第120話 戦利品の分配について

北門で父ティモンと出会った私は、


「父上、良いところでお会いしました。城壁の修復が終わりましたので、報告に伺う所でした」


「今、なんて」


「北側城壁の全面修復を終わらせました」


「は〜ぁ。終わらせちゃったか。うちの力自慢を20人連れて気合入れて来たのに……。騎士団長、ラウジッツ卿をこちらに呼んで来てくれ。エーデルトはアルヴレ方面長の居場所は解るな」


「はい。存じています」


「悪いが、アルヴレ方面長をここに連れて来てくれ」


「畏まりました」


騎士団長とエーデルトは父ティモンに頼まれ兵舎へと戻って行った。


「良し!今日の任務は無くなった。みんな、解散!ゆっくりと休養を取ってくれ!」


『はっ』


父ティモンの号令に返事をして騎士や領兵達は兵舎の方へと帰って行く。父ティモンは私に近付き、


「ヴァルグード、領都で何を奪ってきたんだ。お前だけ別行動していた時があったんだろう?」


大金や大量の物資を持っていても仕方ないので正直に話す。


「金庫にあった、金貨と銀貨を全て回収しています。かなりの量ですね。帝国金貨と王国の金貨と銀貨を根こそぎ奪って来ました。

あっ、宝物庫は手を出していませんよ。あちらは手を出すと戦争が終わった後、面倒が起きそうだったので。それと、厨房の脇にある、氷で冷やされていた貯蔵庫も手を出していませんが、あそこの食料では3日持てば良いってところですね」


「なにっ!金庫を空にしてきたのか!凄いな。それで他には?」


「お酒もたんまり持ってきてますよ。地下にあったお酒は全て持ってきていますから。伯爵家や辺境伯家もかなり持って行きましたが、一番持っているのは僕です。飲めませんけど」


「うふぉ〜っ、良くやった。この孝行息子!」


そんな話をしていると、騎士団長はラウジッツ卿と騎士5人を連れて戻って来た。


「リートゥス卿、どうした」


「お呼び立てして申し訳ありません。少々計画が前倒しになる出来事が起きましたので、その場をご覧頂こうとお呼び立て致しました。アルヴレ方面長もお呼びしていますので、暫くお待ち下さい」


「うむ」


すると、兵舎の方からアルヴレ方面長と部下を3人引き連れてエーデルトがやって来る。


「ご領主様、アルヴレ方面長をお連れ致しました」


「おやっ、お待たせしましたかな」


「いや、我々も来たばかりだ」


父ティモンが声を掛ける。


「城壁の修復が終わりましたので、ご確認頂こうとお呼びしました。それでは確認をする為、外に行きましょう」


「そんな事が?」


「ヴァルグード君が居るならもしかするな」


父ティモンを先頭に皆を引き連れて、北門から外に出る。修復した城壁が見えて来ると、


「「「「「「「「「「うぉ〜〜っ」」」」」」」」」」


漏れなく皆が驚きの声を上げる。


「綺麗に修復している」


「これまた、あれ程、でこぼこになっていた城壁が……。」


「どうすれば短期間に修復できるんだ」


「素晴らしい」


皆が驚きざわざわしていると、父ティモンが、


「ラウジッツ卿、アルヴレ方面長。ちょっと宜しいか?」


3人が護衛達と離れ、小声で話し始める。父ティモンに手招きされて私も3人に近付くと、


「ヴァルグードが、領都の領主城から貨幣を持ち出しております。」


「「なに!」」


「お静かに。ヴァルグード、幾ら程あるのだ」


父から持ち出した貨幣を尋ねられたので、


「帝国金貨が5万枚程と王国銀貨が5万枚程、金貨が5万枚程で、王国大金貨が1万枚あります」


「なんと!」「それほど!」


「ですからお静かにお願いします」


「「すまん」」


「リートゥス家だけこれほどのお金を収得しては、ねたみやそねみをかってしまいますので、各領主に幾らか分配したいと思っています。王国貨幣は持っていても仕方が無いので、含有分の買い取りとして頂こうと思っています」


それを聞いた辺境伯が、


「取り敢えず、我ら4人で会議室に集まり改めて分配について相談しよう」


「そうですな。ここでは色々な目もある事ですからな。この後直ぐに会議室に行きましょう」


「では、移動しましょう。ヴァルグード、付いてこい」


「分かりました」


辺境伯が、


「確認作業は終了した。我ら4人はこれから復興プランの練り直しを行うので会議室に向かう」


「「「「「「「「了解です」」」」」」」」


北門を潜り兵舎横の会議室のある建物に入ると、


「我ら4人で大事な相談がある、護衛の者達は別室で待機または自室に戻ってくれ。必要があれば呼び出すゆえ。」


「「「「「「「「了解です」」」」」」」」


辺境伯が一人の護衛騎士に声を掛ける。


「ディック、そのアイテムバックをよこせ。リートゥス卿から引き取る物がある」


「はっ、どうぞ」


護衛騎士は辺境伯にアイテムバックを手渡す。

護衛達と別れてラウジッツ辺境伯、アルヴレ方面長、父ティモンと私の4人だけで会議室に入る。辺境伯が一番奥の誕生席に座り、左右にアルヴレ方面長、父ティモンが座る。

私は父ティモンの横に座ると、辺境伯が私に声を掛ける。


「ヴァルグード君、貨幣を全て出して貰えないだろうか?」


「構いませんが、テーブルでは無く床に置いて良いですか?テーブルに置くと重みでテーブルが壊れてしまうと思います」


「では床に出してくれ」


私は壁際の床に帝国金貨5万枚、

王国銀貨5万枚、王国金貨5万枚、王国大金貨1万枚を出入口の反対側の壁際に積み上げて置いて行った。


「王国の金貨と銀貨は帝国の金貨より少し大きいな。色合いは同じに見える。アルヴレ方面長、ダビン港町に支出準備金の金貨と銀貨はいかほどあるのかな」


「1万枚程です。それも我々帝国軍の持ち込んだ仕入れ用の資金を合わせてですから」


「街単位での準備金としては多い方か」


ここで父ティモンが発言する。


「先ずは、王国銀貨を全て準備金の金貨3000枚と交換でどうでしょう。我々が持っていても使い道のない貨幣です。」


「アルヴレ方面長、どうかな。」


「その金額で宜しければ交換しましょう」


「先ず、銀貨はこれで話がついた。アルヴレ方面長部下を呼んで金貨3000枚とアイテムバックを持ってこさせて欲しい」


「分かりました。では」


アルヴレ方面長は会議室を出て行く。


「リートゥス卿、金貨の分配は如何いかがする」


「先ずは、騎士爵に100枚、男爵に150枚、子爵に200枚、伯爵に300枚では如何ですか?そして各配下の騎士には別途2枚。兵士には各1枚お配りしては?残りを我らで折半と云う事で」


「では、騎士と兵士分で6000枚、

ヴァイマル伯爵が300枚

シェーンブルク伯爵が300枚 

ノルトハイム子爵が200枚 

ヴュルテンベルク子爵が200枚 

ホーエンローエ子爵が200枚 

男爵8家が1200枚

騎士爵25家が2500枚となるから、合計が10900枚。残りが39100枚だな。」


「もう少し積みましょう。

伯爵家を500枚、子爵家を300枚、男爵家を200でどうですか?」


「そうなると、伯爵家で1000枚、子爵家で900枚、男爵家で1600枚、合計が12000枚か。あまり変わらんな。」


ここで私が話に割って入る。


「取り敢えず、辺境伯様と父上で各1万枚を引き取って、残りは帝国軍に渡してしまいましょう。戦死した遺族への見舞金も必要でしょうから」


「それもそうだな。どうですかラウジッツ卿」


「そうしよう、では」


辺境伯は、金貨1万枚を肩に掛けているマジックバックに仕舞った。私は、王国金貨、大金貨をインベントリに収納し、帝国金貨1万枚もインベントリに収納した。そして金庫からいつの間にか収納していた皮袋を取り出し、金貨100枚ずつを皮袋に納めてその皮袋を300袋作って辺境伯の横に山積みにした。

そのうち30袋を銀貨の代金として回収しておいた。

こうして、金貨の分配は終了した。

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