第67話 領都に戻る

SIDE:ティモン

「ヴァルグード、これは何だ?建築道具のこてか?」


「父上、それを持って結界と唱えて下さい。」


ヴァルグードの言う通りに結界と唱えると

平面で乳白色の結界が形作かたちづくられた。


「うぉ、これ良いな。」



「父上、終了と唱えて下さい。」

「終了」


と唱えると元の金属部分に戻った。

するとヴァルグードが剣帯ベルトを取り出して、その盾を収めるホルダーを剣帯ベルトの左後ろに取付て盾を収めていた。


「父上、この剣帯ベルトをしてみて下さい。」


そう言って、ヴァルグードから剣帯ベルトを渡される。 それを装着して剣を剣帯ベルトにさしてみる。

動きを阻害されることは無い様だ。

剣を抜いて縦斬り横薙ぎしても問題無い。

盾を取り出してみるが引っ掛かる事も無く片手で取り出せた。


「良いじゃないか!」


と感想を伝えるとヴァルグードが、


「父上その剣帯ベルトはビックボアの革で作りました。」


「この盾のホルダーはなにで出来ているだ。」


「木のパウダーを使って作っています。」


「それならホルダーだけ作って今の剣帯ベルトに引っ付けられるよな。 それならベルト通しを作っておいてくれ。」


「分かりました。 それと剣を100本とこの盾を100枚製作してありますので、騎士にお配り下さい。」


そう言ってヴァルグードは剣を100本出してきた。


「待て待て!ここで渡されても引き取れん。戻せ!、帝都に招集がかかっているから、領都で兵を集めて王都に向わねば行けないのに荷物になる物を貰っている場合ではない。」


「それでしたら、僕も領都に同行します。」


「それは良いな。アリーシアも喜ぶ。オデット、ここを頼めるか?」


「はっ、留守はお任せ下さい。」


「ではヴァルグード、領都に向かおう。」


「はい、父上。」


こうして、俺と息子のヴァルグード、エーデルトと伝令番の騎士そして馭者としてテリーとハンスを伴って領都に帰る事になった。

南門から馬車を使って進んでいると道が整備されているので進行が早い。


「ヴァルグード、二人だけでこの様な形で話す事は無かったが、お前の魔術は何が出来るのだ?」


「そうですね、ここで打ち明けますが創造神と智慧神様からこの世界には存在しない力を授かっています。」


「それはどの位の力を発揮出来るのだ。」


「正直申し上げて自分でも分かりませんが、中級魔法クラスは元より武器や魔道具等モノ作りも大概は出来ると思います。」


「今回、王国との戦いは厳しいものとなる。

国境の砦が陥落するなど初めての事だからな。 今回の招集で西の派兵を促される事は想像できる。派兵となればお前が作ってくれた剣や盾は騎士団の皆には大変心強いものとなるであろう。

それでだ、連れて行く領兵にも良い槍や盾を持たせたい。作っては貰えないだろうか?」


「構いませんが、僕の手持ちの材料では難しいですし、父上は直ぐにでも、帝都に向かわなければいけないのでしょう? 作って渡す時間は有りますか?」


「そこで、お前に帝都ヘ一緒に来てくれないか?」


「僕は構いませんが、母上にお話を通しておかないと大変な事になりますよ。」


俺はそれを聞いて黙ってしまった。

アリーシアが聞けば、絶対に自分もついて行くと言うのは明らかだろう。

いっその事帝都までは皆で行けば良いか。


「何とか説得してみよう。」


「宜しくお願いします。何でしたら私も加勢致します。」


ヴァルグードが加勢するのであれば、問題無い、少しは気持ちに余裕が出来た。

そんな事を話しながら道程を進んでいると、今日の宿営地に着いた様だ。


「御領主様、本日はこちらで夜営致します。」


とエーデルトが馬車の外から声をかけてきた。


「判った。」


俺が返事をすると、エーデルトが、


「結界を張りましょう。」


と言って、金属板を取り出した。

それに、魔力を込めると乳白色の四角い結界が発生して周りを覆った。

そして、テーブルと椅子を「創造」と唱えて作り出しテーブルの上にスープとパンそれにステーキを出して並べる。

食事を取り終えて、俺とヴァルグードは馬車で眠った。

翌朝、ヴァルグードが起き出した気配で目が醒め、

「おはよう、早いな。」


「おはようございます。 少し外で身体をほぐして来ます。」


「そうか、俺も付き合おう。そうだ! 剣術の稽古を付けてやろう。」


「では、宜しくお願いします。」


ヴァルグードに剣の稽古をつけてみると、身体強化で俊敏な動きは出来るものの剣戟や体重が軽い為に、鍔迫り合いで簡単に吹っ飛んで行く。 

これでは稽古にならないので、打ち込み稽古に変更し、ヴァルグードに打ち込ませる。


「俺は動かないから、どんどん打ち込んでこい。」

「はい」


そんな稽古していると出発の準備が出来たようだ。 俺が、


「此処までにして食事にしよう。」


そう言うと、ヴァルグードが、食事をテーブルにサラダとパンそれにスープを出して皆んなで食事を済ませ出発した。


そうして2日掛けて、領都に辿り着いた。


屋敷に戻ると、セバスチャンとメイドがエントランスで待っていた。

エントランスから執務室に向かう途中で、


アリーシアと遭遇した。


「ティモン、お帰りなさい。  

ヴァルちゃんもお帰り。 会いたかったわ!」


「ただいま。」

俺と軽くハグをして、その後にヴァルグードを抱き締めた。


「母上、只今戻りました。 お元気そうで何よりです。」


そんなやり取りをしていると、カリアス、ソフィアが2階から降りてきて、ソフィアが駆け出し、

「ヴァルちゃ〜ん! お帰り!」

と言いながらヴァルグードに抱きついていた。


「父上、お帰りなさい。

ヴァルグードも無事の様で良かった。」


「姉上、苦しいです。

兄上、ただいま。何事も無く無事戻りました。」


言いたいことはあるが取り敢えず直ぐに帝都に向かう事を話さなければ。










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