第66話 ダンジョン山での知らせ
SIDE:ティモン
俺は、副代官のオデットとダンジョン山の麓に到着して、ヴァルグードが作った集落を確認していた。
「門まで出来てるじゃないか!建物を防壁代わりに配列して上から攻撃出来るようになっているのか。」
そんな独り言をオデットが拾って、
「これは……すぐにでも人が住めますね。」
「ここまでとは……今日はここで休んで明日は天辺にも行ってみよう。」
「畏まりました。」
翌朝、階段を登るとそこにも集落が出来ていた。ここの住居を覗くとベットもあり寝る分には不自由無さそうだった。
「休む分には問題は無さそうだが、住むには少し不十分な気がするな。」
「そうですね。 借宿という感じでしょうか。」
「ダンジョンの防衛砦と考えれば冒険者を麓に滞在させて、ここは防衛隊の駐在所と冒険者ギルドの買取出張所というところか。」
「未だまだ建築スペースはありますから商店の建築や宿屋の建築も出来ます。 問題は素材ですがヴァルグード様にお願い出来ればこちらも充実すると思われます。」
「それは、ヴァルグードの気分次第だなぁ。
6歳にそこまで押し付けは出来ん。
そんな事をアリーシアにバレたら……本人にお願いしては見るが、多くを望まないように。 職人達で出来ないか検討してくれ。」
「畏まりました。 取り敢えずはガルチ村のギルド誘致が済んでからでしょうか。」
「そこからだろうな。後は代官の派遣だな。
誰が良いか考えねば。 ここの収益もかなりのモノになりそうだしな。 オデット、お前ここの代官やらないか?」
「私で宜しければ、しかしガルチ村の補佐は
どうなさいます。」
「そこは、エーデルトにでもやらせてみるか。」
「彼は交渉事が余り得意とは見受けられませんが、どちらかと云えば今のポジションが収まりが良さそうです。」
「そうなんだよなぁ。まあ、ヴァルグードは
「……それも良いかと。」
天辺の集落を視察しつつダンジョンに続く階段前の門まで来た。
「これまた良い具合の門に仕上がっているなぁ。」
「この屯所の受付は手続きで使える様にしてありますね。」
門を視察し終えると階段を下りダンジョンに向かう。
ダンジョンに入って見ると洞窟から草原にと風景が変わる。
「おぉ!良いな。 始まりが草原エリアなら視界が十分確保出来るから初心者でも対応可能だな。」
「ええ、これであれば出現する魔物の強さでは充分対応可能です。」
そんな話をしながら慎重に探索していると、ホーンラビットが襲撃して来た。
「「ザシュ」この程度であれば問題「ザシュ」は無いが、少し魔法なり剣術なりが無いと「ブシュ」厳しいか。」
「そうです「ザシュ」ね。 それでも、「ブシュ」入口付近でこれだけホーンラビットとスライムの出現が有れば良い訓練になりそうです。」
「ホーンラビットとスライムの魔石は買取価格幾らになっている?」
「ホーンラビットは500ダラでスライムも同じだったかと。 魔石の最低買取価格が500ダラですから、ラビット肉は1kgで500ダラですね。 スライム水は100ダラのはずです。」
「スライム水、安いな。」
「使い道があまりないですから。飲んでも大丈夫なの分かっているので、飲料水として使っているみたいですが、このまま持ち運んでいると強い衝撃で弾けて仕舞うので冒険者にも不評なんです。」
「それは、外のスライムは魔石を落とさない、と言う事はスライムは。」
「邪魔にならない限り退治されません。
しかも、排泄物や死体の処理はスライムが請負ってくれています。 数が脅威になると冒険者ギルドが間引き依頼を初心者に出して、依頼報酬とスライム水買取をしている程度ですね。」
そんな会話をしながら進んでいると、薬草を見つけた。
「この辺りは薬草の群生地か!」
「これは! 良いですね雑草が混ざらず単体種が群生しています。纏まったら良い収入になるかと。」
見渡すとそれなりに群生地がチラホラ見受けられる。
と見渡していると、
「御領主様〜!」
エーデルトと伝令番の騎士が
「おぅ!どうした。」
「ロデムラート砦が王国に侵攻され陥落致しました。 其の為、領地貴族は帝都に招集が掛かって下ります。 至急お戻りを。」
「何!! すぐにガルチ村に戻るぞ。 オデット引き返すぞ!」
「畏まりました。」
我々は慌ててダンジョンを出て、天辺の集落を駆け抜け麓の集落まで来ると、エーデルトが、
「申し訳ありませんが、暫しの休憩をお願い出来ませんか?」
「おぅ、スマン。お前達はここで休んで後からゆっくり帰って来い。」
「大変申し訳ありません。
お言葉に甘えて後を追わせて頂きます。」
「馬も消耗しているだろうから、事故の無いように帰って来い。」
「「はっ」」
こうして、2人を残しオデットと護衛の騎士達を連れてガルチ村に戻った。
夜通し駆けて戻るが道の整備が整っている為、素早く移動し魔物の襲撃があるかと思ったがそれも無かった。明け方にはガルチ村に戻る事が出来た。
ガルチ村に戻ると、ヴァルグードが門から出てきた。
「ヴァルグード!」
「父上、戻られましたか。 報告はお聞きで。」
「ああ、それで夜通し駆けて戻って来た。」
「エーデルトの姿が見えませんが。」
「流石に、全力でダンジョンまで来ていたから、休んでから戻って来るように申し伝えた。」
「そうでしたか。 それでは一旦皆を休ませてからお昼にでも集合しましょう。」
「その方が良いな。 皆、お疲れであったここで解散とする。」
「「「「「はっ」」」」」
護衛で付いてきた騎士を解散させて屋敷にオデットと共に入る。
「父上、 僕はジョギングに行ってきます。
ゆっくりお休み下さい。」
エントランスまでついて来たヴァルグードはそう言うと玄関を出て行った。
「オデット、昼に食堂で集合しよう。 」
「畏まりました。」
オデットとはエントランスで別れて、俺は客室で生活魔法のクリーンを掛けてそのままベットに倒れ込んだ。
「父上!起きてください!」
ヴァルグードの声を聞いて眼を開ける。
「もう昼か。」
「はい」
起き上がり、ヴァルグードと共に食堂に入ると、テーブルに一振りの剣が置いてあった。
「これは!」
「父上の為に、一振り拵えました。その剣には〝自動修復〟〝自動治癒〟〝ターンアンデッド〟〝マジックバッシュ〟が付与されています。」
「おまっ、それって……聖剣何じゃぁ~ないのか。」
鞘から抜き剣を眺める剣身には彫刻が拵えてあり、柄頭には家紋が彫り込んである。
鞘は素朴な造りになっているが素晴らしい逸品だった。
「それと、こんなモノを造って見ました。」
それは、板に取手の付いた何かだった。
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