第19話 ファッションヤンキー、再戦する
「ギッギィ!」
「うるさいんじゃボケェ!」
怒声と共に木刀で襲い掛かってきたゴブリンを殴りつける。
今は私は3度目のワンズフォレストに来ているのだが、以前よりもエンカウント率が上がっている気がする。これが漢の学ランのスキル、存在強調の効果なのね。探さなくてもモンスターの方からやってきてくれるから有難いね。
森に入って長くはないが、もうゴブリン5体とグレイウルフ8体、スライム沢山に大玉狸1体倒しちゃったよ。レベルも8まで上がっちゃった。
さて、どんどん進みましょうかね。私の今回の目的は言わずもがな、あのゴリラだ。正式名称、コング・コング・コング。あんなあっさりとやられてばかりじゃあ私の中のヤンキーが黙っちゃいないよ!
今の私には木刀もあるし学ランにボンタンもある!これは勝てる!――といいなぁ。確かに装備着込んで性能上げているとはいえ、これまでの一撃二撃でやられて来たから自信があまりないという。だからレベル上げをしているんだけどね、こんなことを思っているとさ。
「ウホ。」
「ストーカーじゃろ。」
出てくるんだわ、このゴリラ。ちょっと離れた木々の合間から「やってる?」みたいに顔覗かせてるんじゃないよ。もしかしてこれ、ボスにも存在強調の効果が適用されているの?私の存在感に興味津々なの?
しかし、出会ってしまったものはしょうがない。私の中のヤンキー辞書に逃げるという文字なし。であればやることは一つ。
「ぶっ潰す!」
「ウホホォ!」
私の叫びに応じて、ゴリラも叫び、拳を地面に突く……えっと確か、ナックルウォーキングなる走り方で迫ってきた。
その間に私は木刀ではなくゴブリンの棍棒を取り出し、奴目掛けぶん投げる。元々期待はしていなかったが、ゴブリンの棍棒はゴリラに当たると木端微塵に砕け散った。しかもあいつ、顔面目掛けて投げたのにピクリとも反応しやがらないんだが?
ついに眼前まで迫ってきたゴリラ。繰り出されるは、一番最初に私がやられた右腕でのパンチ。
私はそれを――避けることなく受け止める!
「ん゛ん゛ぁっ!」
女の子的によろしくない声が出たかもしれないが、そんなこと言ってられるか!
ゴリラの拳を抱え込むように受け止める。強い衝撃が私を襲うが、装備とレベルアップでDEFが上がった上に漢のボンタンのスキル、踏ん張り所のおかげでその場から一切動くことなく拳の勢いを止めることができた。
ゴリラは驚きのためか目を見開く。いいねぇ、その顔!私、お前のそんな顔見てみたかったんだよ!
「おらぁ!」
私はゴリラの腕を離し、すぐに攻撃に転じる。
木刀を取り出し、奴の顔面に思いっきり振り下ろす!片腕を一瞬でも抑えられたゴリラは防御態勢が遅れ、妨げるもののない木刀は奴の顔面に減り込む。
「オゴッ!?」
痛みに顔をゆがめるゴリラ。だがしかし、私は攻撃の手を緩めないよ!
顔を抑え、悶絶しているうちに木刀で滅多打ち。時折、奴も負けじと腕を払ってくるが、私はそれを片腕で受け止めお返しに顔面に拳を叩き込む。メリケンサック取り出す暇は流石になかったよ。
「ウボォ!!」
数回殴ったところでゴリラが我慢ならんといった具合に大きく腕を上げ、手を組みそのまま振り下ろす。
うわ、これは強烈そうだけど……ここまで来て回避行動はとりたくないし、受けるよ!でも木刀折れそうで怖いから腕をクロスさせて受け止める!
今までで一番の衝撃が走るが、視界はブラックアウトしていない。つまりは私はまだ生きている!
あ、でも体力2だ。交差させた腕を思いきり解き放ち、奴のバランスを大きく崩す。そして出来た隙に腹に目掛け――喧嘩キック!
私の焦りを力に込めた蹴りに、ゴリラは体をくの字に曲げ後方へ吹き飛び、木に激突する。よし、今のうちにポーション!ポーションだよ!
急いでポーションを飲むヤンキーの姿は滑稽かもしれないが、誰も見てないしいいでしょ。あ、でももっとこうスタイリッシュに丸薬を飲むとかないかなぁ……
そんなことを考えている間にポーションを2本飲み、体力は全快する。
そして丁度良く、倒れ伏していたゴリラがゆっくりと起き上がった。
くくく、中々いいペースなんじゃないかな?もしかしてこれ私ゴリラ討伐しちゃう?勝っちゃうの?
――なーんて思ったのがいけなかったのでしょう。
「ウホ、ウホホ、ウホホホホホホホホホぉ!!」
突如、ゴリラがドラミングを始めたではないか!いや、ゴリラだからドラミングすること自体は至って普通なんだけど、なんだってこのタイミングで!?
謎の行動に困惑している私に構わずゴリラはドラミングを続ける。……え、これ攻撃してもいいやつなのかな?試しにゴブリン棍棒投げてみたけど何か見えない壁に弾かれた。何これ見てろと?
あれ?今バチって音した?何か弾けるような……?あ、またした。まただ。ん?この音、ゴリラの方から聞こえない?
……ねぇ、ゴリラ君。その、ね?君の体に迸っているその白いの何?音の発生源それだよね?あぁっ、音大きくなったね?
「ウホホホホォ!!」
ドラミングを終え最後に大きな雄たけびを上げたゴリラ。しかし、先ほどから聞こえていた弾けるような音は依然として奴から聞こえ、奴自身、毛が逆立ち何かを身に纏っている。
ねぇ、ゴリラ君、それまさかなんだけどさ……電気じゃないよね?え?もしかして……第二形態!?そしてそんなことするんだったら私急いでポーション飲む必要なかったじゃん!ゆっくり飲めたんじゃん!
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