第163話 ファッションヤンキー、水虎と戯れる
「ぬおおおおおおおお!?」
はい、オウカです。今私、巨大な虎に肉球を押し当てられてるの!上から!でもね、感触楽しめないの!何故なら不動噛行で何とか潰されないように耐えてるから!
『呵々、やはり潰れぬか。良いぞ良いぞ』
「こっちはよくねぇわアホ!!」
シャンユエは非常に楽しそうに笑いながら私を潰すために前脚に力を入れる。ダリグリカの時もそうだったけど、不動嚙行の耐久に救われている気がする。トーレントルーパーの希少な漆黒の木材だけあるね。
さて、このまま潰されるわけには行かない。ダリグリカと同じ状況になった時は猪突で無理やり抜けたんだっけね。今回も同じ手を使ってもいいけど……少しシャンユエが遊んでいる様に楽しんでいるのが癪だ。目に物を見せてやる。
『なんじゃ?また威圧か?残念じゃの、来るものと分かれば――ぬぉっ!?』
シャンユエが私の眼が光ったことで暴龍眼の威圧効果ではないと察したようだが、遅かったようだね。私が発動させたのはレーザーの方だ。レーザーはシャンユエの分厚い水の前脚を物ともせず貫き奴の顔面までも……あぁっ脳天狙ったのに回避されちゃったよ。
しかし、無理やりな避け方だったようで、シャンユエは大きく体勢を崩し倒れてしまった。
『待て待て!何で目から光線が出るんじゃ!』
「そんなん俺が聞きたいくらいなんじゃけど」
『……お主ヒューマなんじゃよな?』
シャンユエのような上位の存在から見ても私って変みたいですね。オイその変なものを見る目やめろ。お前それさっき私がお前に向けていたものと同じ目だぞ。
って今は戦闘中じゃん。そんなことしてる場合じゃないよ私。シャンユエは現在無防備……つまりは殴るチャンス!その澄んだ色の背中に不動嚙行叩き込んだらぁ!
「どぉらぁ!」
『ぐぅっ!?』
おぉ、小虎の時も思ったけど私の攻撃はシャンユエにいい具合に通っているようだ。そのまま連続で叩き込みたかったが、そう上手くは行かず、シャンユエはそのデカさを有していても軽々跳躍して私から距離を取った。
『おぉ痛。ドワーフ娘の槌といい、一撃でここまでダメージを出されるとはのぅ……少し自信を失うわぃ』
「ピンピンしといてよく言う爺さんじゃのぉ!」
猪突を発動し、シャンユエに接近する。その際に一旦不動噛行を片付け、薄汚れたバンテージを装備し"龍拳"を意識して発動させる。継続ダメージはちょっと痛いけれど我慢しよう。
さて、近づきは出来たけどシャンユエも私を迎撃する構えだ。そもそも小虎の時のように水弾ぶっ放せばいいのにそれをしないのは、私に合わせているからだろう。まぁ、それをされたら私すぐにやられちゃうから厚意に甘えさせてもらうけど。
『どれ、木刀を仕舞ったようじゃがどう防ぐかのぅ?』
「安心せぇ!そもそも防がんわ!」
シャンユエが繰り出したるは前脚……先程の踏みつぶしとは違い真っ直ぐ私に向かってきている。これは俗にいう猫パンチ!そんな可愛い物じゃないけどね?それに対する私が繰り出すのは何の変哲もないヤンキーパンチ!猪突のスピードが乗ってどれほどの力を発揮できるのか。今、私とシャンユエの拳が交わる。
「うおっ!?」
『ぬぅっ!』
結果、相殺。これは私のATKが上位と匹敵すると喜ぶべきか、越えられなかったことを嘆くべきか……後者だよねぇ!?シャンユエは相殺による衝撃で後方によろめくが、生憎私はノックバック耐性は山盛りだ。大した反動はない。シャンユエが仰け反っている間に攻撃を叩き込む!ついでにMPも吸収!
『ぐっ!ぬぉっ!』
よしよし、ダメージも無事通っているようで、シャンユエも苦しげな声を上げている。
『ええい、煩わしい!』
シャンユエが地を叩くことで衝撃波を発生させる。震脚に似たような物かな?まぁこれでもダメージを受けることはあっても吹っ飛びはしないんですけど。あー、でも思ったよりは痛いかもしれない。
まぁその分攻撃すりゃいいか。
「痛ぇなオラァ!」
『なっ!?少しも退かんのかお主!』
「あの程度で吹っ飛ばされるようじゃヤンキーは務まらんけぇのぉ!」
『ぐぅ!ヤンキー恐るべし!!』
いやまぁ、ヤンキーみんながみんなノックバック耐性あるとは限らないから……リアンもノックバック耐性は無かったはずだからね。……成長したら分からんけど。
そんなことを考えながら殴り続けていると不意に腹に衝撃が走った。シャンユエは前脚で攻撃してないはず。そう思ったが、腹に突き刺さったものの正体を見て得心がいった。
「尻尾でも攻撃できるんか……」
『当然じゃ。十分殴ったじゃろう。今度はこちらの番じゃ』
尻尾に意識が行った瞬間、頭上から強い衝撃が走り、そのまま地面へ叩き込まれた。やっべ、あまりの衝撃にスタン状態になっちゃった。
しかもそれをいいことに、シャンユエは尻尾で私を持ち上げると、意地の悪そうに口角をあげる。
『終いじゃ』
そう告げると、尻尾の拘束が解かれ私の体は重力の導かれるまま、自由落下を始める。このまま落とすのが目的?いや、そんな訳がない。あの顔は落とすだけじゃ済まさない、そんな顔だった。なら何をするつもりか……ふと、上を見たことでその答えが分かった。
「さらに叩き落とすんかい」
肉球が迫り、ぶつかる。気付いたときには私は地面とキスしていた。ハハッ減り込まなかっただけ運がいい、のかな?
"パッシブスキル 踏ん張り所の効果が適用されました。次の発動は30分後です"
"パッシブスキル 龍驤麟振の効果が時間経過により変化いたしました"
"暴龍眼と龍拳が変化いたします"
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