第73話 帝都での滞在

昨日は夕食を済ませたらすぐ寝てしまった。

朝起きて、屋敷の外周をジョギングしていたらエーデルトが追っかけてきた。


「ヴァルグード様、ご当主様がお呼びです。」


「こんな朝早くに?」


「良く分かりませんが、何やら困り事のようです。」


「分かった。すぐ向かう。」


ジョギングを終わらせ、衣服を着替えて食堂に到着すると父ティモンが座っていた。


「実はな、マジックポーチを着けたまま登城してしまい、第3皇子に見咎められてしまったんだ。」


「マジックポーチ如きでですか?」


「アイテムカバン程ではないが其れなりに貴重な物だからな、その場で欲しいと駄々をこねられてしまったので、1つ献上すると約束してしまったんだ。」


「まあ、ダンジョンでドロップするのでダンジョン産と言い張れば良いではありませんか?」


「献上する訳だからな、お金は入ってこないが良いのか?」


「しょうがないですが、マジックポーチは其れなりに作って有りますから問題ありません。それに、今後の領地運営の一助になるかもしれません。」


「そうか!そう言ってくれてホッとしたぞ。」


「ではマジックポーチを5個出してくれ。」


「はっ? 何故5個なのです?」


「皇子は男女合わせて5人いるからな!1人にだけ渡したら、大騒ぎになるだろうが。」


「いや、いや、何威張っているのですか!そもそも城にマジックポーチを持ち込まなければこんな事になっていないのですよ!」


「だってしょうがないじゃないか持ってちゃったんだから。」


「だってじゃないでしょう!だってじゃ!

はぁ〜……分かりました5個ですね。それ以上は出しませんよ!!」


そう釘を刺してインベントリからマジックポーチを5個出した。


「悪い。本当にごめん。これ以上は無いから。頂いていきます。」


「それで、参内の日取りは決まったのですか?」


「5日後に貴族の大集合が決まった。

そこで、そのまま出陣となる予定だ。」


「分かりました。僕は帝都に何時までいれば良いですか?」


「何かあるといけないから。俺が戻って来る迄待っていてくれ。」


「ではモノ作りをしながら待つとします。

それで、マジックポーチをいくつか売却して軍資金を作りたいのですが良いですか?」


「エーデルトは戦争に連れて行かずにお前の護衛で残していくから、外出する時は必ず連れて歩く様に、それと、11小隊が此処の護衛として残るから、もしダンジョンに行くようなら、最低限2名は同行させる様にしなさい。くれぐれも帝都内を徒歩で出歩くなよ!」


「分かりました。自分用の馬車を作って良いですか?」


「構わんが、我が家紋を入れ忘れるなよ!」


「分かりました。」


話を済ませ、朝食後、エーデルトを同行させて庭に出てきた。


「ヴァルグード様、何を始めるのですか?」


「ふふふっ、馬車を作る。」


先ずは、車輪を製作する。

直径1mを後輪として2輪 直径80cmを2輪ゴムはないので神鉄鋼を使ってホイールを作りその周りを木のパウダーでタイヤとした。

車軸を神鉄鋼で作り板バネを魔鉄で作成。

板バネにキャビンを乗せる架台を「創造」で繋ぎ、車軸と板バネを繋ぐそこにはボールベアリングを「創造」で作ってベアリングを車軸と板バネを繋いだ筒に入れて動きを良くする。乗り込むキャビンは4人乗りの大きさにして木のパウダーで馭者台とキャビンを作成する。

それを架台に接続して取り敢えず完成。

キャビンに乗り込み後部の壁に魔法陣を刻み、空間拡張を4mの奥行きで作りそこに、

キラービーの魔石を取り出して、魔法陣を刻み魔素吸収、魔力変換、空間拡張を刻んで壁の魔法陣に「創造」と唱えて嵌め込む。


キャビンにはスライドドアに嵌め殺し窓を取付て向かい合わせにベンチシートを設置した。

後部の拡張部分は可動間仕切りを作り奥行きを解らなくし、外装に家紋を焼き付けて馬車の完成である。


「エーデルト、馭者と馬を手配してくれないか?」


「どちらに行かれるので?」


「商業ギルドに行って、マジックポーチを売りたい、父上の了承は取り付けてある。」


「畏まりました。 直ぐに手配いたしますが、馬車を門まで移動をお願い出来ますか。」


「分かった。移動して待ってるよ。」


「では、用意してきます。」


そう言ってエーデルトは厩の方ヘ向かった。

私はインベントリに馬車を収納して言われた通り門で馬車を取り出し待っていると、エーデルトと使用人それと馬が2頭やってきた。


「ヴァルグード様、馭者担当のリックを連れて参りました。」


「馭者のリックです。宜しくお願い致します。」


「リック、商業ギルドまで宜しく頼む。」


「畏まりました」


「では行こうか。」


そう言って、エーデルトと私は馬車に乗り込んだ。

リックも馭者台にて乗り込み出発する。

帝都には商業ギルドが第2区域には西側にあり、第3区域は西と東側に有るそうで、上級貴族は、本来は呼び出すそうだ。

貴族街を出て商業ギルドに向う途中に様々な商店が軒を連ねていた。それを見て心が踊りだす‥


「エーデルト、家の領地も早く繁栄させたいなぁ〜。帝都の外の集落見ただろう? あんな所で燻っている位なら、家の領地に来てくれれば仕事なんか幾らでもあるのになぁ。」


「そうですね。とは言ってもここから10日もかかるのでは旅費が工面出来ないでしょうね。それに、身分証を持っていませんから。」


「旅費と身分証かぁ。冒険者になれば身分証は発行されるよね。」


「発行されますね。それでも旅ができるのはD級にならないと厳しいと思いますよ。」


「そうだよなぁ。旅費と身分証〜……う〜ん。難しい。」


そんな話をしていると馬車が停車した。

リックが馭者台から降りてドアを開けようとしているが、開けられなくて四苦八苦している。開きのドアでないから開けられない。

仕方無いのでエーデルトがスライドさせてドアを開ける。


「申し訳ありません。開き戸とばっかり。」


「気にするな。ヴァルグード様のやらかしだから仕方無い。」


「そんな言い方。僕が悪者じゃん。」


「普通は開き戸で作ります。引き戸にする意味が分かりません。」


「だって、スペース取らないし、横倒しになっても開けられるよ。」


「はい、はい。そうですね。」


「はい、は一回!」


「畏まりました。」


こうして言い合いをしながら商業ギルドに入っていく。

リックは馬車を待機場に持って行きそこで待機するそうだ。

商業ギルドは地球の銀行によく似ていた。

左に総合カウンターがあり、それから個別に区切られた半個室の対応ブースが10個程並んでいた。そこに女性の対応スタッフが座っている。

総合カウンターに向かい、そこにいた女性スタッフに用件を伝える。当然エーデルトが、


「済まないが、商品をギルドに売りたいのだが。」


「畏まりました。商業ギルドの登録はお済みですか?」


「いいやしていないが。」


「これを期に登録をされては如何ですか。

商業ギルドの会員カードには預金機能やカードで決済出来る機能もついておりますし。どこの商業ギルドでも預金を引き出せます。

それに、身元の保証も商業ギルドが保証人となります。」


それを聞いた私は、


「年齢制限はあるのですか?」


思わず尋ねた。すると、


「職授の儀が済んでいれば、登録は可能ですよ。」


とにこやかに対応された。


「突然声を掛けてすいません。僕はヴァルグード・リートゥスと云う者です。」

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