第121話 お金の分配
分配作業が終わって
「セギュール卿、代金は出さなくて結構です。そちらは帝国軍の分配から差し引いておきましたから、その代金3000枚は帝国軍のものです」
それを聞いたアルヴレ方面長が、
「それは大変助かるが良いのか?」
尋ねられた父ティモンは、
「問題ありません。更に代金とは別で金貨5000枚を帝国軍の分配としました。合計8000枚です」
アルヴレ方面長は、
「助かる…。助かります。これで戦死した兵士の遺族に追加の見舞金を払えます。ありがとう」
「それと、ヴァルグード、王国大金貨を無償提供したいがどうか?」
「私は構いません。今、出しますか?」
「アイテムバッグを持ってきているから問題無いだろう。引き渡しなさい」
「分かりました」
父ティモンは金貨の入った皮袋をテーブルに50袋置く。私は王国銀貨の横に王国大金貨を1万枚置くと、アルヴレ方面長は部下に指示を出して、それらの貨幣を回収した。
黙って経緯を見守っていた辺境伯が、
「アルヴレ方面長、申し訳無いが、部下達に頼んで、我らの護衛を呼んで来て貰えないだろうか?」
「お安い御用です。おいっ、隣にいる護衛達をこちらへ呼んで来てくれ」
「畏まりました」
王国大金貨を回収しし終えた部下の一人が、護衛を呼びに会議室を出た。
辺境伯の護衛達とリートゥス家の騎士団とエーデルト、ウェルウィン、ムスカーノ、ダドリオが会議室に入って来た。全員の入室を確認した辺境伯が、
「護衛の皆には、各領主へ今から鍛錬所に集合する様に、伝令に行ってくれ」
「「「「「「「「「畏まりました」」」」」」」」
騎士団長以外の計8名が会議室を出て、伝令に
「ヴァルグード君。この皮袋を収納してはくれないか。そして鍛錬所に同行して欲しい」
「分かりました。収納して同行します」
私は、辺境伯の横に積み上げた金貨入り皮袋を、インベントリに収納する。
「さて、会議室で行う事はもう無いな。では皆で鍛錬所に行き、そこで再度、戦利品の分配を行おうと思う。帝国軍の方々も同行して欲しい」
辺境伯がアルヴレ方面長に向かってその様に話すと、
「ラウジッツ卿、我ら帝国軍も物資の分配に関してこちらの希望をお伝えしたいと思っておりましてな。帝国軍の割り当てが武器庫であったと聞いておるので、飲食に関する物資が無いというのがどうも…。是非とも武器との物々交換をお願いしたい」
それを聞いた辺境伯も
「こちらも王国が開発した新型の武器を持ち帰りたいと思っております。物々交換のお話しは、こちらも希望するところです。それでは鍛錬所に向かう」
全員が会議室を出て鍛錬所に向かった。
鍛錬所に到着すると、往復するたびに取り出してきた奪った武器、魔銃、その弾、大砲2門、その砲弾、魔石、バリスタの矢等が置かれていた。
それを皆で歩きながら見分していると各領主の面々が集まって来た。全員が到着したのを確認すると辺境伯が、
「諸卿の集まって貰ったのは物資の分配と戦利品の物々交換の相談をしたいと思ってだ。先ずは、戦利品の分配についてだが、ここにいるヴァルグード君が、転移スキルを所持している事は諸卿の存じ寄りの事と思うが、彼は敵占領地の金庫を見付けて転移し、敵の持っていた貨幣を全てを奪取して来た。貨幣には王国貨幣もあったが、それは帝国軍に引き取って貰った。それを受けてリートゥス卿が、帝国貨幣を諸卿に分配したいと私に申し入れてきた!」
それを聞いた皆から、
〈〈〈〈うぉ〜〜〜〜っ〉〉〉〉
と大歓声が上がる。辺境伯が暫く待って腕を上げると歓声が止まり、辺境伯は話を続ける。
「各兵士達に個別で金貨2枚、騎士の身分には金貨4枚を所属領地関係なく配布する。
領主の諸卿には、騎士爵家金貨100枚、男爵家金貨200枚、子爵家金貨300枚、伯爵家金貨500枚をお渡しする。先ずは、騎士爵家から順に受取に来て欲しい」
私は、辺境伯の横に金貨の入った皮袋を兵士達支給分を抜いて山積みにした。その皮袋を辺境伯から騎士爵家は1袋と順に金貨を渡して行く。皆に配り終わると辺境伯が
「次に奪ってきた戦利品の品目に偏りがあると聞いている。ここにある武器全て帝国軍の戦利品だが。帝国軍としてはこの武器と諸卿の戦利品を交換したいと希望している。
どうであろう、ここでは物資を取り出すには狭いので、北側の外で物々交換を開催したいと思う。先ずは、そこに全ての領主連合軍の騎士、兵士達を集めて慰労金として金貨の配布を行いたい。そこに各自物々交換用の物資を出して、兵士も購入出来るようにしたいが如何だろうか?」
それを聞いたアルヴレ方面長が、
「帝国軍の兵士も参加して良いであろうか」
「無論、構いません」
それを聞いた、父ティモンが、
「お昼からは住民にも開放しましょう。武器については午前中だけとし回収していただきますが、そして夕方には残っているうちの物資の一部を避難民に提供しましょう」
それを聞いた辺境伯は、
「それは良い。うちも一部提供しよう。帝国軍で避難民への配給をお願いしたい」
それを聞いたアルヴレ方面長は、
「願ってもない事です。責任を持って当たらせます」
「では、これで話は終わりとする。解散」
お金の分配が終わり、どの顔も笑顔で、明日の物々交換に向けて相談しながら鍛錬を出て行った。父ティモンと部屋に戻ろうと動き出したその時、アルヴレ方面長が声を掛けてきた。
「ヴァルグード君、お願いがあるのだが」
その声を受けて、父ティモンを始め、うちの連中が立ち止まる。
「アルヴレ方面長、何か御用ですか?僕の出来る事なら協力しますよ」
「ここにある、武器を預かって明日北門の外に展示して欲しいのと、ロデムラート砦に大砲と砲弾それと魔石をこの副官と一緒に運んで貰えないだろうか?」
「父上、構いませんか?」
「エーデルトを連れて行くなら構わんぞ」
「だそうです。それでいつ向かいますか?」
「有り難い。今直ぐでも構わないだろうか?」
「僕は構いませんよ。エーデルトは大丈夫?」
「問題ありません」
「では、直ぐに出発と云う事で、武器を収納しましょう」
私は鍛錬所にある武器を全て収納すると、
「セギュール卿、転移しますが行けますか?」
「ちょっと待って下さい。方面長。このアイテムバッグをお願いします」
「おう。そうだった」
副官の持っていたアイテムバックをアルヴレ方面長が受け取る。
「ヴァルグード君、準備出来ました」
「では、セギュール卿僕に触れて下さい。エーデルトもね。では行きます〝転移〟」
副官を連れて、ロデムラート砦へ転移した。
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