第97話 辺境伯との会談

SIDE ティモン

騎士団長を連れてラウジッツ辺境伯の天幕に向かう。天幕には護衛の騎士がいるので、騎士団長が俺の来訪を告げる。


「リートゥス伯爵と伯爵領騎士団長のルクハルト・フォン・イメディングだ。ラウジッツ卿に取次ぎ願いたい」


「畏まりました、少々お待ち下さい」


護衛していた2人の内の一人が天幕の中に入り直ぐに、


「辺境伯様がお待ちです。お入り下さい」


と告げたので、天幕の中に入る。

天幕にはラウジッツ辺境伯と騎士6名が話し込んでいたが、俺が入ると皆がこちらを見る。ラウジッツ辺境伯が、


「来られたか。リートゥス卿。緊急の相談との事だがいかがされた?」


「突然のご相談を持ち込んで、申し訳無い。実は昨日のうちに周囲の様子を確認しようと斥候を出したのですが、村の様子がおかしいのです。 

というのも斥候に出した者が言うには村に女、子供の姿が見当たらないと言うのです。もしかすると、領内は既に、王国占領されているのではないか思いまして、今後の動きについてを相談したいと思ったのです。」


「う~ん。アハルミン騎士団長どう思う。」


「村の様子がそのようであればリートゥス卿の懸念は、私も同意します。帝国軍にただ従って動くのは危険と思われます。」


「そうか。リートゥス卿我々はどう動くのが良いと思われる。後1時間もすれば進軍が始まる。その前になにか理由をつけて別動した方が得策と私も思う。」


「ラウジッツ卿、領都は帝国軍にお任せして、我らはダビン港町を救出に向かうと提案されては如何でしょう。ロデムラート砦が陥落した時、撤退先はダビン港町のはずです。

あそこを王国が押さえると、我が国への橋頭堡きょうとうほとなってしまいます。

そこを突けば我々が別動しても否とは言えないでしょう」


「そうだな。良い考えだがアハルミン騎士団長どう思う?」


「良きお考えかと、ダビン港町が陥落していなければ陸側から攻撃している王国軍を挟撃出来ます」


「ラウジッツ卿が指揮できる領主連合軍は何名程になりますか?」


「我ら辺境伯領軍が2000、リートゥス卿が350 ヴァイマル伯爵が300 シェーンブルク伯爵が300 ノルトハイム子爵が200 ヴュルテンベルク子爵が200 ホーエンローエ子爵が200 後は寄子連合が男爵8家と騎士爵25家650程だな。」


「では我ら東の領主連合だけで動きましょう。北の領主連合がいるとラウジッツ卿に従わない領主が現れても困りますから」


「そうだな。北の奴らは絶対に従わんだろうしな。良し!それで、話をつけに行ってくる。リートゥス卿も同道を願いたい」


「もちろんご一緒しましょう」


こうして、ラウジッツ辺境伯と帝国軍本陣天幕に向かう。本陣天幕には軍の総司令官としてストハルト王弟殿下が指揮をとる。其の麾下に4将軍がいるが、辺境伯に指示できるのは王弟殿下のみ。

天幕前にいる護衛騎士に王弟殿下への面会の取次を伝える。


「この先の進軍に付いて総司令官にの相談がある、取次を願いたい」


「暫しお待ち下さい」


対応した護衛騎士が天幕に入って行く。

暫くして、騎士が侍従を連れて戻り、侍従が、


「総司令官がお会いするそうです。どうぞ」


と侍従の後に我々が続いて天幕の中に入る。

天幕にはテーブルが置かれて地図が広げられている。テーブルの奥に着席して地図を見ている王弟総司令官がいた。両脇には近衛騎士テーブルの左右には4将軍が立って話し合いをしていた。王弟総司令官がこちらに声を掛ける、


「ラウジッツ卿、リートゥス卿・朝からどうした。進軍準備で忙しいであろう」


「実は、その進軍でご相談がありまして、我々、東の領主連合軍は、このまま領都の救援に向かうのでは無く、ダビン港町の救援に向かわせていただきたい」


「ほう。確かにあちらもどの様な状況か分からないがまだ戦っている可能性があるな。

将軍方、どう思われる。」


尋ねられた将軍の一人が、


「ダビン港町は重要拠点の一つですが、東の領主連合軍と云うと4000名だけでは、心許ないのではありませんか?」


それを聞いた別の将軍が、


「いや、ロデムラート砦からダビン港町に撤退している帝国兵がいますから陥落していなければ、挟撃出来ます。殿下、行っていただきましょう」


それを聞いた王弟総司令官は、


「そうだな、我が国の海の玄関口を失う訳にはいかない。しかし、東側領主連合軍だけで大丈夫か?」


それを聞いた、ラウジッツ辺境伯は、


「お任せ下さい。帝国軍は2万と残りの領主連合軍2万で確実にこの辺境伯領から王国軍を追い出していただければダビン港町の防衛は我々だけでも大丈夫です」


「分かった!それでは東側領主連合軍はダビン港町の救出作戦を命令する。その後は、ダビン港町の復興をしておいてくれ」


「下令、承ります。それでは失礼します」


俺は、何も喋らず、本陣天幕を後にした。

辺境伯の天幕に戻り、


「ラウジッツ卿、我らリートゥス軍はダビン港町に先行して威力偵察を行います。皆様には行き先の村々を確認しながら後を追って頂けませんか?かなりの周囲が王国軍に占拠されていると思われますので」


「了解した。うちの騎士連絡係に付けたいがどうだ。」


「いえ、何かあればうちの騎士をラウジッツ卿に送ります。同じ訓練を受けていないと足並みが揃いませんので」


「そうだな。良し分かったそれでは威力偵察をお願いする」


「はっ。では失礼」


こうして俺は自分の天幕に戻った。







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