第22話 僕が代官?

朝の日課に畑の水やりが加わった。

1週間が過ぎると出芽し伸びて来たので、芽かきをしたのだが3000個もあるのでエーデルトと2人では全然進まない。

此処は父ティモンに泣きつく事に決めた。


屋敷に戻り、父ティモンの執務室に突撃する。

「おい!」

父ティモンが低い声で威嚇する。

私はそれを無視して、

「父上、畑が大き過ぎて5歳の僕では面倒見切れません。

後は、父上にお任せします。」


「言いたい事は色々あるが、先ず畑の件はオリーブの事もあるし、こちらで引き取ろう。お前、他に俺に言わないといけない事がないか?」


「執務室に声が掛かる前に突撃しました。

大変申し訳ありません。」

「それもそうだが、隠し事が有るだろ。」

そろそろ告白すべきかも知れない。

「実は、私の魔術は特殊でして、本来魔術は、魔法陣や魔石等の触媒を使う事で発現するのが普通ですが、僕には、魔力とは別の力が身体に宿っているみたいなんです。」


「それは何で分かったんだ。」

(ちょっと話しをアレンジしておこう。)

「職授の儀の時に、智慧神様からお教え下さいました。

それには、智慧神様から授かった言語を唱えると、その力が使える様になるとの事でした。

実際にそれを使って木々を伐採し、広場の切り株を粉砕して土地を耕しました。」


「という事は、詠唱無しに魔法とおなじ効果の魔術が使えると云う事か?」

「そう云う事になります。」

「そうか・・・そう云う事なら

ヴァルグード、お前ガルチ村の代官やれ。」

「えぇ~、どうしてそう云う事になるんですか?? さっぱり理解出来ません。

僕の歳分かってます? 未だ5歳ですよ。」


「5才児は何十メートルの高さの木を伐採しないし、大の大人が3人がかりで撤去する切り株を粉砕しないし、土地を耕す魔法なんて存在しない。

これ全て出来る人間はお前だけだ。」

「そっ、それは・・・そうですね。」

「とはいえ、子供1人に行かせる訳にはいかない。

副騎士団長オデットを副代官として

護衛騎士エーデルト、騎士10名 執事1名 メイドを3名 使用人6名付けよう。

支度金も鉄貨1000枚 小銅貨1000枚 銅貨1000枚目 小銀貨1000枚 銀貨100枚 小金貨100枚を持たせよう。

成人したら騎士爵と正式代官だ。

侍女は下の子が職授の儀を受けたら向かわせる。これでどうだ。」


(兄妹に頻繁に会えなくなるが、自由にやれるならそれも良いかも知れない。)

「分かりました。

僕は代官をやります。

母上の説得は宜しくお願い致します。」

「それがあったか〜、ヴァルグードお前説得してくんない?」

「無理です。」

そして父ティモンには地獄の晩餐が始まる。


食堂にアンジェリカを除く家族が集まった。

父ティモンが口を開く

「食事前に話をしておく事がある。

ヴァルグードの魔術が特殊で有る事が分かった。

ヴァルグードは、魔術士であるが職授の儀の時に智慧神様より神託を受けたそうだ。

曰く、神様より魔力とは違う力を授かった

曰く、神様より伝授された呪文で魔法とおなじ効果の魔術が行使できる。

というものだそうだ。

それを受けてヴァルグードは裏の林で魔術の研究を元に開拓していた。

今ではそこはジャガイモ畑になっている。

これを目の当たりにした俺は、スタンピードで廃墟となったガルチ村の復興責任者として、ヴァルグードをガルチ村の代官に任命した。」

「はあ。」は兄カリアス

「なっ!」は姉ソフィア

「ちょっと貴方!」は母アリーシア


「ティモン、ヴァルちゃんが何歳か分かっているのでしょうね。いや、分かっていたらこんなバカな人事する訳が無いわ。

私の聞き間違いですよね。」

顔は笑って目は笑ってないって奴です。


「いっ、いや聞き間違いでは無いです。

ヴァルグードをガルチ村の代官に任命致しました。」

「そうですか。

あくまでも、そうおっしゃるのであれば、私もヴァルちゃんに付いてアンジェリカとガルチ村に行きます!」

「えっ。母上が行くのであれば私も行きたい。 

復興なら治癒士は必要不可欠だもの。」

「父上、流石に今回の話は支持出来ません。

母上が怒るのも分かります。

ソフィアはヴァルグードが大好きだからあぁ

なるでしょうね。」


「いやっ。裏の林を見ればヴァルグードがどんなに凄い事が出来るか分かるから! アリーシアも一度見て欲しい。

アンジェリカも未だ6ヶ月過ぎたばかりだから、移動は危険だよ。

あっちは父上や母上が近くに居るわけだし、言う程危険は無いよ。」


「そう云う問題ではありません。

小さな子供に重荷を持たせる事が駄目だと言っているのです。」

(これは母アリーシアは本気だなぁ。

助け舟出さないと、付いて来られても今後の計画の邪魔でしか無い。)


「母上、少し落ち付いて下さい。

ガルチ村は僕の侍女になるシャネット達の故郷です。

早く復興して戻してあげたいんです。

それにアンジェリカは赤ちゃんですよ。

馬車で移動させたら間違いなく体調を崩してしまいます。

可愛い妹が僕のせいで亡くなりでもしたら、僕も死んでしまうかも知れません。

お願いですからこちらに留まって、アンジェリカを育んで下さい。

宜しくお願いします。」


「ヴァルちゃん、そうねガルチ村を復興する力を持っているなら貴族の一員として、使わないのは領民に失礼でしたね。

アンジェリカの事も、翌々考えれば無謀でしたね。

もう少し考えます。」


「私はついていくわよ。」


「姉上、それは嬉しいのですが護衛対象が増えると騎士たちの負担が大きくなります。

もう少し、自衛出来る様になったら是非来てください。」

「そうね、もうちょっと鍛えて自衛出来ように頑張るわ!」


「話が纏まったようで良かった。

出発は来週、火の日に予定しよう。」

「ティモン、貴方とは後でお話があります。」

「はい。」

父ティモンの地獄はこれからみたいだ。







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