第108話 水路造り

帝都のスラムにいた家族をガルチ村へと連れて来た。馬車の扉を開けて皆を降りる様に、うながす。


「皆、到着しましたよ。馬車から降りてください。ここが皆が住むガルチ村です。」


連れて来た母子達は、唖然として立ち尽くす。


「「「「「……。」」」」」


「「「……。」」」


「かあしゃん、人いないね~」


メイリンに抱っこされているユーリシアの言葉で皆が我に返る。エターシャが、


「どうやってここまで来たのでしょうか?先程、馬車に乗ったばかりです。本当にリートゥス伯爵領ですか?」


「それは僕の魔術で転移して来たんだ。だからここはリートゥス伯爵領のガルチ村だよ。

それで住む所ですが、まだ、開業してないけど宿屋があるのでそこに皆で住んで貰って良いかな」


それを聞いていたニーシャが、


「それは宿屋の仕事を貰えると云う事ですか?」


「仕事をあげると云うか、その宿屋を与えます。ただの住まいにしても良いし、宿屋を皆で開業しても良いよ。勿論、違う仕事に就きたいのなら相談に乗るよ。取り敢えず、住まいと成る宿屋に向おう」


皆は未だ転移により頭が働いて居ないらしく、素直に私の後を付いて来ている。南側に向かって歩いていると左側に2階建ての長屋が見えて来た。避難民がちらほら窓を開けて周りを見ている。それを見たメイリンが、


「男性の姿をあまり見かけませんね」


「うん、あの長屋に住んでいるのは戦争から避難させて来た避難民達なんだ。男性は未だ囚われていてね。その解放を僕の父にお願いしているところ」


「そうなんですね」


あまり会話も弾まず、言葉少なに目的地の宿屋に到着した。


「この宿屋風の建物に住んで貰います。欲しい物があれば馬車の後ろにあった代官屋敷にいつでも来て建物にいる使用人達に相談して下さい。サイエン達は冒険者を続けるならいつでも代官屋敷に来て」


案内を終わらせて何時でも代官屋敷に来る様に伝えると、サイエンをその場に残して護衛騎士達を連れて代官屋敷へと戻った。

代官屋敷に入るとオデットが待ち構えていて、


「ヴァルグード様、衣類は作れませんか、それと食器類にカトラリーが断然不足しています。更に水が不足してきます水路の計画をしませんと、作物が作れません」


「南の畑は井戸を掘っておいた筈だけど。それにこの辺は川が無いよね。衣類は作れない無いけど食器とカトラリーは前の分ぐらいで大丈夫かな」


「ヴァルグード様、ダンジョンのあるあの地域で川があった筈ですおの上流からこちらに水路は作れませんか?ほら、ヴァルグード様の魔術であれば一気に穴掘りなど造作も無い事と思いますが」


「いや!大変なんだよ!水路にするには地面に浸潤して水が減らない様に硬めて行かないといけないし」


「それでも村の井戸だけではこれから発展して増えていく住人の必要な水はを賄いきれません。なんとかお願い致します」


「分かったよ。エーデルト、ウェルウィン、ムスカーノ護衛宜しく、直ぐに出発するよ」


「「「畏まりました」」」


川を見つける為に、スクリーンを立ち上げて〝遠視〟でダンジョン周囲を調べると確かに川がありその上流へと視界を遡上する。すると上流に水深のある場所を見付けたので、護衛達と手を繋ぎその場所に転移する。


「ここはガルチ村から東北東にある場所だからここから一直線にガルチ村を目指して水路を作っていく。皆はその作業の間魔物の襲撃を撃退して欲しい。配置はエーデルトに任せる宜しく」


「畏まりました。ウェルウィンはヴァルグードの右手をムスカーノは左手を警戒してくれ。私は後方を警戒する。ヴァルグード様距離はどれ程でしょうか?」


「う〜ん。大体だけど、10km程かな」


「では、野営も必要になりますか?」


「いや、転移で村に帰るから見える範囲で警戒をお願い」


それを聞いた護衛達は「畏まりました」と返事をして警戒する為散って行った。


そして、魔術で〝掘削〟を唱えて幅4m深さ1mの水路土を両端に掻き分けながら進んでいく。森の中にある川なので木々が行く手阻むが「光線レーザー」を使って木々をぎ倒しその木々をインベントリに収納して掘削を続ける、10m程進むと「圧縮」スキルを使って掘った場所を固めて行く。

1時間で1km進み4km程進んだ所で陽が傾き出したので、護衛達を集めて村へと帰還した。


村に戻ると、食器類とカトラリーを作業小屋に籠もって作り創める。スープ皿に大小のお皿を木のパウダーで「創造」を使って100ずつ作成。カトラリーは、フォーク、ナイフ、スプーンを神気鉄でこれも各100本作っていると、エーデルトが食事を知らせにやって来た。扉がノックされ、


「ヴァルグード様、食事の時間になりましたのでお迎えにあがりました」


「分かった。今行く」


作業小屋の扉を開けて、エーデルトと合流すると、代官屋敷の食堂へと移動する。

食堂には、オデットが着席しており水路の進捗を聞いて来た。


「ヴァルグード様、水路はどうでしょうか」


「川は見付けて、こちらへと掘り進めるているから明日には近く迄、通せると思うけど下流の放水するルートを決めないと、まだ水路に水は流せないよ」


「今日でそこまで……。ダンジョンの麓にある村まで引けませんか?」


「あそこはガルチ村より高い場所にあるから川から直接水路を作ったほうが良いと思うよ」


「でしたらそれでお願い致します」


「明日以降余裕が出来たらね。それと今、父上が交渉している奴隷兵達も受け入れを用意しておいてね」


水路の話を済ませて食事を始める。食事中に、現在のダンジョンの状況を聞いた。


「今、ダンジョンは誰か、行っているの?」


「騎士団が4人1組となって低層階を間引きしています。冒険者の誘致は水問題で進めていません。ギルドの運営も準備の段階で止まっています。これで水路が開通すれば一気に話が進むでしょう」


「それは良かった。商人はいつ頃来そうかな」


「それはまだなんとも。衣類が必要な事は伝えてありますので、その辺りを持ち込んでくれる商人を送り出すのに手間がかかっているのかもしれません」


「西側の開発は終わってるけど、あの後、入植者来ているの?」


「そちらもまだ進めていません。戦争が終結して落ち着いてから募集を始めようかと」


「それが良いね。既に1000人が暮らす村になっちゃったから無理に募集しなくて良いかな」


「それでも、まだダンジョンの麓村もありますから、まだまだ人材は必要ですよ」


会話をしながらの食事を終えて自室に戻り、就寝した。




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