第81話 ファッションヤンキー、勝ったから貰う
"経験値を取得しました。"
"レベルが1上がりました。"
"喧嘩術のレベルが1上がりました。"
"喧嘩術のレベルが3になりました。鉄拳を習得しました。"
勝った……んだよね?クエストクリアのウィンドウが出たし、レベルも上がったから間違いではないと思うけど。いやまさか、2回目で勝てるとは思わなんだよ。勿論負けるつもりで挑戦した訳じゃないけど、ゴリラの例もあったし、もしかしてとは思った。
だけど、そんなジンクスを乗り越えて私は、強敵であるムラカゲに勝利したのだ。ふふふ、これで私も上位プレイヤーの1人かな?別に上位になりたいとかそう言うのは無いけど。にしてもムラカゲ起きないなぁ。抱えてるのだるいんだけども。
「まさか、お主がここまでやるとはな。」
お、起きた。自分で立てるようだし、私はとっととムラカゲを離す。別に好きでも何でもない意識が戻った異性を抱えてるほど私は優しくないからね。甘えず立っててね。なんて思ったけど、割としっかりと立ってるなこのおっさん……もしや気絶してなかったとか?声とか全然疲れてなさげだけど。
「そんな目をするな。お前が勝ったのは事実だ。誇るがいい。」
「ンな事言って、『まぁ儂は今全力が出せんからのぉ』とか言うんじゃろうが。」
「ハハハ、ならいいのだがな。間違いなく全力でぶつかったわ。負け惜しみを言うなら若い頃なら分からんかったがな。」
あー、そうね。あなた立派なおっさんだものね。全盛期はもっと強かったんでしょう。かと言って戦いたいとはあまり思わないけど。今勝てたのだってギリギリだったもんね。
「しかし、こうも立て続けに負けると流石の儂も落ち込むのぉ。」
「立て続け?おいムラカゲさんよ、アンタ俺の前に負けてんのか?」
「あぁ、昨日な。奴も何回も打ち負かしたはずなのだが、完敗だった。いやはや、若者は育つのが早い。」
「そいつの名前は?」
「ムラムラマッサン。奴はそう名乗っていた。」
うん、大体予想はついていたよ?だって、パックンさん私がムラカゲに負けた時言ってたもん。ムラムラマッサンが挑んで負けてたって。……にしても真顔でムラムラマッサンって言わないで欲しいな。シリアスさが台無しだよ?文句言うべきはムラムラマッサンかもしれないけども。しかし、一番乗りじゃないのは残念だなぁ。一瞬、トッププレイヤーを追い抜いてクリアだなんて期待しちゃったよ。
「故に、今ある道場の看板は新品なのだが……いるか?」
「いや、いらん。」
本当に要りません。持っていたところで、どうせブトーレントルーパーのフィギュア、リノギガイアホーンよろしく、飾りアイテムぐらいにしかならなさそう。おまけに新品って。精々年期入ってくれれば……!って、ムラムラマッサンは看板貰ったんだ。
「そうか。儂としては新しく作る費用が掛からぬからありがたいが。あとは、バディウス流剣術の技を伝授させることが出来るが。」
ほう?バディウス流剣術とな?……でもアンタ戦っている最中、そんな技使っているところ見てないんだけど?掌打くらいなんだけど?やっぱり手抜いてませんでした?でも技は気になるな。
「残念なことにバディウス流剣術は速きに重点を置いた剣術。お主には全くと言っていいほど向ておらぬ。ちなみに儂の足さばきはバディウス流剣術に則ったものだ。」
「えぇ……」
確かに鈍足ですけども。その足さばきを教わったら足が速くなるとかそういう訳じゃないんですね。足が速いからその足さばきが使えるってだけなんですねそうですか。
待て、このままだと私、この道場破り得る物がないのでは?それはアカンのではないでしょうか?
「武器もその黒刀があれば十分だろうし……そうだな、暫し待て。お前合った良い物がある。」
私に合ったもの?それが何かを聞き出す前に、ムラカゲはさっさと外に出て行ってしまった。……待って、私ムラカゲの弟子と一緒に待たなきゃいけないの?こいつ等言葉を発さずにジッと私を見つめてきて怖いんだけど。せめて「師匠がお前に負けるわけがないどりゃー」みたいに喧嘩吹っ掛けて来てくれませんかね。
・
・
・
「待たせたな。」
待ちましたとも。時間としては1分しか経ってないけど居づらかったです。あいつらずっと目を逸らさずに見るんだもん。私が視線向けてもだよ?にらめっこして根負けしたよ?
いや、そんなことよりもだ。何持って来たんだろうと思えば……何その宝石みたいなの。え、やだ金色に光って綺麗ねー。宝石あまり興味ないけど。
「これはな、儂がこの道場を構える前に旅路で得た鱗だ。」
「鱗ぉ?そんな綺麗な鱗した生き物がおるんか?」
「さぁてのぉ、儂も見たことがないから分からん。が、儂はこれが龍のものだと思っている。」
龍の鱗ねぇ……眉唾物だけどAFWはファンタジーな世界観だし、無い話ではないか。
それを差し出したってことはくれるの?これを?新品の看板よりも価値が格段に上な気がするけど?
「いいんか?」
「手合わせ中、お主の背中の龍がちらちらと見えてな。儂が持っとるよりもお主に渡した方がいいと思ったまで。なに、これは儂個人の持ち物。道場の者ではないから遠慮はいらぬわ。」
そっか、ワールドクエスト前に竹輪天さんに縫ってもらった龍も金色だったね。正確には黄金龍。……いやそれでも躊躇なく渡すかね、貰うけど。んでもって見てみよう。もしかしたら、何の鱗か分かるかもしれないし。
金色の鱗
本物の金と見間違うほどに美しい鱗。時折虹のような光沢を放っている。ただし、この鱗が蛇か魚か龍のものかは判別不能。
あ、分かりませんかそうですか。……まずいな、私の引きの悪さからしたら魚ルートありそうだなぁ……綺麗だからいいけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます