第25話 領の孤児院
教会の孤児院を出て、
「領の孤児院に向かいたいのだけど、近いのはどっち?」
「南門付近と東門付近に孤児院は有りますが、比較的東門が近いと思われます。」
東門と聞いて、エーデルトが、
「副団長、東門は治安が……」
「分かっているが、ヴァルグード様が向かいたいのであればイカねばなるまい。」
「どういう事。」
「エーデルトが心配しているのは、リートゥス領は比較的治安が良い領地ではありますが、それでも治安の悪い地区は有るのです。
それが東門付近になります。
あちらに冒険者ギルドがありますが、この付近から東門付近までは冒険者が利用する宿屋や飯屋、酒屋、道具屋、武器屋、防具屋、薬屋が建ち並んでいます。
東門からはボロッカー山地からの森に入れますから東門は冒険者達の出入りが多くなっています。
荒くれ者達ですから暴力沙汰は日常茶飯事ですし、怪我で仕事に溢れた者達は東南側にある集合住宅に入居させていましたが管理を領と冒険者ギルドが、押し付け合いまして、
管理する者が居らず今ではスラム化しています。
そうなると、仕事も斡旋されませんから仕事もない者が強請りや盗み・スリを働き、後ろ暗い者まで集まって来て、犯罪の温床になってしまっています。」
「ヴァルグード様、今、副団長の話にあった通り治安が悪いのでオススメ出来ません。
戻って、南側の孤児院に向かいませんか?」
「領主の息子として、それを聞いて目を背ける訳には行かないじゃないか!
それで、孤児院は何処にあるの?」
「こちらです。」
と言って、冒険者ギルドを過ぎ5軒程宿屋を過ぎて十字路を右に出曲がると左手に3階建ての建物が見えた。
「此処は?」
「ここが東地区の役所兼孤児院になります。
此処は仕事の斡旋や紹介、身分証の発行等をしています。
そして…」
副団長オデットが離している途中で、役所の職員が話かけて来た。
「副団長、なにか御用がお有りですか?」
「あぁ、孤児院にちょっとな。」
「もしかして、また捨て子ですか?
その割には身なりが綺麗ですけど……」
「いやっ!馬鹿者!この方は領主様のご令息だ。」
「えぇっ!これは失れぃ……」
と言って片膝を付こうとする。それをエーデルトが止める。
「こんなところで、臣従礼なんかするな!
皆んなが驚いてしまうだろう。
こんな格好している意味が無くなる。」
「重ね重ね失礼致しました。
孤児院でございましたね。
ご案内致します。」
「君は?」
「ここの受付主任を任されております、アイゼルと申します。 平民ですので姓はありません。」
「孤児院の責任者は?」
「オルノフ・ツー・ラウジッツ様です。
オルノフ様はこの役所の行政長でもあります。」
「ラウジッツと云うと辺境伯の縁者?」
オデットは顔を
「はい。 辺境伯の分家の5男です。
辺境伯家からねじ込まれて仕方なく叙爵させてこちらに着任しているものと思われます。
最初は騎士団にいたのですが、事あるごとに辺境伯家の威を
と言い澱んでいると、
アイゼルが、
「実はオルノフ様は正式には行政長ではありません。
オルノフは領主様に行政の仕事がしたいと直談判してこちらに行政長付の秘書官として赴任されました。
此処は爵位を持っている者は行政長しかいらしゃら無かったので、必然的に行政長の部下となりました。
しかし、行政長が体調を崩されて6月にお亡くなり、オルノフ様は爵位持ちが自分しか居ないとのことで行政長は自分だと指示を始めました。
最初は行政次官も領主様の認可を申請して、正規に任命を請けるなら指示に従うと言っていましたが、オルノフ様は申請は既にしている許可を待つまでも行政が動かないのは不味い。と押し切られて、行政長と言っている次第です。」
「それは…」
私は絶句してしまった。
領主の許可を得ていない者が行政のトップとして地区を動かしているということは、前行政長の名前を使い、やりたい放題ではないか。
「取り敢えずは孤児院に向かいましょう。」
役所1階にある奥の扉を開くと孤児院のへと、向う渡り廊下がありその先に扉があるが、扉の前には2人の兵士の格好をした目つきの悪い二人組が立ちはだかった。
「おい!ここは通行禁止だ。
誰に断ってこっちに来た。
孤児の引き受けなら通用門に回れ!
こっちには受付はないぞ。
オイゲン様から誰も通すなと言われている。」
と追い返そうとする。
エーデルトが、
「我々は騎士団の者だ。
騎士団は行政の建物に入るのに誰の許可も要らない。 そこを
と二人組は剣に手をかけて抜こうとする。
副団長とエーデルトは素早く詠唱を始める。
【【土よ、縛縄となりて 彼の者を捕縛せよ
アースバインド】】
地面から土縄が飛び出し、2人を捕縛する。
【【風よ 音の波を遮断し、静粛を齎せ サイレント】】
何かを喚こうとしている二人組にサイレントを掛けると蹴飛ばして脇に避ける。
エーデルトは逃げ出さないように足首を踏み抜いていた。
扉を開けようとするが施錠されているので
副団長が蹴飛ばした男の方に行き腰についていた鍵束引き千切ってもぎ取ると副団長も足首を踏み抜いていた。
合いそうな鍵をいくつか差し込んで正解の鍵が回ると扉が開いた。
中に入ると直ぐに子供の複数の鳴き声と
「やめろよ~!!」
「なんでこんなことするの!」
「ビェ~ン 止めてください」
「痛い!!痛い!!」
といくつかの悲鳴や叫びが聞こえてきた。
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