時間を戴きますが、何卒お待ちいただければ幸いです。"


「結構同じ被害に遭ったプレイヤーおるんじゃのぉ」

「同じ即サレでもヤンキーちゃんのはレアなんじゃないかな……?」


 それは自分でも思うけども。

 まぁこの様子なら悪い結果にはならないでしょう。協議してくれているのならこれ以上ぶつくさ言っても仕方ないね。切り替えてこう。戻ってきたときに一度解除していたエントリーをやり直してっと。


「そういや、情報屋は勝ったんか?」

「うん?負けた」

「え?あんな顔しといて?」

「あぁ、あれは金になりそうなスキルを見れたからな。ついつい顔に出ちゃったんだよ。負けた直後も笑ってたから対戦相手に気味悪がられた」


 そらそうでしょうよ……負けておいてニヤニヤされたら気味悪いわ。対戦相手に同情するよ?


"マッチングが確認されました。 対戦を開始いたしますか? Yes/No"


 おっ来た来た。今度こそマコト君みたいなやつに会いませんようにと指先に念を込めてYESを選択!


"2人のマッチングプレイヤーの了承を確認いたしました。あなたの対戦相手……『クマさん牧場』。戦闘フィールド……牢屋になりました。5秒後にフィールドに転送いたします"


 待って?色々ツッコミどころのあるものが流れたんだけど?クマさん牧場?牢屋?前者はまだ許容できるけどヤンキーに牢屋って不味いよアンタ。豚箱に入れられてんじゃんああああああああああああ



 狭っ!牢屋ってただでさえ狭いのに大きい私と――


「あ、どうも"クマさん牧場"です」

「あ、ども」


 熊型ビーストのクマさん牧場さん。あの、ビーストって言うならばケモ耳と手足がケモっぽいってのが特徴なんですよね?あなた9割9分クマさんではございませんか?しっかも山で出会ったら死を覚悟するレベルのクマさん。クマじゃなくて熊だよ?

 そんな2人が狭い牢屋に2人きりて。ぎっちぎち。


"それでは『クマさん牧場』対『オウカ』の対戦を開始いたします。ready……"


 お構いなしにシステムは進行を開始する。……さて、フィールドはとても狭い。サイズが小さければまだ動きようはあるのかもしれないけど、生憎互いに大きく禄に動けない。

 であればどうなるか。短期決戦だ。クマさん牧場さんもそれを分かっているのか、本物の熊のように手を地に付け――いや!これは相撲の立ち合い!?……金太郎かな?


"GO!"


「クマアアアアアアアアアアア!」

「どっせぃぁ!」

「グマアアアアアアアアアアアア!!」


 はい、分かりやすく相撲よろしく正面切って突っ込んでくれましたんで不動嚙行振り下ろさせていただきました。ぶっちゃけ様子見のつもりの一撃だったんだけど、クマさん牧場さんは、特にスキルを発動させた様子も見せず悲痛な叫び声を上げて撃沈した。あれ?え?クマさん牧場さん?おーい。


"『オウカ』WIN!!"


 マジすか。

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