第27話 もう一つの孤児院

東の役所を出て、エーデルトから


「南の孤児院に行かれますか?」


「こうなると、南も確認したいよね。」


「そうなりますね。

何も無いとは思いますが。」


という会話を受けて副団長オデットは


「では行きましょう」


と言ってもいい先頭を進んで行く。

そして広場の手前で右に曲がり更に1時間進むと副団長オデットが


「あちらをご覧ください。左手に有るのが商業ギルドです。

あの中には職方ギルド、薬師ギルド、魔法ギルド、魔術ギルドもあります。」


「そうなんだね。

錬金術ギルドはないの?」


「錬金術ギルドは錬金術師が希少な為、このジルファス帝国には王都にしか存在しません。」


「そうなんだね。

錬金術は弟子相伝だからなかなか成れない職業だからねぇ」


「先に進みますか?」


南側のメインストリートには商店が数多くあり、そして高級そうな宿屋が建ち並ぶ


「こちらには王都に行くための門ですから、こちらは商業地区という装いですね。」


とエーデルトトと喋って向かっていると東地区と同じ様な建物が見えて来た。


「ヴァルグード様、こちらが南地区の役所になります。では参りましょうか。」


中に入ると10歳になるかならないかの子供が懸命に掃除をしている。

ちょっと興味が出たので、二人から少し離れて、モップ掛けしている少年に声を掛けた。


「お掃除して大変だね。」


声を掛けた少年は


「おう。これやると小遣い貰えんだ。

お前見ない顔だけど、どっかの商会の子か?」


「商会じゃないよ。 父さんは役人してる。」


「そうか。 役人の子供か。

俺はここの孤児院に住んでる孤児だ。

親は行商人だったんだけど、魔物に襲われて両親共死んじゃったんだ。

俺の職業も商人を授かったからお金を溜めて親と同じ商人になるんだ。」


「へぇ~。そうなんだ、他の子も同じ感じなの?」


「ここの孤児院は将来の為に、希望者に読み書き、計算を教えてくれる人がいるんだ。」


「凄いね、タダで教えてくれるの?」


「ただじゃないぞ!一回銅貨10枚だ。

でもここの掃除をしたり、お手伝いをすると、小銀貨2枚貰えるんだ。

勉強で小銀貨1枚減るけど、1枚は残るから孤児の皆んなは商店や宿屋で何かしらのお手伝いでお金を稼いでいるんだ。」


「食事は、ちゃんと食べれているの?」


「毎日同じ飯だけど、お腹一杯食っているぞ。」


「教えてくれる人ってどんな人なの?」


「ジャックさんていう、役人さんさ。」


「お話ししてくれてありがとう。

もう行くね。」


「おう、じゃあな。」


話を終えて受付に居た2人と合流する。


「オデット、どんな感じなの?」


「今担当者を呼んでもらっています。


ジャックという者が窓口になっているそうで、今は孤児たちの手伝い仕事の受け口探しで、もうすぐ帰って来るそうです。」


「さっき掃除していた孤児に話を聞いたらそのジャックが読み書き計算を孤児達に、教えているんだって。」


「ほう。そんな事を。」

それから暫くして、茶髪緑眼の男がやって来た。


「お待たせ致しました。

副団長が孤児院にお越しとはどういったご要件なんです?」


「実は、ガルチ村の件は知っているよな。」


「はい。魔物のスタンピードですから知らない者は居ないんじゃ無いですか?」


「そこの復興を行うことになったんだが、

村民が居ない。生き残りも少なく成人男子に至っては0人だ。

村の修復だけなら問題ないが、村を運営するには、村民が居なければ維持出来ない。

そこで、孤児達に村民になってくれる者を募集したいんだ。」


「成る程、孤児であればしがらみもなく、若くてこれからの人材ですもんね。

それで条件は?」


「村の住居を提供、1年無税、仕事の斡旋を考えている。」


「悪くない条件ですね。

皆に声を掛けて見ましょう。

中央の窓口はどなたが担当されるので、じっしつの担当窓口はワタシになる。

連絡を私に欲しい。」


「畏まりました。

それでは、早速声を掛けて来ます。」


「ちょっと待って欲しい。

修復作業に2か月以上は掛かる。入植はそれ以降だから募集時期は遅らせてくれ。」


「それもそうですね。

では、再度ご連絡頂けるという事で、

連絡お待ちしています。」


そうして、ジャックとの話が終わり、

南の役所を出た。

1日で中身の濃い内容となったが、まだ家に帰り着いて居ないから気を引き締めて帰宅しよう。

南地区からは屋敷までは約3kmある。


「良し。駆け足して帰ろう。」


「ヴァルグード様、大丈夫ですか?

無理せず、歩けなくなったらおんぶして送りますから?」


「エーデルトの世話になるつもりは無いよ。

毎朝走っている成果を見せてやる!」


言葉を終えた瞬間身体強化を使いダッシュして2人を置いていった……のだが、5歳の躰はまだまだ鍛え方が足りなかった様だ。

貴族の地区に入る門の前で力尽き、エーデルトの背中にお世話になってしまった。

そして副団長オデットとは玄関前で別れ、エーデルトに下ろして貰って、自分の足で屋敷に入った。

エントランスで、エーデルトと別れ、部屋に戻り、衣服を着替えて晩餐の為に、食堂に向かった。

食堂に入ると父ティモンと母アリーシアが着席していた。

父ティモンが


「中々刺激的な散策だったらしいな。」


「えぇ。とても刺激的でした。

特に東地区は。 あの様な愚か者を良く使っていましたね。」


「貴族のしがらみで仕方なくな。」


「それでも、領民が被害にあっては見過ごす事は出来ません。


奴らには苛烈な処分をお願い致します。」


「そうだな、きっちり証拠も抑えて貰ったからは厳罰に処す。」


そんな話をしていたら兄姉が来て、晩餐が、始まった。


「ヴァルちゃんガルチ村への準備は進んでいるの。」


「一度ご相談したい事がありまして、

ガルチ村とダンジョンを結ぶ道も整備したいと思いますが、領都とガルチ村を結ぶ道も整備の許可もお願いできますか?」


「それは、領主として願ってもない事だが費用は幾らほど必要になるか出して見なさい。」


「分かりました。予算表を提出致します。」


「それで出発は予定通り来週の火の日で良いか?」


「私は構いません。」


「では予定通りに」





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