第108話 ファッションヤンキー、礼をする
「はい、とうちゃーく。お疲れ様ー」
「お、おぉ……」
あの後、情報屋に担がれた私は無事洞窟の外まで無事たどり着いた。……いやまて、結構疲労困憊してるから無事じゃないな?ただ担がれているだけだからと侮るなかれ。まるでジェットコースターに乗っているような心境だったよ。
他のプレイヤーの視線を浴びながらも洞窟内を確認してみるが、土蜘蛛連中及びファンキースパイダーたちが追ってくる気配は感じられない。撒いたようで何より。……何よりなんだけど。
「のぉ、情報屋あいつらは何なん?」
「あぁ土蜘蛛の事?情報があると言えばあるが……売らないぞ?土蜘蛛たちも一プレイヤーだからな、個人情報はきっちりしとかなきゃな」
「その代わりにヤンキーちゃんの情報も売ってはいないぞ」と言葉を続け、情報屋は大きく伸びをする。改めて思うけど、こいつこんな黒ローブ羽織っといてよくあんな動きで来たなぁ。それでいて中身見えなかったし。そこは徹底してるんだね。
うーん、しかし今回はストーカーされていたとはいえ情報屋に助けられてしまったな。このまま借りを作っておくのはあまりよろしくない。であれば――
「情報屋ぁ、礼じゃあ。ドラゴンの情報いるか?」
「詳しく」
凄い速さで喰いついて来たな、こいつ。まぁ好印象で何よりです。
そんな訳で今回の御礼として私は情報屋に青龍トルネイアについての情報を提供した。ちなみにサラマーダについては語ってないよ。あのドラゴンとは自分の力で遭遇した訳じゃないもんね。……まぁトルネイアも偶然と言えばそこまでなんだけど。
「はぁー、なるほどなぁ!だから土蜘蛛たちはあの洞窟に……合点はいったな」
「そもそももうおらんかもしれんけどのぉ」
サラマーダもそうだけどかなり知性のある存在みたいだからね。そんな存在が自分が捕らえられた場所に戻るわけないよね。いや、復讐のために戻るって線もあるか。
この情報に関して、情報屋は結構な額が付くとは言っていたけど今回は御礼なので提供料は無しでいい。いや、もしも報酬をちゃんと支払わなきゃおさまりが付かないというのならもらっても――
「えっ?タダでいいの?サンキュー」
「お、おう」
そうだよ!タダでいいんだよこんちきしょう!
・
・
・
「無理だ」
「無理か」
情報屋と別れた私はその足で、今の私の服装備を作ってくれた竹輪天さんの元を訪れていた。
驚きなのが、会わない間に竹輪天さんはお金を稼ぎまくって今ではウーノの街で自分の店をオープンさせていた。それ生産職からしたら1つの到達点なのでは?すっごいわぁ……お客さんも結構いるみたいだし。
さて、私が竹輪天さんに会いに来たのはただ世間話をするわけではない。私の装備についてだ。
性能が物足りなくなったのかと聞かれればそうではなく、単純に状態異常耐性を付与できないかという相談だ。防御に関しては全く問題ないからね。
でもまぁすげなく断られちゃったけど。
「まぁ聞け、オウカ。俺が無理と言うのはその装備に付けるのは無理という話だ」
「それは、"踏ん張り所"と"存在強調"がついとるけぇか?」
「そっちじゃない。そっちはセット効果で付いたスキルだ。元々ついていた"衝撃耐性"と"恐怖耐性"の方だ。」
あぁ……そう言えばそんなスキルついてたなぁ……あまりにも当たり前な存在すぎて忘れちゃってた。そうか、吹っ飛びにくかったのは踏ん張り所とかだけじゃなくて衝撃耐性の影響もあったのか。恐怖耐性はそもそも恐怖するほどのことは体験してないな。
「装備品からスキルを取り除き、別のスキルを――ということは出来なくてな。いや、もしかしたらもっとレベルを上げることが出来れば可能かもしれないが、少なくとも今の俺には無理だ。」
「えー……じゃあ毒耐性とか習得できんのんか」
「自分自身で習得すればいいのでは?」
「そうなんじゃけどのぉ」
如何せん取得方法がね。毒食らいまくってー麻痺食らいまくってーだったらちょっと面倒というか……
「となると、新しい装備を得るとなるが……」
「あるんか?」
「勿論ある。あるが……」
そう言って竹輪天さんが取り出したのは、おおう滅茶苦茶フリフリしていらっしゃる衣装とめっちゃとげとげした衣装だ。後者は何だこれ世紀末か?
「今ある在庫の中での状態異常耐性スキル持ちの服はこの2つだ。アイドルをイメージしたものとヒャッハーな服だな」
「需要有るんか?」
「意外とある。特にヒャッハーは売れるぞ?」
人気なのアイドルの方じゃなくてそっちなの!?いやぁ分からないもんだなぁ……でも流石にこれはなぁ
「俺には合わんのぉ」
「ん?確かにヒャッハーは合わないだろうが、こちらはそうでもないんじゃないか?」
そう言うと竹輪天さんはフリフリした方を持ち上げ特攻服の上から重ね合わせる。いやいや、何を仰ってるんですかこの人は。
「冗談キツイのぉ、竹輪天さん。俺みたいなデカ女には似合わんじゃろうが」
「いや、冗談じゃなんだが……?」
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