第24話 教会の孤児院
暫くすると、カズラという司教服を着たふくよかな緑髪で茶眼の男性と対応していたシスターが、やって来た。
「孤児院をご覧になりたいとか?」
「ええ。こちらに居られる領主のご令息であるヴァルグード様が何やらお考えがあるそうで、司教殿にお話しをしたいそうです。」
オデットは、そう言って私に振ってきた。
「司教様、初めまして リートゥス家次男のヴァルグードと申します。
実はこの度、ガルチ村に代官として赴任する事が決まりまして、正式には成人してからなんですがここにいる副団長オデットが副代官として向かうので僕は成人まではお飾り何ですがね。
ガルチ村はご存じと思いますが、スタンピードで壊滅してしまいました。
その復興を任されているのですが、村民が存在しておりません。
村民募集する上で先ずは孤児の行く宛が無くなる成人間近の方々がいれば是非勧誘したいとお伺いした次第です。
ゆくゆくは、村を町に繰上げ教会も建築しようと思っています。」
「それはそれはご丁寧にありがとうございます。
私は、こちらの教会で司教を勤めております
クルゼフと申します。
以後お見知りおきを、ガルチ村ですか。
痛ましい事です。
我々も神の御元に向かわれた方々の御冥福お祈り申し上げておりました。
孤児を村民にですか。
ご紹介申し上げるのは吝かではございませんが残される孤児のことを考えると、ご領主様のご支援でもあれば彼らの心痛も幾分和らぐ事かと……」
「当然、司教のご尽力と孤児の慰撫の為には、父からの心付けを進言させて頂きます。因みにこちらには孤児は何名ほど在籍しているのでしょうか?」
「孤児院に在籍して居るのは男子30名女子60名合わせて90名が在籍しております。」
「教会は希望者の制限は有りますか?」
「その様な制限は御座いませんが聖属性を持っている者は教会を出て行かないと思われます。絶対ではありませんが、今回の勧誘はあくまで自発的に参加する者のみですよね。」
「勿論です。 貴族とはいえ強制摂取するつもりは、神に誓って致しません。」
「では、孤児院にご案内します。」
教会の奥に進み突き当りに扉があり、一旦外に出ると目の前に治癒院と書かれた看板の付いた建物があった。
その治癒院の脇の小道を進んで行くと
そこに孤児院はあった。
建物は3階建てで古そうだが
司教とシスターの後について正面玄関に回ると玄関に私を治療した中年女性の司祭と5人のシスターがいた。
「司祭様、お久しぶりです。
以前治療をしていただいたヴァルグードです。孤児院に勤めているのですか?」
すると司教が
「セルビア司祭には孤児院の責任者をお願いしています。」
「お会いする時はいつもご病気でしたね。
ご挨拶が遅れました、司祭のセルビアと申します。孤児院の院長を勤めております。
この度のご訪問はどういったご要件で。」
「実は、ガルチ村の復興を私が責任者として向うことになったのですが、お聞き及びでしょうが少数の生き残りの村民も女子供ばかりで、今はロスランに避難しております。
戻って来る人もいるでしょうが、村が機能するには、絶対数が足りません。
将来を見据えて、村民の募集をしたいのです。」
「そうですか。 痛ましい事でしたものね。
村民の条件は、どういったものになるのでしょう。」
「先ずは、我々リートゥス家の者達が先行して住居を整備してその後村民や村民候補を受け入れる予定です。
村民には無償で住居を提供します。
そして村には単身者居住用に集合住宅を作る予定です。
結婚して居る者には一軒家を用意します。」
「仕事はあるのですか?」
「農作業は必ずありますし、商売をしたければその援助も考えています。
実はガルチ村の先にある、ボロッカー山地にダンジョンが発見されています。
ここにも入植して町になるように整備する予定を領主は考えています。
ダンジョンから出てくる資源があればその地方は発展してゆくでしょう。
そうなれば仕事は幾らでもあります。
教会も作りたいと思っています。」
「そうですか。
司教様、この案件教会として全面協力をすべきだと私は考えますが如何でしょう。」
「お話を聞いて私が、考えていた以上の発展が見込まれそうです。
ヴァルグード様村の中心に教会を建てて頂けるのあれば協会としては全面協力させて頂きます。
孤児の入植はもちろん司祭と助祭、シスター及び治癒士2名を派遣致しましょう。」
「おぉ!それは破格な。」
オデットが驚きの声を挙げる。
「司教様、後で条件を整えて書面に致しましょう。村の中心に教会を建てるのはこちらも歓迎致します。
それでは、孤児達に会わせて頂けますか?」
「まぁ、そうでしたわ。
玄関先で立ち話などご案内もせず大変失礼を致しました。 ではこちらで御座います。」
玄関から廊下を進んでいると右手に階段がありそれを超えると両開きの扉があった。
そこに入ると食堂になっていて、子供達がワイワイ喋りながら座って待っていた。
「皆さ〜ん、少し静かにしてお話を聞いて下さい。こちらにいる、ご領主様のお使いの方々からお話があります。
大事なお話しですから、良〜く聞くようにして下さい。」
私はオデットを見て視線で話をする様に促したが、オデットは頭を横に振り
「私は、騎士団で副団長をしているオデットという者だ。そして、こちらにいらっしゃるのは、ここの領主のご令息であるヴァルグード様。
ヴァルグード様から皆に提案があるそうだ。
よく聞く様に。」
と、また話を振られてしまった。
「今、副団長からお話がありました。
リートゥス家次男のヴァルグードです。
今年に職授の儀を受けたばかりですが、
この度、ガルチ村という村の復興をすることになりました。
そこの村の村民を募集しています。
当然、住居は無償で提供しますし仕事も斡旋するつもりです。
是非、参加して下さい。」
「いいですか〜皆さん対象は職授の儀を終わらせている者だけですが全員に希望を聞きます、参加を希望する者は院長室に来てくだい。」
「司教様、我々は次に向かわないと行けないのでこちらで失礼致します。
書面は父ティモンに話をした後、使いが来ますのでそちらと条件を詰めて下さい。」
「ヴァルグード様、分かりました。
シスターに案内させます。」
「では、失礼します。」
こうして、教会の孤児院を後にした。
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