第23話 街を散策
ガルチ村に赴任が決まって、私は自宅から儀式以外で外出していないことに気付き、父ティモンに相談した。
「父上、僕は町並みを見たことがありません。
村を復興するにしても土台となる風景を知っておかないとキチンと整備出来ないと思います。
ですから、街への外出を許可してください。」
「そうだな、見て回らなければ必要な物が分からないか。
オデットとエーデルトを同行させるなら許可する。」
「ありがとうございます。
早速、2人に知らせせて来ます。」
「あっ、ちょっと待て。
お前に身分証を渡して置かなければいけないのを忘れていた。」
と言って引き出しからドックタグの様な銀色のプレートを出してきた。
「これは、貴族用の身分証だ。
表面には家紋が刻印されている。
うちは狼のシルエットに剣が3本が家紋になる。
剣は爵位によって本数が違ってくる。
シルエットだけで剣無しは騎士爵。
男爵は剣1本という具合で家紋で爵位も判るようになっている。
当主ではなく家族の身分証は剣が当主の物より小さく刻まれている。
裏には所有者の名前が刻印されている。
登録は先ず、家の家長が身分証に魔力を流し込むと家紋の刻印に、俺の魔力が登録される。
そして、ヴァルグード身分証を持て」
「はい」
「それに魔力を流せ。
そう、もう良い。
これで、名前の部分にお前の魔力が登録された。
これを無くすと身分が無くなるから肌身離さず持ち歩く様にしなさい。
平民の身分証は魔鉄で出来ていて、役所から発行しているので、役所に言えば再発行出来るが貴族の身分証はミスリルで出来ていて、国からの発行になるから再発行は出来ないし、身分証の紛失は貴族失格になる。
そうなると役所に登録して平民として生きていくしかなくなる。
大きな街に出入りする時は身分証は絶対必要だからな。」
「分かりました。
肝に銘じて絶対無くしません。
それでは、これから出掛けますので失礼します。」
執務室を出てエーデルトと合流する。
「エーデルト、街に外出する許可が出たが条件に副団長とエーデルトの同行が条件になった。
副団長に伝えて冒険者の服装で、正門に集合しよう。」
「畏まりました。
では、副団長に伝えて参ります。」
部屋に戻って、シンプルな服装に着替えて部屋を出ると階段前でセバスチャンに出会う。
セバスチャンが、
「ヴァルグード様、ご主人様からこちらをお渡しする様に仰せつかってまいりました。」
セバスチャンは皮袋を渡して来た。
お小遣いの様だ。
皮袋を覗いて見ると、鉄貨、銅貨、小銀貨と小金貨も1枚はいっていた。
なかなかのお小遣いだった。
「大事に使いますと伝えて」
「畏まりました。いってらっしゃいませ。」
セバスチャンに見送られ正門に向かう。
既に2人が正門で待っていた。
2人の格好は、革製胸当て、小手、膝当てに革靴武器はショートソードを持っていた。
「お待たせ、2人共凄くサマになってる。
僕も武器が欲しい。」
「あの素振りではまだ持たせられません。」
「私がお教えする予定になってるのに、稽古を付けられなくて申し訳ありません。」
「騎士団は、忙しかったからしょうが無いよ、でもガルチ村では確り指導をお願いします。」
「承知いたしました。 では行きますか?」
「何処に向かいますか?」
「先ずは市場に向かいたい。」
「ではひたすら真っすぐです」
エーデルトが先頭を歩きその後ろを私が行き私の横より少し後方に副団長のオデットが付いて歩く。
大きな建物が少し続き直ぐまた門があった。
そこを素通りして出ると、商店街になっていたが何を売っているかは商品が外から見えない為、看板でしか分からない。
魔道具屋を見つけた。
「魔道具屋に入ってみたい。」
と2人を連れて、魔道具屋に入った。
店に入ると若い女性が2人とお婆さんが1人
入口正面には大人の胸ほど有るショーケースがあり、指輪、ブレスレット、イヤリング、石の着いたペンダントが並んでいた。
左側には羊皮紙を巻いたものが棚に積んである魔術のスクロールの様だ。
その横は杖が並んでいる。
右側には 携帯コンロみたいな物や鞄、革袋
水筒の様な物、開き扉のついた箱が数多く陳列していた。
値段が一番低い革袋でも100万ダラする。
「凄い金額だね、頑丈なの?」
それを聞いていたお婆さん店員が、
「そちらの革袋や鞄はダンジョンで発見されたアイテムバックでございます。
お手に取ってご覧になりますか。」
「店員さん、こちらは買い取りもしているのですか?」
「申し訳ございません。
当店では仕入れは全て商業ギルドを通しておりますので、持ち込み買い取りはお断りしております。
ですから、当店の商品すべて商業ギルドの鑑定書付でございます。」
「なるほどね。 この革袋の容量と性能は?
」
「こちらは、クラス1ですので1m³の容量で30
「分かりました。これ買います。」
「お買い上げありがとうございます。
直ぐにお使いになりますか?」
「はい!」
「では包装せずにこのままお渡しさせていただきます。
お代は100万ダラになります。」
持ってきた皮袋から小金貨1枚をお婆さん店員に渡す。
「お買い上げありがとうございます。」
「ちょっとお聞きしたい。
羊皮紙のスクロールはお値段が結構するが、何回も使える品物なの?」
「これは、中級魔法1回使用出来るスクロールです。羊皮紙とインク代と製作費が思いの外かかっています。」
「そうなんだ。 教えてくれてありがとう。」
店を出て市場に向かう。
道中で、
「そう云えばこの領都には孤児院はあるの?」
「ございます。 生活出来ない、親が殺されて村にいられなくなったりした子供を引き受けています。
今は、教会の孤児院が1つと領で運営している孤児院が2つございます。」
「市場を見終わったら、孤児院に行きたい。」
真っすぐ歩いていくと広場に出た。
広場には様々なお店が広場を囲むように立っており広場にも、屋台が出ていた。
食べ物は肉串、クレープに野菜とソーセージを巻いた物、焼き木の実、スープ等が売っている、残りはポーション、アクセサリー、ドリンク、古着、野菜、加工食品等が屋台を出していた。
(甘い物は無さそうだなぁ~)
取り敢えずは欲しい物が無かったので、
神殿の隣りにある教会に足を運んだ。
教会に入るとシスターが立っている。
「本日は、どういったご要件ですか?」
私は、出しゃばらず副団長のオデットが
「こちらの領主のご令息であるヴァルグード様が孤児院の現状を確認したいとの事で、お連れした。
私は、騎士団の副団長を拝命しているオデット、隣は護衛のエーデルトです。」
「ご丁寧にありがとうございます。
孤児院をご覧になりたいとの事ですか?
司教に伺って参ります。
暫し、こちらでお待ち下さい。」
と一礼をして、シスターは奥へと消えていった。
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