第109話 また水路作り
翌朝、いつものルーティンである、ジョギングと素振りを終わらせて、食事を済ますと、護衛達を連れて、昨日の作業場所に転移した。
護衛達は魔物の警戒で周囲に散らばり、私は「掘削」を唱えて水路を作っていく。ある程度進むと、水路を固める為に「圧縮」を水路と堤防になる部分に掛けて行く。木々を薙ぎ倒して収納し、掘削をしていると時々、見えない所で護衛達が戦っている
「大丈夫か〜!」
と声を掛けるも、
「大丈夫で〜す!」
と云う返事が帰って来るのでそれからは気にせず水路作りに没頭していった。村の城壁が見てきたので、この辺りにため池を作ることにして直径200mの穴を作る為に、渦巻きの様に外周から掘削を始めた4m程の深さまで掘り進めると東の城壁近くに水路を作り、城門前に当たる道には5m幅の橋を木のパウダーで作って掛けて置き、南へと進めて行く。
最後に海へと掘り進めた頃には既に陽が落ちていた。護衛の3人も近くにいた為、直ぐに転移して村へと戻った。
村に戻ると、食堂でオデットが待ち構えていた。
「ヴァルグード様、どうですか?水路は完成しましたか?」
「オデット、その前にさぁ。お疲れさまでしたとか労いの言葉無いの。僕、結構頑張ったと思うよ!」
「あ〜ぁ。はいはい、お疲れ様です。それでどうなりましたか?」
「全然心が籠もって無い!全く。ちゃんと水路は通しておきました!ダンジョンの麓村の方はまだ手付かずだけどね」
「そちらはまだ余裕がありますから大丈夫です。それより、冒険者ギルドと商業ギルドの職員が決まってやって来るのですよ!一番の懸念事項だった水問題も解消されて東側居住区も建てて貰っていますし、魔物素材の倉庫も出来ていますから、これから忙しくなりますよ」
「じゃあ、明日川から水を引いたら僕はお役御免だよね」
「ヴァルグード様、
「だって、さっき余裕あるって言ったじゃない!」
「余裕はあって無いようなものです。ヴァルグード様が動けるならば先々の事を考えれば早めにやっておいたほうが良いのです」
「え〜。嫌だよ。ほら、戦争も終わっていないし、奴隷兵の受け入れもあるじゃない。一度ダンジョンで鉱物の仕入れとかしておかないと。これから武器や日用品、雑貨で必要になって来るでしょ」
「大丈夫です。そちらはいざ必要となったら、騎士団の小隊を派遣して取りに行かせますから。水路はヴァルグード様しか出来ないのです。お願いですから水路!水路を作って下さい」
オデットは膝を付いて胸に手を合わせて私を拝みだした。私は堪らず、
「分かった。分かったから!やります!頑張って水路作ります」
それを聞いたオデットは満足そうに食事を始める。結局、水引きが終わった後ダンジョンの麓村に水路を作らされる事になった。少しムカついたので夕食を終えてオデットに、
「商人が来ても僕は立ち会えないからね、そっちで処理しておいて!」
と、商人の立ち合いをバックれる宣言をした所が、
「それはそれ。これはこれです。そもそも手を広げられたのはガルチ村の代官であるヴァルグード様です。ご自分のケツはご自分でお拭きください。私は、計画的に少しずつ村を広げようと尽力して参りましたが、ヴァルグード様がご相談も無く、避難民を受け入れ、麓村を作られたのです。私は出来る範囲でお手伝いするだけの副代官で御座いますから」
正論を叩き付けられた私は何も言えずに自室へと戻って、ふて寝した。
翌朝、日の出と共に起きた私は、誰にも告げずに水路の起点場所に部屋から転移して、川と水路の狭間にある岩や土に向かって、水路の底から手に魔力と練気力を混ぜ合わせて、
「オデットのボケがぁ!!〝火球〟」
燃料パンパンのファイヤボールをぶつけると、
「ドッカ〜〜ン!!」
ファイヤボールの当たった川を堰き止めていた岩や土が爆散し、更に川底へと至ったファイヤボールで周囲は土埃と水蒸気で何も見えなくなった。
「ゴホッ、ゴホッ。ちょっとやり過ぎたか」
と思っていた瞬間。「ゴーーーッ!」と云う音と共に水が水路に流れ込んで来た。私は慌てて「転移」を唱えて、自室へと戻った。
部屋に戻って粉塵塗れの身体に〝浄化〟を掛けて綺麗にすると冒険者の装いに着替えて、食堂に移動する。
食堂には誰もいないので厨房に出向き、
「アリッサ、朝食をお願い」
と、厨房で支度をしているメイドに声を掛ける。メイドのアリッサは、
「直ぐに、ご用意致しますので、食堂にてお待ち下さい」
「宜しくね」
食堂に入ると、エーデルト達もやって来て、
「「ヴァルグード様、おはようございます」」
「ヴァルグード様、おはようございます。本日はどちらに
「エーデルト、ウェルウィン、ムスカーノおはよう。今日は、オデットに頼まれた麓村までの水路作りに行くつもり。皆は食事を済ませたの?」
「食事はこちらに伺う前に宿舎で済ませて参りました。出発まで、我々はエントランスでお待ちいたします。それでは失礼致します」
「あぁ。食事を済ませたら直ぐに向う」
「「失礼致します」」
エーデルト達が退出すると入れ違いにカートを引いたメイドが入って来て、朝食を配膳してくれた。食事をしていると、オデットが食堂に入って来たので、通水した事を伝える。
「オデット、おはよう。水路ね朝一番に川と繋いでおいたからこちらに水が来ると思うので注意してね」
「ヴァルグード様、おはようございます。既に川と繋いで頂いたのですね。ありがとうございます。それでは麓村の水路宜しくお願い致します」
「2,3日は村に戻らず麓村に滞在するから何かあれば麓村に誰か寄越してね」
「畏まりました」
食事を済ませて、エントランスに移動し、エーデルト達と合流する。
「ちょっと転移する場所を探索するから待ってて」
エーデルト達に転移場所を探索する為、しばらく待って貰う。スクリーンを立ち上げて〝遠視〟で麓村に近い川を探す。川を見つけると標高が麓村より高い場所でそれなりの開けた場所を見つけると、
「良し!場所を見つけたから転移するよ。皆、掴まって」
「「「了解です」」」
こうして水路の起点となる場所に護衛達を連れて転移した。起点場所に転移するとそこには草叢が生い茂っておりその先は森になっている。草叢の中には薬草も生えていたので、
「皆!薬草が生えているから採取をお願い。その後に水路を作るよ」
「「「了解です」」」
水路作る前に手分けして薬草採集を始める。
薬草はオトギリ草、チドメ草、それにヨモギ草が群生していたので、根こそぎ採取する。
採取を終わらせて私のインベントリに収納すると、水路作りを始める。護衛達は先の森へと進んで、魔物の警戒を始める。私は右手を地面に伸ばし「掘削」と唱えて、幅4m高さ2mの水路となる溝を掘り始める。
ある程度進むと左手を後方に掲げて「圧縮」を唱えて掘削した水路を固める。両脇に掘り出された土砂は、堤防に成る様にある程度均等に盛土して圧縮で固める。
カニ歩きしながらの水路作りを進めると進行方向の木々が邪魔となるので護衛達に、
「進行方向の木々を伐採するから後ろに下がって!」
木々の伐採で巻き込まれない様に注意を促しながら、木々を「
「お疲れ、今日はここまでにして、滞在と食事の準備を始めよう」
「「「畏まりました」」」
こうして、麓村への水路作り初日は終了した。
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