第13話 ファッションヤンキー、依頼を出す

「――という訳で生産依頼を出したいんじゃけどどうしたらいいん?」


 私はパックンさんの教えの元、私の防具を作ってくれる人を探すべく生産ギルドの受付に来ていた。

 もはや恒例となったビビられはスルーして、発注方法を聞いてみると、これが意外に簡単だった。

 発注したいことを告げると、目の前にウィンドウが現れ、それにユーザー名と希望する装備もしくは道具を記入。次に満足いく装備だった場合の報酬金額を設定。でOKらしい。


「のぉ、これって満足いく装備じゃなかったらどうなるん?」

「満足いくものでは無かったら、依頼者は勿論報奨を払わなくても大丈夫です。その場合、生産者側には断られた装備が戻りますが、その装備を自動的に素材に戻すか選ぶことができます。あぁそうだ、商品が納品されて丸2日反応がないと購入意思なしとみなされ生産者に戻されますのでご注意を。」


 それならトラブルは……無いのかな?まぁそうでもしないと依頼者側は、手を抜いたものだったり禄でもないものを掴まされかねないか。

 という訳で他に質問することはないので、依頼を発注することに。

 えーっと、名前はオウカで、希望する装備は――

 さて、ヤンキーの服と言えば、どちらにしようか。私の思い描くヤンキー像には2つの服が存在する。

 1つは学ランで、もう1つは特攻服……うぅむ、実に悩ましいよねこれ。だってさ、どちらもそれぞれの良さがあるじゃん。


「あの、別に複数希望出しても構いませんよ?」

「そうなん?じゃそうしよ。」


 受付さんの助言に感謝しつつ、希望欄に学ランもしくは特攻服と記入する。……あ、性別女だけど、男物でよろしくお願いしますっと。

 あとは報酬金額だよね、どうしようか。

 今私の手元には、ヤンキーに成るためにワンズフォレストで暴れまわった際に発生したドロップアイテムを売りさばいて手に入れた875Gがある。パックンさんに依頼したのが3000Gだよね。それを加味して……とりあえず1500Gかな?稼がなくちゃ。

 あ、備考欄がある。えっと、ゴテゴテしたものじゃなくてシンプルで格好いいものでお願いしますっと!


「それじゃ、これでよろしく頼むわ。」

「はい、確認しました。もしかしたら生産者の方から依頼に関してメッセージが飛ぶかと思います。そちらは対応しなければいけないという義務はありませんが、より良い装備を作ってもらいたいのであれば、交流することをお勧めします。」

「分かった。」



 場所は変わってワンズフォレスト。

 私はお金を稼ぐために、絶賛元気に大暴れ中!

 しかし、ヤンキーになってから習得してから得た喧嘩術のおかげで、喧嘩キックだの木刀を振るうことなどがスムーズに行えて結構気持ちがいい。本当にマンガのヤンキーにでもなった気分だ。

 頭踏み抜いてゴブリン終了っと!


"戦闘行動により震脚スキルを習得しました。"


 おん?震脚?何かの漫画で見た気がするね?何だろ。


震脚

脚で地面を強く踏みつけることで半径3メートルに地震を発生させる。

宙を浮いている相手には無効となる。


 え、人の身で半径3メートルとは言え、地震発生させれちゃうんですか。ただ単にすげぇ。

 地震そのものにダメージがあるわけではないかもしれないけど、地面が揺れることで敵がすっ転んで隙が生まれるかも。あれ?でもこれ味方も……まぁ私一匹狼のヤンキーっぽくソロで行くつもりだから関係ないね!


 その後も殴っては投げ、木刀を振るっては回収してを繰り返していたら今までとは見たことの無いモンスターと遭遇した。

 ……狸?ふわふわの毛皮に覆われたまん丸狸?にしては大きくない?私の背ほどあるよ?


"大玉狸"


 あ、名前結構そのままなのね。毛を逆立たせ、甲高い声で鳴いているし威嚇しているのだろう。ただどうしてもまん丸ふわふわのためいまいち迫力に欠けるなぁ……?

 じっくり観察していると大玉狸は手足を引っ込め完全な球体と化しポンポンと跳ねだす。

 待って、この動き嫌な予感しかしないんだけど。こういう玉状のモンスターがやってくることと言えば!


「ギュグァーッ!!」


 鳴き声と共に回転を伴ってまん丸ふわふわが飛んできやがりました!

 この動き、間違いない肉弾戦車!となれば下手に受けずに避けるのが常套。しかし今の私は不動のヤンキー!正面から受け止めてやる!

 両手を大きく広げ、大玉狸の肉弾戦車をその身で受け入れる。

 中々の衝撃!だが――


「あの糞ゴリラには及ばんのぉ!軽いんじゃダァボ!」


 他のモンスターに比べ、見た目相応に攻撃力はある。が、コング・コング・コングのあのパンチに比べたら可愛いレベルだ。

 事実、不動スキルも発動した私を一ミリも後退させることは出来ていない。ただ回転は続いているのだが、いい加減鬱陶しいので腕に力を籠め大玉狸の回転を強制的に止める。


「ギュ、ギュアァ……」


 回転が止まった大玉狸と私の目が合う。

 大方、自分の得意技を避けることなく止められたことで、私を脅威に思ったのだろう。大玉狸の目には先程までの闘争心にあふれていたのだが今は滅茶苦茶私に媚びるような視線を向けてくる。

 あらやだ可愛いじゃない。しょうがないにゃあ、そんなに可愛い顔されちゃ見逃さないわけには行かないじゃない。


「飛んでけやぁ!」


 大きく蹴り上げ、大玉狸を上空へと蹴り飛ばす。奴が空中で空気を壁とし横に跳ねられるというなら私のやろうとしていることは出来はしないが、そんなことはないようで、大玉狸は上昇を止め落下を始める。

 それを確認した私は木刀をさながらバットを持つかのように両手で握りしめ、さもトスバッティングをするかのように落ちてきた大玉狸を――かっ飛ばす!


「ギュギュギューッ!!」


 上に、そして真正面に打ち飛ばされた大玉狸は数本を木々を薙ぎ払いその勢いが止まったころには、体力が全損し、消滅した。


"レベルが1上がりました。"


 お、ラッキー。


"メッセージが届きました。送り主 竹輪天 件名 生産依頼についてお願い "


 おん?メッセージ?

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