第131話 捕虜と避難民の移送

家族と再会して戦利品を領都に置いてきた私は、避難民を回収する為、ダビン港町へと転移した。転移した先は自分の割り当てられた部屋である。


「エーデルト、取り敢えず父上を探しに行こう。部屋にいれば良いけど」


「畏まりました。では早速向かいますか」


部屋を出て、隣の父ティモンの割り当てられている部屋をノックする。すると扉が開かれて奥に父ティモンがいた。


「父上、戻りました」


「おう。随分とゆっくりだったな」


「はい。村の整備と書類整理それに領都に行って物資を渡して来ました」


「おお。そうかそれは助かる。それで避難民の移動は何時やる?」


「今から始めようと思います」


「では一緒に行こう。先ずは捕虜達の所に向かうか」


「えぇ。そうですね」


父ティモンそれに騎士団長率いる騎士10名、それとエーデルトと一緒に捕虜のいる地下牢へと移動する。牢番に声を掛けて牢の鍵を受け取って、地下牢に近付くと纏め役の虎人族のジャレ厶がこちらに寄って来る。


「出発出来るのか?」


「はい。皆さん移動しますので、鍵を開けますから順序良く出て来て下さい。外に馬車がありますのでそれに乗り込んで待機していて下さい」


「分かった。おい。同種族纏まって背の低い種族からゆっくり外に出ろ」


小さい種族順に牢から出て騎士達が誘導して行く。最後に私と父ティモンが後ろから付いて行き大きな幌馬車10台が用意してある広場に出ると次々と乗り込んで貰う。

私は定員になった馬車を1台ずつガルチ村へと転移しては戻るを繰り返していく。10台全てをガルチ村のロータリー広場に転移し終えると、代官屋敷に向かい副代官のオデットを呼び出す。玄関口で、


「誰かいる?オデットを呼んで来て!」


初めて見るメイドの1人が、


「ただいまお呼びしてきます」


と言って奥へと向かい、しばらくして、オデットを連れて戻って来た。


「ヴァルグード様、お帰りなさい。それで今回は?」


「王国で奴隷として連れて来られてきた。獣人族の人達をこちらに移住して貰うために連れて来た。それと西の戦争被災者にも移住の募集を掛けてあるし、前に連れて来た避難民の関係者もいると思うからその人達を連れて来るから、受け入れお願いします」


「ふぅ〜。畏まりました。受け入れ準備を致します」


「では、ロータリーに置いていくから宜しくね。代表者は虎人族のジャレ厶って云う人物がいるから彼に指示を出せば上手く纏めてくれるよ」


「虎人族のジャレ厶ですね。助かります。それでは応援を連れて向かいます」


私は代官屋敷を出て、ロータリー広場に戻ると、捕虜の獣人族は皆馬車から降りてグループ毎に集まっていた。虎人族のジャレムを見つけて声を掛ける。


「皆さん。馬車から降りていますか?」


「あぁ。降りているが……。ここは何処だ!それなりの街に見えるが建物が全て新しい様に見えるが……。どうやってここに来たのか全く分からなかった。そうなってる?」


「ここは僕が父からお預かりしているリートゥス伯爵領のガルチ村という場所です。魔物に村を蹂躙された為に新しく作り直して再建した村なので全ての建物が改修若しくは新築されています。ここには魔法で移動したとしか言えません。我が領は他種族が余りおりませんがそれでも人族では無いからと迫害を受ける事はありませんので安心して下さい。後でこの村の責任が来ますのでもう暫くここで待っていて下さい。僕は馬車を片付けますのでこの場を離れます。責任者はオデットと云いあの代官屋敷から出て来ます」


「良く分かっていないが、分かった。オデットだな。ここで待つ事にする」


「では、また後で」


「おう」


私は馬車を移動させロータリーから見えなくなった所で、馬車を1台づつダビン港町へと転移させてはガルチ村へと戻るを繰り返し、全ての馬車をダビン港町に戻すと移住希望の避難民が集まるキャンプ地に向かう。そこには父ティモンと騎士団長が待っており、父ティモンが、


「ヴァルグード戻ったか。実は我が領への移住希望者が1000名程になってしまった。王国の再侵攻を心配して村の復興を断念してしまった者達が移住を希望している。ガルチ村の他に麓村もあるから受け入れは可能だろ?」


「はい。麓村はまだ誰も入植していませんからね更に、船大工がいれば欲しいのですが、造船村の建築をアグウェルおじさんから頼まれています」


「アグウェルの奴、俺の息子を良いように使おうとしやがって。まぁ、自分の領地内の事だから文句も言えんがな」


自分の知らない所で息子がこき使われると思ったが、能々よくよく考えれば自分の領地内の事と思い直し苦笑いの父ティモンであった。そして私は移住希望者の前に行き、


「移住を希望されている皆さん!今から転移スキルで、帝国の東側にあるリートゥス伯爵領のガルチ村という場所に行きます。荷物、貴重品等の持っていきたい物は肌身離さずに、そして密集して欲しいので周りにいる人と接触して繋がって下さい。そうでないとここに取り残されてしまいます」


私の説明に移住希望の避難民が肩寄せ合って、一つの塊になる。私もその一人の男性に手を接触させて、ガルチ村の開墾した南側にある畑を思い浮かべて、〝転移〟を唱えると1000人を超える避難民がガルチ村の南にある畑へと転移して来た。何故か父ティモンと騎士団長も一緒に付いて来てしまった。


「父上。何故一緒に来ちゃっているのですか?」


「まあ良いじゃないか?領主としてきちんと受け入れが出来ているか確認しないと無責任じゃないか。なぁ。騎士団長」


「私に振らないで下さい。素直に興味があるとおっしゃればいいのです」


「まあ、良いですけど。皆さん!無事到着しました。ここがガルチ村になります。では中へと移動しましょう」


こうして、移民1000人をガルチ村へと迎い入れた。













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