第4話 ファッションヤンキー依頼を受ける
「――と言ったものの今は作れないわ!」
「オ゛イ。」
あんなに自信満々に作って見せようじゃないとか言いながら何言ってだこのドワーフ。
一応理由を聞いてみると単純な話、木刀を作れるほどの木材がないと言うではないか。と、いう訳で私が木材を持ってくればそれで木刀を作ってくれるとのこと。正直、木工スキルを獲得しなくてもよくなったので有難い。木を持っていくだけで作ってくれるのだから引き受けない手は――
「あ、勿論料金はいただくわよ?そうね、持ってきた木材によるけどとりあえず3000Gは頂戴ね。」
「さんぜん?」
「……装備から見るに初心者よねーやっぱり。顔と背はいっちょ前の戦士の癖に。でも値引きはしないわよ?精々クエストでも受けて稼ぎなさい!」
顔と身長については放っておいてほしいんですけど、流石にタダで作ってもらうなんて虫が良すぎるよね。
ここは大人しく金策でもしましょうか。
で、私はドワーフ娘と別れ……え、フレンド交換?どうやるの?あ、そうありがとう。……あ、はい。パックンさん?ヨロシク……
ドワーフ娘もといパックンさんに初心者でも探索できる+木の生えているところ教えてもらった私は、プレイヤー金策一番の頼り所である冒険ギルドに向かったのであった。……ひと悶着あるよねこれ。
冒険者ギルドは思った以上に大きな施設だった。なんかこう、自動車教習所くらいの大きさかと思っていたんだけど市役所くらいはあるよね。
中に入るといるわいるわプレイヤーであろう人の姿。ここに来るまでも勿論いたけど流石にここは密集しているよね。
依頼を受ける人、パーティを探している人、ギルド職員を口説いている人色々いる。最後何してんだって感じするけど。
お、あっち特に人が群がってるね。……おっ依頼掲示板だって行ってみよか。
あれ?人空いた?……まぁいいや。近づくと目の前に依頼がウィンドウになって現れる。なるほど、ここから選べと言うんだな。
えーっと初心者向けの依頼は、ありますかねっと。ん?これはそれぞれ1回限りだけどゴブリン3匹の討伐とグレイウルフ2匹の討伐で各1000G?え、なにこれお得。これにしよう!依頼を選択したら受託ボタンを押すことで受けることができた。さ、街の外へレッツラゴー。
依頼掲示板から離れた後、ふと後ろを向いてみたら私が入る前と同じくらいの人が掲示板に集まっているんだが。
不服に思いながらも私は、大股で闊歩しパックンさんが教えてくれた場所に向かったのであった。
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何だよあの門番!私がちょっと厳つい顔しているからって他の門番に応援出しちゃってさ!まさか威圧眼の影響ここまで来るとは思わなかったよね。私の対応が本当に悪かったら門番sと戦闘にウーノの街追放だってことも考えられたのでは……!
まぁ誤解も解いたことだし大丈夫だよね!最後まで疑惑の目を向けられたけど!
……気を取り直そう。今私がいるのはウーノの街のすぐ近くにある木々が生え揃う森。私が入る前にも何人かこの森に侵入していたね。1人じゃないだけいいか。
とりあえず今回の目標。木刀に使えそうな木の採取!あとついでにゴブリンとグレイウルフ。
ん?ちょっと待て?完全に失念していたんだけど、木の採取ってどうすりゃいいの?あれか?斧ないと駄目な奴?……何とかなるよねきっと!
最悪無理なら討伐こなしてその報酬で斧買えばいい話だ!
少し歩いたところで出くわしましたゴブリン。ただし一匹ではなくて二匹いるなぁ。レベル1なんだけど私大丈夫か?別にいっか、死に戻りしても!
という訳で周囲を警戒しているゴブリン達の前に私は隠れもせず近づく。勿論気付かれるわけで。
「ギギャッ!?」
「ギギィッ!」
私に気付いたゴブリン達は腰にぶら下げていた棍棒を構え臨戦態勢をとる。
それに合わせこちらもメリケンサックを装備……はしてましたね、最初から。
さて、ゴブリン達は周囲を見渡し、この場にいるのを私だけだと確信したのか、下卑た笑みを浮かべ棍棒で手を叩きながら近づいてきた。いや、そんな簡単な確認方法でいいのかゴブリン。本当に私しかいないから間違いじゃないんだけどさ。
私はと言うとちょっと強キャラ感溢れるヤンキーのように薄く笑い、人差し指を上に向けクイクイと動かす。完全に舐めている動きです。これに対しゴブリンは、舐められたと理解したのか二匹のうち一匹が、棍棒で強く地面を叩き私目掛け飛び掛かってきた。
脳天に棍棒をぶち込むつもりなのだろう。私はそれを――そのまま受けた。痛みはないが衝撃はあるなこれ!だが、死んではいない。自身の攻撃がクリーンヒットしたことでゴブリンは笑みを深めるが、そうは問屋が卸さない。私はすかさず攻撃してきたゴブリンの首根っこを掴み地面に叩き伏せメリケンパンチを奴の顔面に減り込ませた。
「ギギーッ!!」
顔面を殴られたことでのたうち回るゴブリン。ふはは、レベル1とは言え、顔面メリケンは痛かろう!そして隙を晒したな、ということで今度は奴の頭を踏んづけ、腹にメリケンパンチ!
そこでゴブリンは力尽きたようで光となって消え去った。お、棍棒と耳がドロップした。
"ゴブリン 1/3"
あ、ちゃんと討伐数表示されるのね。これなら倒し忘れとか気にする必要ないね、やったね!
ところで
「逃げんなやワレェ!」
私は見逃さなかった。私に殺された逝ったゴブリン君の恨みを晴らそうともせず、一目散に逃げようとするゴブリンBくんの姿を。
契りを交わした兄弟の無念を晴らさず逃げるとは何事か!いや、契り交わしたかは私の脳内補完なんだけど。ただ、逃がすわけには行かない。ので、ゴブリンA君が遺した棍棒を彼奴目掛け投げ飛ばした。
あ、頭にクリーンヒットした。
"ゴブリン 2/3"
あ、逝った。追撃しようと思ったのに……
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