第15話 ファッションヤンキー、打ち合わせをする
「分かった。では交渉成立ということで、依頼の募集を打ち切ってくれるか?」
「そんなこと出来るんか……」
なんてことを言ったが、打ち切ることができなければ、他の人の制作物が際限なく送られてきちゃうことになっちゃうな。契約を結んでおいてその裏でさらに募集するというのはあまりにも不義だよね。
竹輪天さんに教えてもらいながらウィンドウを開き、発注メニューを開く。そしたら私の発注した依頼を打ち切るか破棄するかという選択肢が現れたので打ち切りボタンを押す。そしたら、再び申請するまで募集されることが無くなるとのこと。
「よし、OKじゃの。」
「では、早速だがオウカさん。スケッチさせてくれないか?」
「スケッチ?何でなら。」
「勿論、貴女に合った服を考えるためだ。」
それならばスクショといういわゆる写真をとればいいのではないかと聞いてみれば、自分の手で相手の姿を描いた方がインスピレーションが沸くのだとか。竹輪天さん、私の思った以上に装備というか衣装作成ガチ勢なのかな?
しかしそれで私に合うものを作ってくれるというのであれば断る理由はないよね。……でも私そろそろ眠かったりするんだ。
「構わんけど俺そろそろ眠いから早めにお願いできん?」
「あぁ、時間はかけないが……早いな?まだ22時だぞ?」
「高校生じゃけぇ、あまり夜更かしには慣れてないんよ。」
私のその発言に竹輪天さんの動きが完全に静止する。いや、目は上下に動いて私を観察しているなこれ。
「高校生?にしては身長高いな……?弄っているのか?」
「いや、全然?」
「……最近の子供は発育いいのか?」
すいません、それは多分私だけです。私以外のクラスの女子は150~160㎝そこらなんで私が異常なんです。
困惑したすぐに気を取り直した竹輪天さんは、インベントリから紙とペンを取り出すや否や、すさまじいスピードでペンを走らせる。え、やっば。
スケッチということはあまり動いてはいけないのだろう。絵に起こされる事に少し恥ずかしさは覚えるが、服のためなら何のその!私は甘んじてスケッチの対象となったのだ。
「終わった。」
「早っ。」
「顧客を待たせるのは俺の主義ではないからな。……と言っても流石にオウカさんが寝入るまでに出来るかと言われればNOだ。明日完成次第、メッセージを送るということでいいか?」
「あぁ、頼むわ。」
ということで今日のところは解散となった。
さて、最後にポーションとか買いますかね。流石に初心者用ポーション無くなっちゃったし、補充しなければなるまいよ。
私の場合、ソロプレイが基本で回復手段がポーションしかないからね。切らしてしまうと非常に不味いのだ。
そのために道具屋に来ているのだが……店主めっちゃ睨んでくる。
「何なら。」
「何、お前がうちの商品を盗まないか監視しているだけだ。」
「盗むとか物騒じゃのぉ。何か根拠でもあるんか。」
「人殺してそうな目ぇしやがって何言ってやがる!」
殺したことないんだよなぁ……PKもまだやってません。殺る予定があるのかと聞かれれば、相手が殺る気なら迎え撃つよ程度。ヤンキーは無暗に暴力を振るわないのだ。……モンスターは例外としてね?
なんてことを説明してもおおよそ信じてもらえないだろう。これこそ、職業ヤンキーを取得したデメリットなのだろうなぁ。店主が強気な性格だからこんなこと言っているのかもしれないが、他のNPCなら怯えて会話すらしてくれないかもしれない。ナニコレ悲しい。
「チッ、盗まんって。そんな大層なもんあるわけじゃないじゃろうが。ほれ、いくらなら。」
「ケッ、どうだかな!初級ポーション10個で250Gだ!」
あ、ちゃんと商売はしてくれるのね。してくれなかったら詰んでいたかもしれない。……いや、もっと悪い存在になれば売ってくれることすらしてくれなくなるのでは!?それは困るなぁ。プレイヤーからしか買えないじゃん。
「また来るわ。」
「盗まねぇなら精々金を落としていくんだな!」
いや、本当に悪いことしてないんだが、ここまで嫌われるものなのか。これ下手したら心折れちゃうよ。折れないけどね!これくらい想定内さ!多分!
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"ログアウトしますか?"
YESっと。
YESを選択することで目の前に"お疲れ様でした"とウィンドウが現れ、次に"ヘッドギアを外してください"と表示されたのでその通りにする。
部屋に掛けられた時計を見る。22時35分……うん、ちょいどいい時間だね。寝ようか。
風呂に入って布団に潜ったところで時刻は23時過ぎで、眠気も丁度いいくらいだね。
宿題は明日からちょくちょくやるとして……あ、美影にメッセージ送らなきゃ。えーっと、"AFW届いたからやってる"っと。
寝よ。なんか電話来てるけど美影だしいいや。眠気には勝てん。スヤァ……
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