第120話 ファッションヤンキー、知り合いと会う
「あーぁ、危なかったわぁ……」
ノミコンを下し、フィールドに戻った私は大きくため息をついて座り込んだ。今回はノミコンのMP管理ミスとバンテージのMP極微吸収のお陰で勝てた気がする。あんなスキルまであるとは思わなかったなぁ……もし遠距離職が持ってたら絶望的だね。まぁその時は潔く散るかな?どうせ近づこうにも近づかせてもらえないんでしょうし。
その後、私は何戦か対戦し、ポートガス街道の外れ道を犀繰に乗りながら探索した。……そっちは成果は無かったけどね。そこで私の今日のプレイは終了した。イベント的にはずっと対戦に潜ってた方が良いのかもしれないけど、宿題もあるし同じことしてると飽きちゃうし。
おっと、ログアウトする前に今日の戦歴を確認しておこうじゃありませんか。えーっと、イベント項目を開いて、戦歴ボタンを押すと――10戦6勝か。6割ならまぁ負け越しよりはいいんじゃない?ま、ポイント自体は5ポイントなんだけどね!!!んじゃまた明日ー
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"運営よりメッセージが届いております"
翌日ログインしてすぐにメッセージが届いたとお知らせが。まぁ大体察しはついているんだけどね。開いてみるとやはりというか、昨日の即サレノーゲームの件だね。ふむふむなるほど……?要約すると
・ビルドと運営で協議した結果、今後即サレンダーの場合でも勝者にはポイントが付与されることになる。
・昨日の時点で即サレンダーされ、ポイントが得られなかったプレイヤーには同等のポイントが付与される。
・ただし、異常な数の即サレンダーをされたプレイヤーにはビルドからの調査が入る場合もあるので注意が必要。場合によっては、即サレンダーで得たポイントは全て没収も有り得る。
って感じかな。確認したら私にもマコト君がサレンダーした分の1ポイントがちゃんと追加されている。うん?何かメッセージの端に絵があるね。これは……妖精の羽とその前面にハンマーとスパナがクロスしたマーク?はぁーん、これがビルドのマークって事?
ま、何はともあれこれで即サレンダーされても大丈夫になったね!――そもそもマコト君以外にはされてないから杞憂かもしれないけど。
さてさて、では今日も早速対戦と行きますかね!マッチング開始っと!
"2人のマッチングプレイヤーの了承を確認いたしました。あなたの対戦相手……『メゾフォルテ』。戦闘フィールド……道路になりました。5秒後にフィールドに転送いたします"
ん?待ってその名前聞き覚えがあるんですけど?私の記憶が正しければ……あぁほら、やっぱりだ。
飛ばされたフィールド、4車線の道路で私と相対するのは、もじもじと身を縮めている長身で燕尾服を着た女性。間違いなく私がコング・コンガとコング・コング・コンガ・サンダを譲った奏者のメゾフォルテさんだ。まさかここで知り合いに当たるとはね。プレイヤー人口多いから結構な確率だと思うけど、それよりも……
"それでは『メゾフォルテ』対『オウカ』の対戦を開始いたします。ready……"
"GO!"
――とはなったけど別に話しちゃいけないわけじゃない。武器を構えていないメゾフォルテさんは基本気が小さいから、私から話しかけるべきだろう。
「久しぶりじゃのぉ、メゾフォルテ」
「は、はぃい。その節はどうもです……」
お変わりないようで何より。でも武器というか楽器かまえたら豹変するんだよなぁ。
にしてもメゾフォルテさんがこういうイベントに参加するのは正直意外だ。生産職でも血の気の多そうなパックンさんや竹輪天さんとは違って普段のメゾフォルテさんは本当に大人しい。対戦とかしなさそうなんだけど。気になるからやんわりと聞いてみたら
「あ、あの……最初は乗り気じゃなかったんですけど……楽器持ってたら気分が高揚して行ける気がして……気づいたら……」
「もはやそれは二重人格じゃないんか……?」
「え、と……始めさせてもらいます!」
私のツッコミが聞こえたのか分からなかったけど、メゾフォルテさんはおもむろに武器となる楽器を取り出した。コング・コンガ系かと思っていたらその予想を裏切り彼女が装備したのは、バイオリンだった。
「ほぉ、俺があげたコンガじゃないんか」
「ご容赦を。あなたに打撃武器であるコング・コンガは相性が悪いでしょう?ですのでこちらで奏でさせていただきます」
出たよ、紳士メゾフォルテさん。縮こまっていた体がスッと伸び、気弱そうな表情は鳴りを潜め、余裕のある微笑に変わる。絶対二重人格だよこれ。
うーん、私とメゾフォルテさんとの合間は結構離れている。まずは近づかなければお話にならないけど……!
「それではご清聴ください――!」
バイオリンを構え弾き始める。本来であれば聞き入るほどの音色なんだけど、ファンタジーなゲームだからね!音色と共に風の刃が私に襲い掛かる。回避?ハッ!そんなこと出来るDEXもなければする気もありませんとも!幸い、このバイオリンでの攻撃は私の足を止める程では無い。痛くはあるけれども確実に前に進めている。
「よぉ聞こえんのぉ!もうちょっと近くで聞かせてくれや!」
「おや、それは残念です。しかし、奏者に触れるのはご勘弁ください」
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