第85話 ダンジョン町③
朝、日の出と共に起床してジョギングに行くため部屋を出ようとするとエーデルトが、
「ヴァルグード様、お一人で向かうのはお止め下さい。私が同行しますから暫くお待ち下さい。すぐ支度します。」
支度を終わらせたエーデルトと共にジョギングに向かう。
宿屋の周囲1時間程回って庭先で素振りと剣の稽古をしていると、ウェルウィンとムスカーノがやって来て、一緒に稽古を始める。
やはり、家の騎士団員だけあって2人共、エーデルトと同じで受け流しと体捌きが上手い。
動きを見ながら型稽古をする。
稽古を終わらせて宿屋に戻ると、フロントカウンターに昨日対応してくれたスタッフがいたので、
「ちょっとお願いしたい事があるのですが。」
「おはようございます。お願いとは何でしょう。」
「ダンジョン探索に行くのですが、その時のスープ料理を作って貰えないかと、鍋はこちらで用意していますし、別途料理の代金もお支払いしますから。」
「スープ料理をですか。承ります。朝食時に食堂の接客スタッフに鍋をお渡し下さい。
料金は一人前500ダラ頂きます。宜しいですか?お支払いは受け渡し時に頂きます。」
「はい、それでお願いします。」
そうして、私と、エーデルトは部屋に戻り、ウェルウィンとムスカーノは食堂に向かった。部屋に戻って調理道具をエーデルトの背負いアイテムバックにしまい、一番大きい鍋を私とエーデルトで1つずつ持って食堂に向かった。
食堂にいた接客スタッフに鍋を渡すと、
「この鍋でしたら1つで30人前は出来ますね。」
と、言うので
「では、鍋2つ60人前お願いします。」
とお願いしておいた。
リックを見つけたので、
「リック、これから僕達がダンジョンに行っている間はここでの滞在を続けて貰う事になるから、お小遣いを渡すよ。残っても返さないで良いから。」
そう言ってリックに銀貨10枚と小銀貨10枚をアイテム袋に入れて渡した。
「この巾着袋も上げるから。滞在中は馬の世話宜しくお願い。」
「こんなに良いのですか!しかもこの巾着袋は……。本当にこれも頂いて……。ありがとうございます。嬉しいです。」
話を済ませて、ウェルウィンとムスカーノのいるテーブルに着席した。
すぐに、配膳カートを引いて女性スタッフが来て、ステーキと野菜スープを配膳してくれた。テーブルには既にパンと水差し、木のコップとカトラリーが置かれていたので、
「「神の恵みに感謝を」」
と言って食事を始めた。
見渡すとテーブルは4人掛けで8卓あり連れて来た全員が食事を取っていた。
朝食を食べ終わると、席を立とうとしていたので、
「ダンジョンに向かう子供達は、僕の部屋に来て欲しい。渡すものがあるからね。お母さん達は自由にして下さい。」
そう告げると席を立ち部屋に戻る。後ろから子供達が後を付いてくる。
部屋に入り床に、短杖、短剣、ナイフ、防具水筒、結界の腕輪を並べる。そして、
「先ずはポーターになってもらうのでサイエンにはこの肩掛け鞄を持って貰う。あとの子達はポーチだ。」
そう言って、サイエンに背負い袋型アイテムバックを残りの子供達にはマジックポーチをを渡す。更に、
「ポーターの給料を先払いしておくよ。」
と言って、巾着袋型のアイテム袋の上に銀貨10枚を置いて、順番に渡していった。
「その巾着袋はアイテム袋になっているから、お金はそれに入れると良い。そして、床に置いてある短杖、腕輪、水筒は、各々一つずつ持っていきなさい。
それと、短剣はサイエン、コニスが持って、ナイフは女の子達が持って。
革鎧はサイエンに残りの皆んなは胸当てを使って。短杖の使い方はダンジョンで教える。短剣とナイフはダンジョンまで鞘から出すなよ。それから、鞄とポーチは魔力を流しておいて、生活魔法を出すイメージ魔力を流せば使える様になるから。」
そして、床に置いてある武器や防具を各々受け取った。サイエンが目に涙を浮かべながら、
「賃金の前払いでもびっくりなのに……。
うっ……こんなモノまで貰って良いのか‥‥‥ですか。」
それに続いて、ウルティアも涙ぐみながら、
「こんなっ……。武器やぁ。どうぐまでぇ。
ありがとぅ…ございますぅ。」
喜んでいた残りの3人も2人を見て貰い泣きを始めてしまった。
しょうがないので、泣き止む迄待っているとエーデルトが、
「恩義を感じるならこれからの仕事で返しなさい。さっさと泣き止んで部屋に戻り何時でも出掛けられる様に身支度を整えなさい。」
「ダンジョンに出発するのはお昼頃になるから、それまで部屋で待っていて」
「「「「「はい。」」」」」
そして、渡した一式を抱えて子供達は出て行った。エーデルト達に、
「3人は子供達のテントや寝袋、毛布、それと出来合いの屋台飯を多めに買ってきてくれないか。資金はこれで。」
と言って金貨10枚を渡す。するとエーデルトが、
「これ多すぎますよ。金貨1枚足りますから。」
と、金貨9枚を返してきた。それを受取り、
「僕は携帯コンロの作成をしているから。買い物は宜しく。」
「「「畏まりました。」」」
エーデルト達は返事をして買い物に出掛けた。
私は、昨日の続きで作りかけの携帯コンロを取り出し黙々と火炎の魔法陣を刻む。
そして60個程魔法陣を書き終えるとそれらを魔法陣をつなぐ外周を刻み、その外周の右側に3本の線を刻むその先に3つの丸に三角形の魔法陣をを上中下と3つ刻みその魔法陣に〝弱火〟〝中火〟〝強火〟と刻んだ。
そしてゴブリンの魔石を半円状にして中に、魔法陣を刻み、魔法陣の輪間に〝魔素吸収〟〝魔力変換〟〝魔力補填〟〝魔力供給〟と刻んで、弱火の魔法陣の上に置いた。すると全ての火炎の魔法陣から火が着いた。
中火に移動をして着火を確認。強火でも火が着いたので。魔石が不用意に動かない様にその横にL型の仕切り板を設置した。
これで上下の移動はするが横に外れる事は無い、後は、鍋を置く五徳を設置して完成。
これをもう一つ作っていたらエーデルト達が帰って来た。
「これを作り終えたら出発するからもう少し待ってて。 あっ、エーデルト30,000ダラ残っている?」
「はい、有りますが。」
「下で、料理貰って来て欲しい。」
「畏まりました。」
エーデルトが料理を貰っている間に携帯コンロを完成させると、ウェルウィンが、
「ヴァルグード様、そのままで行かれるのですか?」
と聞いてきたので、直ぐに、インベントリから、冒険者装備を取り出し着替えた。
「ウェルウィンとムスカーノは子供達に出発すると伝えて来て。僕も直ぐに向かうから。」
「畏まりました。」
そして、ブーツに履き替えて、短剣と、杖を装備して部屋を出た。
エントランスには装備を整えた子供達と護衛の3人が待っていた。エーデルトが
「ヴァルグード様、スープは二鍋引き取りました。それで、ここから歩いてダンジョンに向かいますか?」
「歩いて向おう。サイエン、歩いてダンジョンに向かうけど子供達は大丈夫?」
「いつも1日中歩きづめで薬草採取していたからスピードを合わせてもらえれば大丈夫だ……です。」
「良し、では出発しよう。」
こうして、宿屋を出て、ダンジョンに出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます