"真言"の魔術師〜神様に地球からの追放を言い渡されてしまいました。~

ウェルディング

第1話 地球から追放

私は、日本人だった。

享年55才。現代の日本では少し早い年齢で亡くなってしまった。

まぁ、結婚もして子宝には恵まれなかったが、マンションも購入してその時に附帯した生命保険でローンも完済するはずだから、奥さんは生活には困らないはず。


そんな訳で、今の状態は身体から意識が離れて魂魄こんぱくの状態で、何処かに引っ張られているのだがその先に意識を向けるとそこには丸い光の環に内径は真っ黒な穴の様な何かが有り、そこに向かって色とりどりの小さな炎玉の群れが吸い寄せられ、その真っ黒な穴の様なところに吸い込まれ消えてゆく。


私の魂魄は黄金色で強い炎玉を放っていて周りには同じ炎玉は無かったが、周りの炎玉と同じ様にその真っ黒な穴に吸い込まれた。


吸い込まれた先には霧がかかっており、何も見えないがまだ引っ張られて何処かに向かっているのは分かる。


ずっと同じ霧の中を引っ張られるままにしているとその先にまだ遠くではあるが薄っすらと、凱旋門の様なモノが見えて来た。


凱旋門の様なモノは光を放っていて、そこの門に様々な色の魂魄であろうと思われる炎玉達が門を潜って行く。

その門の先には真っ黒な川に七色の虹の橋が架かっていた。


凱旋門の様なモノには通過用の大きな扉と門柱に入る扉があり、黒色と灰色の魂魄の様な炎玉達は大きな扉通過して行くというかそちらに引っ張られて行った。


他の色の魂魄の様な炎玉達は門柱の扉に整列して入って行く。

私の魂魄も門柱の扉に入った。

中の入ると空港の入管ゲートの様になっており、金属探知機の様な金属の枠がありそこを潜ると私の魂魄だけが影絵のように人形ひとがたに形作って、他の色の魂魄達はそのままで進んでいく。


通路を進むと部屋になっており進行方向には凱旋門の出口があり、私はそのまま進むと部屋の中央辺りで列を弾かれた。


弾かれた方向に意識を向けると、左に中世の騎士服を着たミノタウロスの様な牛頭と右に同じ騎士服を着たオーガの様な鬼、一段高い中央には黒髮で怒髪天に怒り顔、服装はチェニックに一枚布を羽織った人間の様な人物が椅子に座ってこちらを見ている。


そして私に、


「貴様の生前の名はなんと申す」


私は、戸惑いながら


「・・・大地 智輝です」


それを聞いて人間の様な人物は何かを唱えると辞書の様な本が現れて、その辞書の様な本を読んでいる。

そして


「むぅ〜。貴様はここの円環の理から外れてしまっておる。

なので、ここの円環の理では輪廻できん。

本来であれば神の眷属に階位が上がってから外れるはずなのだが、

少し説明すると、此処は円環の理から外れる魂魄を監視する門なのだが、本来は黒色の魂魄で光を失ったモノを外して別の場所に送るのが役割であって、貴様の色の魂魄は此処には来ない。

なのに貴様は此処におる。

どうしたものか。」


それを聞いて私は、


「それでは神の眷属になれませんか?」


と聞いてみた。

向かう場所が違っただけなら、そちらに赴いて神の眷属に成れば良い。


すると、


「貴様の魂魄の色は黄金色。

これは〝法〟を知った者の色で眷属の色ではない。

黒色は単細胞生物の魂魄

灰色は微生物やプランクトンの魂魄

緑色は草木の魂魄

黄色は虫類の魂魄

青色は爬虫類や魚類や軟体動物類の魂魄

空色は人類に関わった青色の魂魄

赤色は哺乳類の魂魄

桃色は人類に関わった赤色の魂魄

白色は人類の魂魄

銀色は神の眷属に上がる魂魄

円環の理を循環する魂魄はこれらの色のみ。

そして光らなくなっている魂魄を取り除くのがこの選別門。

選別門を潜ると黒と灰色の魂魄は虹の橋を渡れず川に流され現世に戻る。

虹の橋を渡ると審判門が有りそこで現世での功罪が審判される。

魂魄の色の濃淡で功罪が審判されて、階位が上がったり下がったりして次の門に運ばれる。

次の門は6種類あり

地獄門・・黒と灰色の魂魄が向かう門

餓鬼門・・緑色と濃い黄色の魂魄が向かう門

畜生門・・薄い黄色、青色の魂魄が向かう門

修羅門・・赤色の魂魄が向かう門

人道門・・空色、桃色、白色の魂魄が向かう門

天界門・・銀色の魂魄が向かう門

これが現世で言われておる六道輪廻じゃ。

仕方ない。牛頭よ、ブラフマーを呼んでこい。」


騎士服を着たミノタウロスは


「畏まりました」


と言って、奥にある扉から出ていった。暫くすると、


「コン コン」


とノックをする音がして、扉が開かれ騎士服を着たミノタウロスとその背後に金髪で碧眼の男性らしき人物が部屋の中に入ってきた。


「ミヨワ様、御召しにより参上致しました。」


と言って合掌しながらかしずく。


ミヨワ様と呼ばれた人物は


「ブラフマーよ、この魂魄を見て欲しい。」


と言って、私を指差す。

ブラフマーは立ち上がって振り返り私を見て、


「黄金色の魂魄でしかも光が強い、

何故、〝法〟を知る者が此処にいるのでしょう。」


と言いながら首を傾げる。

そして、何かを思いついたのか


「貴方、〝経文〟〝真言〟に心当たりは有りませんか?」


と聞いてきたので、私は


「幼い頃より実家が宗教一家でそれに反発するうちに〝経文〟〝真言〟を読み漁りました」


実は生前、家の家族及び親戚一同がある宗教にのめり込んでいた。

幼い頃は何も考えず信仰していたが、大きくなると違和感を覚え反抗心が芽生えて、論破しようと〝経文〟〝真言〟をかなり読み込んだ。その言葉に、ブラフマーは


「なるほど。貴方が此処に辿り着きた理由が解りました。

貴方は〝経文〟〝真言〟を読み解いた事で、知らないうちに〝アカシックレコード〟のアクセス権を得てしまいました。

しかし、信仰を捨てた為、本来は死後、神の眷属に導かれ天界門に向かうはずでしたが、その神の眷属との絆が切れてしまいました。

それで、円環の理から外れてしまいながらも、魂魄は此処選別門に辿り着いてしまった。」


それを聞いたミヨワ様が


「智輝よ、貴様は地球及び天の川銀河系には存在することが出来ない。

円環の理から外れている事もそうだが

貴様の魂魄が放つオーラが神力に近づいているぐらい強くなってしまっておる。

これは神の眷属を超えて亜神の域なのだ。

それでだが、貴様が進む道は2つ。

一つは天界門からその先の浄土門に行き、魂魄の浄化を長い年月かけ、智輝の存在を消滅させる。

そして無垢な魂魄にしてから、この銀河系の円環の理に戻す。

もう一つは、文明の発達していない銀河系の円環の理に組み込まれその銀河系の惑星に転生して死後はその銀河系で亜神の一柱に帰属する。

さてどちらにする?

因みにだが、ブラフマーは創造神で、転生先はブラフマーが決める。」


それを聞いた私は、ミヨワ様に


「〝アカシックレコード〟のアクセス権はどうなるのでしょうか?」


と尋ねた。するとミヨワ様は


「消滅は文字通り功罪全てが消滅する訳だからアクセス権も消滅する。

転生は全ての功罪を持ったまま転生になる。」


消滅と転生では転生特典満載の転生一択に決まっている。


しかも私は〝アカシックレコード〟のアクセス権を得ていると云う。

これは絶対手放したくない。


「それでは、転生でお願いします。」


そして、ミヨワ様が、


「そうか。智輝よ転生を選択したからには、その人生で四悪趣しあくしゅの者共が寄ってくるであろうが、それに対処する事も亜神になる修行である。心せよ。

ブラフマーよ、後は頼んだ。」


「承りました。それでは、失礼致します。

智輝、行きますよ。」


そう言うと、ブラフマー様は奥の入ってきた

扉に向かう。

私もその後に続いて扉に向かった。



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