第26話 捕縛

私はアイゼルに

「衛兵と騎士団にヴァルグードがこちらに来るように言っている。と伝えて来て下さい。」

「畏まりました。」

と言って役所に戻っていった。

副団長とエーデルトに


「誰も殺さないように。

死ななければ何しても大丈夫です。

ではエーデルトを先頭に副団長、僕の順番で行きます。では突入。」


「ドンッ。」とエーデルトが扉を足で蹴飛ばして、突入すると、左側に14,5歳の全裸にされて等間隔に置かれた椅子に座る女の子たちが20名。その前には鞭を持った女が品定めをしている。

その左隅には30名程身を寄せ合って小さな子達が泣いている。

右隅に正座して座っている男の子達が30名

中央に棒を持っている男6名が10人ぐらいの男の子達を棒で殴っている。

2名が座ってテーブルに手を置いている。

その横で手にナイフを突き刺された男の子が「痛い」と叫んでのたうち回っている。

それを眺めながらニタニタしている男とその男に枝垂れかかっている女。

それを見て頭に血が登ったが、前の二人はエーデルトは止まらずナイフを持っている男のところに行くと枝垂れかかっている女のふくらはぎ辺りに左ローキックをして足を刈る。

瞬間女は後ろへと倒れ、エーデルトに顔を向けたナイフ男のこめかみに左フックをぶちかました。

副団長は鞭を持った女に向かって行き、気付いた女が縦に鞭を放ってきたが身体を右に傾けて躱し、そのまま女の左脇に右ジャブを打ち込んだ。

女が堪らず座り込むと顔面を蹴り飛ばした。

こちらの騒動に気付いた男達は、


「何だお前ら!」


「何しとんじゃコラっ!」


「ぶっ殺せ!」


とエーデルトと副団長とに二手3人組となって向かって行った。

私は、両手を水平にあげて練気力を指先に溜めて、男達に向けて「〝拘束〟」と左右の指先から練気力を飛ばした。

上手く男2人に練気力はロープのようにグルグル巻き付き拘束して行った。

うまく行ったのでもう2人に向かって「〝拘束〟」と左右の指先から練気力を飛ばす、更に2人拘束できた。

(«ピロン。»拘束を取得しました。)

残りの2人はエーデルトは横薙ぎに振られた剣を屈んで躱し手首を掴んで男の腹部に潜り込み腕を回して引き倒していた。

副団長は袈裟切りに振るわれた剣を右に躱して、同じ様に、左脇に右ジャブを繰り出して沈めていた。

副団長とエーデルトが倒した男達は副団長達がアースバインドで拘束した。

俺の拘束した4人も副団長達が手分けしてアースバインドで拘束したので私の拘束魔術は解除しておいた。

ここまで5分位の出来事だった。

全裸の女の子達は隅にいた女の子達が衣服を持っており各々服を着始めていた。

私は身分を明かすことにした。


「僕は、領主の息子でヴァルグードといいます。誰かこの状況を説明出来る人はいませんか?」


というと服を着終えた年長の女の子が手を挙げて前に出て来た。


「私はここでの最年長でシーラといいます。

ナイフを持って倒れているのが

ここの施設長のクザンという男でこの男が、

院長のオイゲンの右腕で1ヶ月前に突然現れて、以前いた施設長や職員を皆んな追い出してしまいました。

そして10歳以上の男の子達を冒険者登録させて、依頼をさせて報酬を奪っていました。

今日折檻されていたのは、依頼を失敗して報酬を持ってこれなかったからです。

そして鞭を持って私達を品定めしていた女は娼館の女主人で私達を娼婦にするために、品定めで全裸にされていました。

折檻をしていた男達を始め自称兵士で多分ですが、闇ギルドの人間ではないかと思われます。」


「教えてくれてありがとう。

それで、オイゲンは何処にいるのかなぁ」


と聞くとシーラが


「多分ですが役所の3階に、執務室がありそこは寝泊まりできる部屋もあると聞いて居ます。

娼婦が2人来ていたので、一人はオイゲンと一緒だと思います。」


話しが終わると、騎士2名と衛兵6名が2名拘束して孤児院に入ってきた。


「副団長、お疲れ様です。

お呼びと聞き参上致しました。」


「先ずは、衛兵は人身売買で拘束している者たちを、詰め所の牢屋にぶち込んでくれ。

そして、私達と騎士は役職を詐称している、オイゲンを捕まえに行く。

ヴァルグード様はどうしますか?」


「僕は副団長に同行するよ。

父上から絶対離れるなと言われているからね。シーラ、ここの食料はどうなってるの?」


「食事は、この1ヶ月孤児院では出ていません。皆んな冒険者をしているグループが、裏で報酬をネコババして食料を買って部屋に持ってきてくれたものを食べていました。」


「ということは横領もしてるね。」


「してますね。」


「ですね。」


「では捕まえに行こう。」


そして私達は、捕縛した者たちを連れて孤児院を出た。


オイゲンを捕縛するため一旦孤児院を出て、衛兵は捕縛者達を詰め所に、私達は役所に戻った。

役所ではアイゼルに


「オイゲンを捕縛する、居場所は判るか??」


「執務室にいると思われます。

ご案内致します。」


受付カウンターを通り過ぎ奥の扉を開くと階段があった。

一気に階段を駆け上がり3階まで来るとイチャコラと騒がしい声が響いていた。

子供達が怖く痛い思いをして居るのはコイツの所為なのに、こいつは快楽に溺れ悪事に手を染めても何とも思っていないのだろう。


「手加減はいらん。徹底的やれ。突入!!」


私の合図で騎士たちが突入する。


「キャ〜〜ァ」


「何だ!なんで騎士は入ってくるんだ。」


「喧しい!!」


エーデルトが女に乗っかっているオイゲンの髪の毛を握り引き剥がし後ろに投げつけた。

副団長は女に


「さっさと服を着ろ。」


と伝えると、騎士達に


「執務室に行き証拠を調べろ。」


騎士達は「はっ」と言って出ていった。

女は直ぐに服を着た。

オイゲンはエーデルトから下着を渡されると、それを履きながら


「こんな事をして辺境伯が黙っていないぞ。」


と喚く。


私が、

「僕は、領主の息子でヴァルグード。

お披露目で一度会っているよね。

そんなに日は経っていないから。

今日ね、孤児院を訪ねたんだ。

何が起こっていたか、お前知っているよな。」


「なっ!それは……」


「知らないとは言わせないぞ!エーデルト!」


「はっ」


「記憶が戻るように刺激を与えてあげて」


「畏まりました。」


というとオイゲンに迫り左フックを右脇腹にぶち込んだ。

「ぐはっ」とオイゲンが蹲る。


「オイゲン、記憶は戻ったかな」


返事はない。仕方無いので、


「戻って居ないみたいだ。副団長!」


「はっ」


副団長が手首周りを踏み抜く。


「ギャ〜〜〜ッ。」


もう一度訪ねようとしていると、騎士が戻ってきて、


「机の上にこんなものが、それと引き出しに来れが。」


と言って要否師の書類を副団長に差し出した。


「ヴァルグード様、書類が揃いました。

自白はなくても有罪ですが」


「分かった。連れ出して。」


オイゲンは騎士に連れ出された。

娼婦の女性も一緒に連れて行かれた。

我々3人は役所を出た。

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