第21話 畑作り

翌日、ジョギングと食事も終わらせて早速林に来ている。

穴ボコだらけの広場を眺めながら

広場の地面に手を置き練気力と神力を拡げながら流すイメージで広場全体満遍なく流して、「〝耕土〟」と唱えると、地面が光り自分を中心に波打って穴が無くなり平らでフカフカな地面になった。


「ヴァルグード様、こんなにフカフカだと、

建物は建てられませんよ。

畑には最適ですが・・・」

「うっ、そうだった。」

(でも折角耕したからなにか植えたいな。)


「エーデルト、この時期に植えて育つ作物なんか知らない?」

「今の時期ですと、ジャガイモとかどうですか?」

「えっ!ジャガイモあるの?食べたこと無いけど。」


「食べれると解ったのは最近ですからね。

今年の交易で入ってきた作物なんですが、

そのまま茹でて食べたらお腹を壊す人が続出しまして、食べ方が解ったのは本当最近なんです。

私が知ったのも、食堂の主人からジャガイモの皮や芽に毒があるって聞かされて。

ご主人も売りに来た商人から聞いてスープに入れて食べたけど何とも無かったそうです。

ですが、農家は怖がって作り手が現れ無かったそうで、領主様が商人から捨て値で買い取って備蓄倉庫に種芋が山になって保管されてますよ。」


「備蓄倉庫って何処にあるの?」

「使用人棟の横にありますよ。」

「窓の無いあの建物か!良し!種芋取りに行こう!」

「駄目ですよ。

今行っても鍵が閉まっていますし、領の財産ですから領主様の許可がないと持ち出せません。」

「そうか、それもそうだな。

父上に会いに行こう。」

駆け足して屋敷に戻る。


1階の奥に父ティモンの執務室がある。

「コンコン」

とノックして返事を待つ。

「誰だ。」

父ティモンの声がする。

「父上、ヴァルグードとエーデルトです」

「入れ。」

父ティモンの許可がでて、扉を開け入室すると、書類に書物をしている父ティモンとその脇に立って書類を持っているセバスチャンがいた。


「ヴァルグード、どうした。」

「備蓄倉庫にあるジャガイモの種芋を頂きたくて伺いました。」

それを聞いて父ティモンは、セバスチャンに

「ジャガイモはまだ残っているのか?」


「はい、今年の春に交易商のジャック商会が売り先で腹痛事件が起こり、誰も手を出さなかった事で、泣きついて来ました。

それで、仕入れ価格で良いというので在庫全て買い取り致しました。

食べ方の指南を受けてそれを説明しながら、更には作付けをするものにはジャガイモには税金の免除をすると、募集しましたが手を挙げる者が居なかった為、屋敷の備蓄倉庫に保管しています。」


「で、ヴァルグードはその種芋をどうするのだ。」

「裏の林で魔術の研究をする許可を頂いて、研究過程で木々を伐採しているのですが、

この4ヶ月で木々を切り倒して広場が出来ました。

そこになにか作物を作ろうと思案していた所、エーデルトがジャガイモなら備蓄倉庫に種芋があると知らせてくれたので、それを栽培しようと思いつきまして許可を頂きに来ました。」


「う〜ん。そこを畑にするには切り株の除去や土の耕しが出来ていないと、作物は育たないぞ。」

「それも魔術で終わらせてます。」

「なに!・・・そうなのか。

ヴァルグード、今から林に連れて行ってくれないか?」

「私も、同行させて頂けますか?」

「了解しました。

では、行きましょう。」


父ティモンとセバスチャンを伴って、屋敷を出て林に向かう途中で、エーデルトが

「ヴァルグード様、オリーブの件伝えましたか?」

「あっ! 父上にお伝えし忘れていた事があります」

「何だ?」

「実は、その広場を拡張する為に、広場から東側の木々を伐採していた時にオリーブの木を発見しました。」


「なに!本当か!我が領で油が取れると云う事か!セバスチャン我が領の油の輸入量はどのぐらいだ。」


「領全体の人口が6万人位で一人当たり年間大体ですが、3リットル程の使用ですから18万リットルの輸入になります。」

「1リットル1万ダラだから18億ダラが領外に流出しているということだから少しでも領内生産したいな。

ヴァルグード、オリーブの木はどのぐらいある?」


「僕が見たのは100本以上はありました。」

「そうか楽しみだな。」

そうして、広場に辿り着いた。


2人は広場を見て呆然としている。

我に帰ると二人共土を握っては落とし握っては落としを繰り返して、父ティモンが

「なっ・何じゃこりゃ〜!!フッカフッカじゃないか。」

「フッカフッカでございますね。」

「フフ、ファ〜ハハハ〜」

「クックックッフフフ」

「ヴァルグード、素晴らしいぞ。

どうすればこんな畑が出来るのだ!」


「父上、オリーブの木は見に行かないですか?」

「行くとも!」

東側に進んでいくとオリーブの木が見えて来た。

「セバスチャン、収穫、搾油する道具と作業員の確保を早急に段取りしてくれ。」

「畏まりました。」

「ヴァルグード、このオリーブの木を増やす事は可能か?」

「僕では、難しいですね。

専門家ではありませんから、庭師に尋ねたほうが間違いないですよ。」


「確かに! お前はまだ5歳だったな!興奮してわけが分からなくなってきたぞ! ジャガイモは自由に栽培しなさい。

セバスチャン一緒に行って備蓄倉庫を開けてやってくれ。」

「畏まりました。

ヴァルグード様、それでは参りましょう。」

「父上は、どうしますか?」

「俺は、執務室に戻る。」

父ティモンは屋敷に戻り、3人で備蓄倉庫に向かった。


備蓄倉庫の鍵はセバスチャンが既に用意していて、直ぐ解錠して扉を開けた。

左右に食料の入った麻袋があった。


「セバスチャン、これは?」

「小麦でございます」

5段積みで左右に3段分奥はかなり続いていた。

「ジャガイモは何処に?」

「地下にございます。」

建物の奥を進むと地下と2階に向かう階段があり、階段で地下に降りると山積みのジャガイモがあった。


1階にあった空の麻袋に3人で詰めて行く。

セバスチャンとエーデルトに運んで貰って外に出た。

セバスチャンが、

「ジャガイモを運び出す時はお声掛け下さい。

運搬に人がいるようでしたら、使用人を集めておきます」

「明日も作業をするから朝、食事が済んだらエントランスに集めて」

「畏まりました。

それでは、私も失礼致します。」

「セバスチャン、ありがとう。

エーデルト、もうひと頑張りしよう。」

セバスチャンは屋敷に戻り、私とエーデルトは、運び出したジャガイモを広場の端から一つずつ埋めて行った。

明日も頑張ろう。


翌朝、使用人を使って広場全体に3000個のジャガイモを植えた。

深くなる様にうねを作り水捌けを良くした。上手く行けば30tの収穫が望める。

約30000個になる。

加工品も考えないといけない。




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