第88話 ウエストダンジョン③
子供組を薬草採取に生かせると、テーブルと椅子を出して、護衛組と椅子に座って会議を始めた。
「これって、僕は何もしていない。って云うか薬草採取するなら帝都の西の森に行っていた方が種類も豊富で効率が良かった。
ダンジョンの旨味は魔石とドロップアイテムだけど、ここのダンジョンはドロップアイテムの取得も少ないし低層階では得られる魔石も旨味が無い。
そこで、2日程僕とエーデルトで行けるところまで行って見たいと思う。
二人は申し訳無いけど子供達の引率とダンジョンでの様々な訓練をしておいてくれないか?」
これを聞いて、ウェルウィンが、
「そうですね。私は帝都に在留する身ですからそれでも構いません。
この装備品の数々を頂けてますから、今後、非番になれば何時でもこのダンジョンは来る事が出来ますし、ムスカーノも同じでしょう?」
「はい、私もウェルウィンと同じ思いです。
ヴァルグード様とエーデルトさんは領に戻られれば、このダンジョンに来る事が難しいと思いますので存分に暴れて来て下さい。」
これを聞いて、エーデルトが、
「二人がこう言ってくれてますから、ヴァルグード様と私は、先行させて貰いましょう。
それで、今後の予定はどうなさいますか?」
「そうだね、薬草採取を切り上げて3階層まで行こう。そこで、二手に別れよう。」
「畏まりました。
そして、子供組を集める為に、声を掛けた。
「皆んな!集まって!」
声を書けると、子供達が集まってくる。
「2階層では大した魔物も出ないし、特別な薬草も見付からないから直ぐに3階層に行こうと思う。さっきと同じ並びで進もう。ウェルウィン、お願い。」
「では、出発」
こうして、3階層に進むべく森に向かって行進を始めた。そして森に入るとゴブリンが向かって来た。
「ギャ、ギャギャァ~。」
それをウェルウィンが危なげなく、剣を横薙ぎに振り抜いて首を飛ばした。
首を飛ばされたゴブリンは地面に倒れ、魔石に変わった。
すると、横からもゴブリンが現れたがムスカーノが素早く動いて、ゴブリンに接近し、剣を横薙ぎに払い首を切ったが頭がずれて地面に落ちた。そして、死体が魔石に変わって、それを拾ったムスカーノが、
「ヴァルグード様、この剣何ですか!なんの抵抗も無く、ゴブリンを切り飛ばしましたよ。空振りしたかと思いました。凄い剣だとは思ってましたが、予想以上です。」
それを聞いたウェルウィンが、
「ヴァルグード様、私もびっくりです。こんなに切れ味の良い剣は初めて使いました。これなら、何の魔物が来ても負ける気がしません。」
そう言って、先頭に戻り先を進んで行く。
ムスカーノのその後に続いて私達も先を進んだ。
その後も、ゴブリンの襲撃は幾度もあったが、ウェルウィンとムスカーノが間髪入れずに叩き斬って仕舞うので、残りのメンバー何もする事無く歩き続ける。たまに、スライムが出てくると近くにいる子供が短剣やナイフ一撃で倒して魔石を回収するぐらい。
ゴブリン退治は一切回ってこなかった。
そして、階段を見つけて3階層に降りる。
3階層に到着すると未だまだ冒険者は多くいて感知で魔物を探すが数は少なかった。
3階層も草原と森で森の面積が広がって草原のエリアが狭くなっていた。
「3階層も代わり映えしないから、最短で4階層に進もう。」
「「「了解です。」」」
護衛組が返事をしてムスカーノが先頭に二番手をエーデルトが殿はウェルウィンとなった。子供組は変更無しで踏み固められた獣道の直線ルートを進んで行く。
途中、人の気配が無くなったと思って感知を発動させると、敵性反応が8つこちらに向かって進んでいた。
「止まって!魔物が集団で向かって来てる。武器を構えて。もうすぐエンカウントするよ! 子供達!前に出て、僕の指差す報告に短杖を使って魔術を飛ばして!」
子供達が前に出て横に並び、短杖を私の指差す方向に向けて、風刃(ウィンドカッター)を発動した。
「直ぐに、後ろに下がって!」
子供組は成果を確認せず、直ぐに護衛組の後ろに下がった。
感知で確認すると4つはまだこちらに向かって来ている。
私も剣を構えて、襲撃を待っていると、ホーンラビットが右前方から2匹、左側面から2匹飛び出した。それを私と護衛組で1匹ずつ相手をして一撃で切り飛ばした。
私は、久々の対魔物戦だったが、良い具合に処置できたことにホッとしていた。
先に、魔術で倒した魔石を子供組に探しに行かせて、自分の倒したホーンラビットを見ると魔石と肉がドロップしていた。
「あった!肉もドロップしてる!」
サイエンが大きな声で発見を伝えて来た。
ティアだけが発見出来ず。不貞腐れていたが、彼女のウインドカッターは多分、魔物に当たっていないので仕方がない。
そうして、討伐の戦利品を回収して、森に進んだ。
森に入ると先行している冒険者が粗方討伐を終わらせているようで、魔物の気配が無い。
感知を使い、魔物のいない方向を指差し、
「ムスカーノ、此方に直線で向かって。僕の指差す方向には魔物気配が無いから、先行している冒険者が進んだ跡だと思うから、これを進めば階段に辿り着くと思う。」
「了解です。」
そして、森を進むが魔物に襲われる事は無く、更に、冒険者にも遭遇する事なく階段迄辿り着いた。
階段を降りて、4階層に辿り着くと、森が随分と迫って来ていて草原の広さが減っていたがそれでもかなりの広さはあった。
「それじゃ、4階層をベースキャンプにしよう。冒険者が居ないエリアを探してそこにベースキャンプを設営する。最初から冒険者が歩いた獣道を外れて森と草原の境を奥へ歩いて行こう。」
「「「「「「「「了解です」」」」」」」」
今度は、護衛組と子供組も返事をした。
そして階段口から草叢をかき分け森の境界に向かって歩いているとコボルトとホーンラビットが出てきて、エーデルトとムスカーノが反射的に抜刀し、横薙ぎに切り捨てた。
子供達に魔石を回収させて、どんどん進む。
「ちょっと、魔物が多くなって来たから、護衛組は、前列で殿は僕がする。
それで、切り捨てた魔物の魔石やドロップアイテムは子供組が拾って歩いて行こう。
それじゃ、出発。」
「「「「「「「「了解です。」」」」」」」」
こうして、護衛3人は三角形の配置で進みながら、次々とおそってくる、コボルト、ホーンラビット、スライム、スモールボアを一撃で薙ぎ払って進む。子供達はその後に落ちている魔石やドロップアイテムを無心で拾いながら後ろを必死に付いて歩く。
私は、スクリーンに地図を出して人の気配の無い薬草の群生地を探索しながらベースキャンプ地を探した。そして、
「エーデルト、右斜めに進むと群生地らしき場所が有る。そっちに向かってくれ。」
「畏まりました。」
そして、その方向に30分程、歩くと薬草の群生地を見つけた。
その近くの草叢を私の杖で〝
トイレブースを出して、テントを張り、テーブル2卓と椅子9脚を外に並べた。
ベースキャンプの設営が終わって、皆んなに、
「今日は、歩き詰めでご苦労さまでした。
今日からウェルウィンとムスカーノ、そして子供組はここに滞在して貰います。
僕とエーデルトは先に進んで行ける所まで行って見たいと思っています。ここの滞在は3日と考えて下さい。
何事も無ければ、3日後には帰ってきます。それでは、エーデルト食事を出してください。」
「畏まりました。」
エーデルトはポトフの様なスープの鍋を出し、後はパンと串焼きを出して夕食を始めた。
「「「「神の恵みに感謝を。」」」」
食事の挨拶を済ませ食事をとる。
アミエルとコニスは食べながら目が虚ろになっている。やはり1日中の移動は疲れた様だ。サイエンとウルティアが2人を揺すって起こしながら食事をして、子供達は何とか食べ終わって結界を起動させ、テントに入って行った。
こちらも食事を済ませて明日の朝打ち合わせをすると告げて、テントに入った。
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