第110話 麓村で冒険者と遭遇
麓村に入ると何人かの人々が何やら作業をしている所に
「あれっ。エーデルト、人いるのだけど何か聞いてる?」
「そうですね〜。私は存じません」
「そう。すいません〜!貴方達はどっから来たのですか〜!」
私が作業している人に声を掛けると、彼らはびっくりした表情でこちらを見ると、みるみる険しい表情でこちらを睨んで各々の武器を構え威嚇してきた。それに反応したエーデルト達が抜剣して警戒する。両者が睨み合う中、私はスキル〝身体金剛〟を発動させて彼らの前へと進み、もう一度声を掛ける。
「ん。聞こえなかった?君達、ここで何しているの?」
「お前達こそ、何者なんだ!」
「先に尋ねているのはこちらなんだけど…。まあ良いや。僕は、この麓村一帯を管理する、ヴァルグード・フォン・リートゥス、リートゥス領主の次男だよ。後ろにいるのはリートゥス領騎士団で僕の護衛だ。それで君達は何者?事と次第に依っては成敗しなくちゃいけないかな?」
私は腰に下げている短剣の柄を握ってゆっくり擦り寄る。すると、
「待って下さい!おいっ皆!武器を仕舞え!すいません。リートゥス家の方々とは知らず武器を構えちまって、俺らはロスラン冒険者ギルドの冒険者です。ダンジョンが整備されたとの事で、現地調査を依頼されここに来ました。ガルチ村の副代官様には話を通しています。俺は、黒鉄の牙と云うC級冒険者パーティーのオイゲンです」
「ヤノックと言います」
「バリアンです」
「同じパーティーのミレイです」
「トレシアです」
「俺達は違うC級冒険者パーティーで春雷の風のリーダーのエイトと言う」
「同じくルミエラです」
「カシューだ」
「クラエンスと言う」
「そうでしたか!それはこちらの連絡ミスでしたね。申し訳ない。後ろにいる護衛は右からエーデルト、ウェルウィン、ムスカーノです。僕たちは水路を作っていまして暗くなったのでここで休む予定でした。皆さんもこちらでお休みに? あっ、作業続けて下さい。折角の素材が傷んでしまいます」
私が話を終えて作業再開を促すと、オイゲンが、
「ありがとうございます。では続けさせて貰います。皆!さっさと終わらせよう」
オイゲンが皆に声を掛けて解体作業の続きを始める。私達も少し離れたスペースに陣取り食事の支度をする。
伐採した木をインベントリから取り出して〝分解〟を掛けて、木のパウダーへと変化させ〝創造〟を使って、作業台とテーブル、椅子を作り出す。更に木皿やボール、カトラリーを作ってテーブルに並べて、奪った物資から肉の固まりと塩、胡椒を作業台に置いて行く。それに魔導コンロ2台とフライパン、深底鍋を取り出し、鉄をインベントリか出して包丁とナイフを〝創造〟で作り出しす。
「皆!ガッツリ食べれるよね」
「いくらでもいけます」
とムスカーノが言うので、厚切りに肉を切っていき、切り分けた肉に塩コショウををかけ一旦置いて寝かせ、ムスカーノに
「ムスカーノ、この鍋に井戸から水を汲んで入れて来て」
「了解です」
ムスカーノに鍋を渡してお願いする。ムスカーノはそれを持って井戸へと向かった。私は、野菜の入った木箱をインベントリからいくつか取り出し、その中から、トマト、人参、蕪、葉野菜、玉ねぎ、芋を2個ずつ抜いて作業台に置き、木箱を全てインベントリに収納すると、
「エーデルト、ウェルウィン、トマトと葉野菜以外の野菜の皮を剥いてくれる」
とお願いして作ったナイフを2人に渡す。2人は、
「「了解です」」
返事をして私の向かいに立ち皮を剥き始める。ムスカーノが鍋に水を入れて戻って来たので、
「ムスカーノ、その魔導コンロの上に置いて」
「了解です。後は何を手伝いますか?」
「そうだね〜。あっ!冒険者達が解体しているホーンラビットの骨を貰って来て」
「ホーンラビットの骨?そんな物何に使うのですか?」
「スープの出汁にしようと思って」
「良く分かりませんが貰って来ます」
ムスカーノが冒険者達の作業場所に向かうとエーデルトが、
「野菜の皮を剥き終わりました」
と伝えて来たので、
「それを、小さく刻んでくれる。この位に」
私は剥き終わっている芋を細かく刻んで大きさを教えると、2人は頷いて野菜を刻み始める。私はテーブルに移動すると、鉄出してトングとお玉を〝創造〟を使って作り出しテーブルに置くと、ムスカーノが骨を持って帰って来たので、
「ムスカーノ!こっちのテーブルに置いてくれる」
「了解です」
ムスカーノが骨をテーブルに置くと「浄化」を唱えて、骨を綺麗にし鍋へと投入する。
「ムスカーノ、鍋の表面にアクが出て来たら、このお玉で、掬って捨ててくれる」
「分かりました」
そして、作業台においてある肉の固まりから獣脂を削ぎ、魔導コンロを向かいに移動して、フライパンに火を掛けて獣脂を落とす、十分温まったら刻んだ野菜を炒めてはボールに移すを繰り返して、刻んだ野菜を全て炒めると、鍋の骨をトングで取り出して炒めた野菜をぶち込む。ボール皿にトマト大きく切って〝分解〟を使いペースト状にする。
ペースト状になったトマトを鍋にぶち込み塩コショウで味を調えるとスープの完成。
お椀の形に作ったスープ皿を用意し、最後に肉を焼いて行く。インベントリに入っているパンを取り出して、次々と焼いた肉を皿に乗せて、スープを出してテーブルに並べ終わる。スープはそれなりの量を作ったので、
「冒険者の皆さん!良かったらスープ飲んで下さい。ここにスープ皿置いておきますので、ご自由にどうぞ!」
冒険者に声を掛けると皆こちらにやって来て、
「いただいても良いのですか?」
「どうぞ。こちらは取り分けていますから無くなっても大丈夫です」
「では、遠慮なくいただきます」
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
「あっ。良かったらその作業台で使って下さい」
「ありがとうございます。しかし、この村といい、ガルチ村といいあの惨劇から良くここまで短期間に開発しましたね。ガルチ村の惨劇を知っている俺達には今のガルチ村は信じられない光景です。ここも、いつの間にか道があって村が出来たからびっくりですよ」
食事をしながらオイゲンがそんな感想を言ってると、春雷の風のエイトが、
「本当に。こんなに早く村が出来てるなら直ぐにでもダンジョン攻略に向かえるな。ヴァルグード様、このダンジョンは、冒険者がこぞって押し寄せますよ。宿屋が全然足らなくなりますから準備を急いだ方が良いです。この調査依頼も希望者が殺到したぐらいですから、解禁になったらD級以上のロスラン冒険者達はほとんど来てしまいますよ」
「そうなんだ。でも滞在はガルチ村にお願いしたいのだけど難しいのかな〜」
それを聞いたオイゲンが、
「ここからガルチ村まで大変な距離ではありませんが移動距離が少ない方をどうしても選びたいですね」
「村に戻ったら。副代官と相談してみるよ」
そんな会話をしながら食事を終わらせると、冒険者達は各々、空き家の中に入って行った。私達も空き家に入り就寝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます