第29話 ファッションヤンキー、トラブルに会う
よし、シャドルとのフレンド申請も終わったし、そろそろ次の舞台に行きましょうかね。
っと、その前にポーション買っておかないといけなかった。ゴリラ戦で使い果たしていたの忘れていたよ。
他の道具屋知らないし、この前の道具屋でいいよねー……まぁあの店主に少し嫌われてるみたいだけど。
さて、その道具屋の前に来たんだけれど、騒がしくない?んー入ってみようか。
「だからもうポーションは在庫切れだって言ってんだろうが!」
「はぁ?いやいや、NPCの店で売り切れとかあり得ねえだろ。」
「そうそう!NPC如きがプレイヤー様に逆らってんじゃねぇぞ!」
何この状況。道具屋の店主にガラの悪そうなプレイヤーが3人囲んで迫っているね。……ガラが悪いのは私も同じか。
店主も店主で、怒りに顔を歪め怒鳴り返しているが、その額には冷や汗が浮かんでいる。
見ていて気持ちのいい物でもないし、この状況じゃ落ち着いて買い物もできないよ。少し店主に助太刀するか。あ、このゲームスクリーンショットとか動画撮れるんだっけ、動画録画しておこう。
よし、少し大げさに声張り上げていこうか。
「何じゃあ、店主。ポーションは売り切れなんか!」
「あぁん!?ンだてめッ……!?」
声を出したことでようやく私の存在に気付いたのか、プレイヤーの視線が私に向き、視認すると言葉を止め私を見上げた。
そりゃ振り向いたらヤンキーいるんだもの、ビックリしないわけがない。
あれ、店主もビックリしてない?大丈夫?
「店主、どうなら!ポーション無いんか!?」
「あ、あぁ今日の分は全て売り切っちまった!」
「明日にはあるんか?俺も必要なんじゃけどのぉ?」
「あるぞ!毎朝、調薬師から届けられているからな!」
ほう、この店のポーションは卸されたものだったのか。それに調薬師の存在……初耳。いやまぁ私のヤンキープレイではほぼ関わる可能性の低い物だからね。
「それなら仕方ないのぉ。ちなみにそのポーション多く仕入れることは出来るんか?」
「調薬できる分の薬草があれば自然と増やすと調薬師は言っている。冒険ギルドで常に採取依頼で出していると言っていたな。うちに卸している調薬師は今日の納品した薬草が少なかったからこれしか作れなかったとも言っていた。」
へぇ、採取依頼の達成数に合わせて販売されるポーションが増えたり減ったりするのか。自分でポーションを作れる職業や回復職がいるならそうでもないかもしれないけど、私みたいに回復職じゃないソロプレイヤーには結構重要そうな話だね。
「お、おい!俺たちを無視してんじゃねぇぞ!」
忘れてた。普通に話し込んじゃっていたけど、君たちまだいたのね。
しかし、私に噛みついて来ているのは1人だけで後の2人はどこか及び腰だ。その噛みついているのも声が震えている。
「やかましいのぉ、ポーションなら店主がないって言っとるじゃろうが。諦めんさいや。」
「知ったことかよ!NPCは俺たちに逆らわず売るもん売ればいいだろうが!」
だからその無いポーションをどうやって売れと。流石に頭弱すぎないですか、このプレイヤー?
確かにこれまでの殆どのゲームでは、100個200個アイテム要求してもポンと用意してお前それ在庫どうなってるんだと思ったほどだけど、それはあくまで別ゲーの話でこのゲームではそういう仕様になっているんだから諦めればいいのに。
ここは少し強めに言わないと駄目かな?あんまりすると通報されそうで怖いんだけど……いや、ヤンキーRPを貫こう。NPC相手なら何してもいいという感じは気に入らないし。でもあくまでも慎重に……!
私はその噛みついてくるプレイヤーの胸ぐらをつかみ引き寄せる。「ヒッ」と声を漏らしたが、関係あるかい。
「じゃかあしいのぉ!そんなに欲しいんだったら他の道具屋にでも行くなり薬草採取するなりしてきんさいや!おぉ!?」
殴る蹴るはせず、引き寄せて大声で怒鳴るだけではあるが、効果は覿面。プレイヤーはがくがく震えながらも頷いている。分かってくれたみたいだね?
乱暴にプレイヤーを解放すると、彼は力なくへたり込み、仲間が慌ててそれを支えて立たせる。
「お前らが欲しいもんはここにはないんじゃけぇ分かったらとっとと去ね!」
「「は、はいぃ!」」
最後にもうひと怒鳴りすると、2人でへたり込んだプレイヤーを支えながらそれはもう一目散に店から出て行ってしまった。
……やり過ぎちゃったかな?でももうやっちゃった後だし、気にしても仕方ないか。
私は私でどうしようかな。でもポーションなしで新しいエリアに行くのも怖いし……今回はワンズフォレストで薬草採取でもしようか。
「騒がして済まんかったのぉ、店主。また明日来るわ。」
「……助かった。」
どういたしまして、と心の中で呟いて私は店を後にした。
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