第151話 ファッションヤンキー、助けに入ったら
「おらっ!どうだよ!いきなり出てきやがって!」
「何だこいつ、ちっとも反撃しねぇじゃねぇか!驚かせやがって!」
「威勢のいいのは最初だったって事だ!粋った格好してるくせによぉ!」
「はぁ……何とか……言ったら……どうだよぉ」
「ちょっ、ビクともしねぇんだけどコイツ!?」
どうしよう、とりあえず殴らせてみたら全く痛くない。防御体勢もとってないのに1ダメージも入らないじゃん。これは私が硬すぎるということでよろしいか?相手方、最初は気分良く殴ってきたけど、今では肩で息をするほど疲弊してらっしゃる。もっと鍛えたら?
まぁ、それはさておき
「それじゃあ俺の番じゃのぉ。こっちは避けずに殴られたんじゃあ。そっちも避けんなよ?」
指をポキポキと慣らし、不良共に歩み寄る。
一歩近づけば奴らも一歩後ずさる。二歩歩けばまた二歩後ずさる。……まぁ殴られたくない気持ちも分かるけどさ。自主的に殴られようとしないならしょうがない。
「逃げんなや」
言葉と共に発動したるは"暴龍眼"。奴等、一様にして私を見ていたから簡単に目を合わせて発動出来た。即座に効果は発揮され、脚は石のように固まり動かなくなり、何とか気丈に振るっていたその顔も恐怖の色に染まった。そんな化物を見る目で見ないでよ。
「よぉし、覚悟は出来たじゃろうのぉ……?」
「や、やめろ……いや、やめてください……」
あら、泣いちゃったよ。脅し過ぎちゃったかな?そもそも本気で殴るつもりは無いんだけどね?だって、私にダメージを与えられないほど弱い住人なら、ターンアタックの影響下にある私の本気の拳を受けたらどうなるか。
峰打ちスキルのようなものがあればいいけど最悪殺しかねないかもしれない。盗賊のようなモンスター扱いされる住人ならいいけど、こいつらは一応モンスターではない。モンスターのようなことはしてるけどね。そんなの殺したら罪に問われて牢獄みたいなの入れられちゃいそうだしね。
ただこのまま返すのも癪なので、リーダー格の男――確かヤンクンだっけか?奴の目の前に立ち、"震脚"を放つ。
「ひぁっ」
地が揺れ、元々暴龍眼の影響でガクガクだった奴らの足腰はとうとう崩れ、尻餅をついた。眼に涙をためて私を見上げちゃってまぁ。
「どうしたんなら。これじゃあ俺が苛めとるみたいじゃろうが」
「す、すみま、すみません……!」
情けない不良たちのその姿に私はため息をついて振り返る。
そこには痣だらけの顔を上げ、私に視線を向ける不良たちのリンチの被害者がいた。その住人は何が起こったか分からないと言ったばかりの表情で私を見上げている。
その痛ましい姿に、私は無意識のうちにもう一度ため息をつき、ウィンドウを操作。初級ポーションを取り出し被害者に投げ渡した。
「えっ……」
「飲んどけや」
「でも」
「飲め言うとるんじゃ」
少しきつめに言うと、被害者は小さく悲鳴を漏らし、言われた通りに初級ポーションを慌てて飲む。少々零したようだけど、回復には十分だったようで顔の痣がきれいに消え去る。服や髪は依然ボロボロぼさぼさだから姿そのものは汚いままだけどね。
「さて、お前らじゃけど……」
「ひっ」
「次、馬鹿な真似してみぃや。そン時は今度こそ殴りに行っちゃるわ」
出来る限りドスの聞かせた低い声で不良たちに宣告すると、壊れた人形のように首をガクガク動かし「去ね」と告げるとまだ腰が立たないのか、犬のように四つん這いで逃げ去っていった。
これ、アイツらがこのまま警察みたいな機関に行ったらどうなるんだろ。まぁ、ボコってたら一発殴られて大人数で殴り返したら睨まれましたんで逃げてきました~なんて言えるわけないか。
さてと、やるべきことは終わったし、騒ぎを聞きつけた誰かが来てもおかしくないしこの場からとっとと離れようかな。そう思い、脚を進めようとしたその時
「待ってくださいッス!」
背後から聞こえたその声。瞬間、私は色々察した。何だ、その取ってつけた様なあからさまな語尾?いやな予感に襲われながらも恐る恐る振り返ってみると、そこには立ち上がってキラキラとした憧れのプロ野球選手に出会った少年のような目で私を見つめるリンチ被害者の元気な姿が――ってか声高くない?
よし、退散しようそうしよう。
「元気になったよぉじゃの。んじゃ」
軽く手を上げ、すぐに視線を前に戻し歩を進める私。ムムッ、重量感が
「だから待ってくださいッス、アニキ!!」
「誰がアニキじゃ!俺に弟はおらん!裾引っ張んな!」
「自分をアニキの子分にしてほしいッス!」
「舎弟はいらん!」
「安心してほしいッス!自分の場合妹分ッスから!」
「そういう問題じゃ……ん?」
ちょっと待って今聞き逃せないこと言った?
「妹分?」
「そうッス!お願いしますッス!」
ん、んん?確かによく見ると、男っぽく見えるけど女の子……。ってことはよ?あいつ等、女を寄ってたかって……見逃さずに殴っとけばよかったぁ!!
ってかこの状況どうしよ!!
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