第119話 ダビン港町で城壁修復

物資の奪取を終わらせて借りている部屋に戻るとエーデルトが待っていた。


「お疲れ様でした。無事に終わった様ですね」


「まぁ。なんとかね。でも未だ自爆装置の保管場所が見つからなかったし、領民の姿も見ていないからどれだけの人々が、どういう被害に遭っているか分かっていないから、物資を奪ってその人達にどんな影響を与えるか解らないのは心配だなぁ」


「これ以上は帝国軍がやるべき仕事です。子供であるヴァルグード様がこれ以上活躍してしまえば、何かと足を引っ張るやからがワラワラと出て来ますよ。

民の事は、誰がここを統治するかは解りませんがその統治者の仕事です。我々の仕事はここダビン港町の復興らしいですから」


「そうなんだ。それじゃあ取り敢えずこの戦争での手出しはここまでにしておこうかなぁ。明日、父上に相談だね。ちょっと力使い過ぎたみたいだから仮眠取るね」


「どうぞ、ゆっくりとお休み下さい」


私は、寝間着に着替えてベッドに横になり仮眠を取った。

小腹空いて目を醒ますと部屋にエーデルトの姿は無く、取り敢えず服装を着替えて冒険者の姿となり、父ティモンを訪ねる為に部屋を出て隣の部屋に移動するも部屋には誰もいなかったので、ウェルウィン達の滞在している部屋を訪ねると、2人は部屋に居た。


「ウェルウィン、ムスカーノ、父上とエーデルトが見当たらないけど何処に行ってたのか知ってる」


父ティモンの所在を尋ねると、ウェルウィンが、


「先程、帝国軍の方が来られて、鍛錬所に集合して戦利品の分配で相談したいとの事で、呼ばれて出て行かれました」


「それで、居なかったんだね。町を散策したいのだけど。付き合ってくれる」


「お供致します」


私は、ウェルウィンとムスカーノを連れて、兵舎を出て、激戦のあった北門を見る為、そちらに向かって移動する。北門の町側はそんなに傷んだ感じは見受けられてないが、北門を出ると、槍の様なバリスタの矢が無数に城壁に刺さり、壁はボコボコに抉られている。

そして、城壁の周りには畑を潰してテントが張られて避難民や奴隷兵だった者達が暮らしていた。

私は、ボコボコの壁に手を掛けてよじ登りながら、バリスタの矢をインベントリに収納して行く。北門から左半分の矢を収納するのに2時間程掛かり矢の数も400本程回収出来た。

そして、西側にある岩山まで転移して、岩山の内陸側を〝掘削〟を使って削り、それを〝分解〟で砂にして、インベントリに収納して行く。その作業を2時間程すると城壁のところに転移で戻る。するとウェルウィンが、


「転移で移動される時は、私たちもお連れ下さい。突然、何もおしゃらないで、転移されますと護衛出来ません!」


「はい。全くその通りです。ごめんなさい」


正論をぶつけられて謝るしかなかった。謝罪すると、気を取り直して城壁に向かい、城壁の際にインベントリから砂を出して〝創造〟を使いながら城壁を修復して行った。3時間掛けて左半分の高さ10m程の城壁が修復し終わる頃にはすっかり陽も暮れていた。

キリも良いので2人に、


「取り敢えず、左半分は綺麗になったから残りは明日だね」


それを見ていたムスカーノが、


「城壁の修復ってこんな簡単に修復出来るものでしたっけ」


それを聞いてウェルウィンは、


「そんな訳無いだろう。一度解体して新しい石材と交換、組み上げるのが本来の修復だ。

本来は、兵士達や住民を総動員して石工に加工をして貰いながら組み上げる。それには仮設の足場も必要になるから作業期間も1年程の必要になる大工事だな」


「ですよね。これだけボロボロの城壁ならそうなりますよね。1日で半分終わらせるなんて、あり得ませんよね」


「あり得んな」


「はいはい。感想は夕食時にゆっくりと聞くから、早く戻ろうよ。お腹空いちゃった」


「「了解です」」


北門に戻り、衛兵に挨拶をして兵舎に戻り、1階にある食堂に行って席に着くと、エーデルトがやって来て、


「ヴァルグード様、探しましたよ。伝言ぐらい残してくれても良いのでは無いですか!」


「だって、エーデルトは父上の付き添いだったんでしょ。そっちの用事がいつ終わるか解らなかったし、直ぐ戻って来るつもりだったんだよ」


「まぁ良いです。ウェルウィンとムスカーノが一緒だったんでしょうから」


ウェルウィンとムスカーノが食事を木のトレイに乗せてテーブルに着く。エーデルトも


「私も食事を貰ってきます」


と言って厨房に向かった。ムスカーノが俺の前に食事を置いて席に座ると、


「では、神の恵みに感謝を」


「「神の恵みに感謝を」」


食事の挨拶して食べ始める。エーデルトもやって来て食事をしていると、騎士団長を連れた父ティモンがやって来た。


「ヴァルグード!お前昼間、何やらかした!」


「何ですか、いきなり。昼間は北側の城壁を修繕していましたね」


「そうか。やっぱりお前だったか。分かった」


「父上も一緒に食事どうですか?」


「明日からの作業分担を決めているのだ。お・ま・えが、一番大変な北側城壁の半分を修復したから、配置を1からやり直しだ!食事なんか食えるか!」


「あ~ぁ。父上、明日は北側の右半分を終わらせようと思っていたのですが」


「ぐぬぬっ…。分かったうちの配置として話をして来る」


父ティモンは、プリプリ怒りながら騎士団長を連れて、食堂を出て行った。私達は食事を終えて割り当てられた部屋に戻ると、寝間着に着替えてエーデルトに、


「エーデルト、明日は早目に起きて城壁の修復に行くから今日はもう寝るね」


「畏まりました。明日は私もお供します。おやすみなさい」


「おやすみ」


こうして、明日に備え早目に就寝した。


翌朝、陽の出と共に起床すると、着替えをして仕度を整える。その頃にはエーデルトも起き出して仕度し、一緒に部屋を出る。

食堂に寄ってみると、

厨房では調理をしている様なので、エーデルトに食事をお願いしてテーブルに着く。

エーデルトからトレイを受取り食事をする。

2人共食べ終わって兵舎を出ると、北門に移動する。そして、北門の外にいるテントで生活している人々の事をエーデルトに尋ねる。


「そう云えば、奴隷兵と避難民のガルチ村移住計画はどうなったのかな。エーデルト、何か聞いてる」


「私は、存じ上げません。戻りましたらご領主様にお聞きしましょう」


「そうだね。色々忙しかったから忘れているかもしれないね。後で聞いてみよう」


北門に到着して、門番である衛兵に挨拶して、外に出ると右半分に刺さっているバリスタの矢をこちらもボコボコになっている壁をよじ登りインベントリに収納して行く。こちらは250程の回収すると壁から降りて、次は城壁の際に昨日の岩山から採取した砂をインベントリから出して〝創造〟を使いながら城壁を修復して行った。右半分を修復した時間は3時間程で終わってしまった。

北側の城壁修復を終わらした私は王国軍の砦があった場所までの木々を伐採しようと、動き出した時、エーデルトから、


「ヴァルグード様、どちらへ行かれるのですか?」


「えっ。畑を作ろうかと」


「お待ち下さい。こちらの修復はリートゥス家が受け持ちました。ですから、終了をご領主様に報告するのが先です。また、他所から聞かれたら怒られますよ」


「おっと。それもそうだね。父上に報告しよう」


未だ時間が早いが終わってしまったので、報告の為、戻る事にして北門に向うと、父ティモンが大人数引き連れて、北門にやって来た。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る