第89話 ウエストダンジョン④

ダンジョンは天井が発光して明るい為に、朝夜の区切りが無い。

その為に寝るも起きるも自分の体内時計任せ。

朝と思われる時間に目を覚まして、サイエンとコニスを起こさない様に、テントを出て〝浄化〟を使い、身を清めるとインベントリから剣を出して、素振りから始め型稽古に移る頃、護衛組3人も起き出して、稽古に参加する。

護衛組の稽古が組み打ちに代わり人を入れ替えて撃ち合うのを脇で見ながら型稽古をする。

稽古が終わる頃、子供達が起き出してきたので、エーデルトに朝食を出して貰い、朝食を頂く。 食事の件で、エーデルトに


「3日分の食事を残して、後は全てウェルウィンに渡して置いて、僕とエーデルト2人はどうにでもなると思うから。」


「畏まりました。 ウェルウィンこれらをマジックポーチに入れておいてくれ。」


と言って、食料を取り出し、テーブルに置く。


「了解です。」


と言って、ウェルウィンはマジックポーチに仕舞った。 それを確認して、


「それじゃ、僕達は先に進むね。ウェルウィン、ムスカーノ後は宜しく。」


こうして、私とエーデルトは森に向かって進んだ。 少し離れてから、


「エーデルト、身体強化を使って走るよ。」


「畏まりました。」


身体強化を使って走りながらスクリーンを起動させ〝地図〟を立ち上げて階段の位置を確認しながら。トップスピードで森に入り、そのままのスピードで木を躱しながら階段を目指す。

右手に杖を持って魔物が現れたら即座に〝光線レーザーを飛ばして、仕留めて魔石も拾わず進む。

エーデルトは剣を持ったまま走り、行く手阻みそうな魔物を斬り伏せて行く。そうして階段を見付けて止まり、下層へと降りていく。


5階層も草原と森でほぼ森という状況ではあったが、〝地図〟を確認しながら冒険者の居ない最短ルートを身体強化を使ってトップスピードで走る。


魔物は、ゴブリン、コボルト、に加えてホブゴブリンにビッグボア、ブラウンディアが向かって来たが移動を邪魔しなければ無視して進んだ。


「ヴァルグード様、ビックボアの肉がドロップしました。回収しましょう。」


「分かった。」


私は、急停止して振り向き、エーデルトの後ろをUターンして続いた。ビッグボアの魔石とドロップした肉を回収して、移動を開始した。


「エーデルト、ビッグボアを一撃で仕留めるなんてレベルアップしているの?それとも剣術の腕が上がった?」


「ガルチ村のダンジョンでレベルは3つ上がりました。剣の腕も上がっているかもしれません。剣技のスキル〝スラッシュ〟が生えましたから。」


「どんな剣技なの?」


「斬撃を飛ばせる剣技です。」


「凄いじゃない。」


「ヴァルグード様から貰った短杖を貰う前は

凄い剣技と思っていたのですが、この短杖から飛び出すウィンドカッターに比べたら飛距離もありませんし、切れ味もこの剣では普通に切った方が斬れ味が良いです。まあそれでも、使い道は考えれば在りそうです。」


「そうだよ、ナイフでも剣技は出せるなら、接近戦で使えると思うよ。」


「……何か、アリガトウございます。慰めて貰って。」


「先に進もう。」


トップスピードで進んでいるが、私が先行して進んだ。そうして、立ちはだかるゴブリン、ホブゴブリンを〝光線レーザー〟で仕留めてはどんどん森を進む。

階段を見つけるとその前で止まり、6階層へ足を運んだ。


6階層は階段の周囲荷少しの草原があり、それ以外は森になっているが〝遠見〟で崎を見ると岩山ががあり、岩山の麓に洞窟の穴があった。

その洞窟の穴に階段が在りそうだった。


「エーデルト、この方角に洞窟がある。そこが下層に行く階段の入口と思うから、それを目指すけど魔力は大丈夫?」


「未だまだ、問題ありません。感じとしては2割減った程度と思われます。魔法を使っておりませんから、身体強化ぐらいでは1日中使えます。」


「分かった、それじゃまたトップスピードで走るよ。」


「畏まりました。」


エーデルトに方角を示して走り出す。

一気にトップスピードで森に入って行く。

するとビッグボアが進行先に居たので杖で〝光線レーザー〟を出し、頭を撃ち抜いて倒すと魔石と肉がドロップしたので、止まって回収した。


「あぁ。携帯コンロ渡すの忘れていた。自慢の力作をお披露目出来なかった~。」


「戻るまでは、時間停止のマジックポーチですから、3日ぐらい冷めずに飲めますよ。」


「そうだね、帰りに渡せば良いか。冷めたら焚き火して温めれば良いしね。気を取り直して先に進もう。」


6階層に出てくる魔物は人形ひとがたは武器を持っていた。ゴブリンウォーリア、ゴブリンアーチャー、コボルトウォーリア、コボルトアーチャー、ホブゴブリン、ビックボア、ブラウンディアとポイズンスネークがエンカウントしてきたが、全て一撃加えて食用肉のドロップが出ない限り、無視して進んだ。

そうして洞窟の穴が見えて来た。


「エーデルト、洞窟が見えて来た。周りにテントが有るがあれで魔物が防げるのかな?」


「普通はああやって冒険者同士集まって、各自で警戒しながらベースキャンプ地守るのがセオリーです。

結界の魔道具なんて高価過ぎてこの辺にいる様な冒険者には手に入りません。 B級冒険者クラスにならないと無理ですね。」


「実際、結界の魔道具って幾らぐらいなの?」


「2000万ダラからだったと思いますよ。」


「そんなに高いの!マジックポーチなみじゃない。」


「安全をお金で買えるなら稼いでいる冒険者は欲しいと思いますよ。 ヴァルグード様が作る結界の魔道具は大きいものなら6000万ダラにはなると思いますよ。」


「そんなに!使用は十分気をつけないといけないね。」


「充分、ご注意ください。」


洞窟に歩いて向かいながらそんな話をしていると、ベースキャンプの見張りらしき冒険者が、


「おいっ小僧!こんなとこまで護衛を連れて何の用だ!」


「えっ、ダンジョンに来ているのだから探索に決まっているでしょ。」


「けっ!金持ちの道楽か。貴族坊ちゃんのレベル上げか。良いご身分だよなァ゙。こちとら命張っているのによぉ。遊びに来たのなら帰れ!お前みたいなのがフラフラ歩き回られたんじゃぁ。こっちは気分が悪い悪くなるんだよぅ。護衛のあなたも少しは、この小僧に自制ってもんを教育したらどうなんだ!」


「おいおい、僕達がここに来て何の迷惑がかかっていると言うんだ!」


「居るだけで、目障りで迷惑しているって言ってんだよ!」


と言いながら殴りかかって来た。

とっさに手首を掴み体を反転させて相手の腕を肩に乗せて一本背負い投げを打った。

殴りかかって来た冒険者は背中から落ちて肺の空気が出て、息が出来なく苦しんでいる処にエーデルトが、抜剣して冒険者の首に剣先を当てて、


「その小僧に体術で負けているお前は、ここまでお遊びで来ているのか?実力も無いくせに粋がっていると死ぬぞ。」


息が出来るようになった冒険者は青い顔になって、剣先を見ながら、


「すいませんでした。」


と謝って来た。


「謝罪を受けよう。これからは実力見定める様にな。エーデルト、剣を仕舞え。」


「畏まりました。」


そうして、冒険者を放置して洞窟に入った。



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