第107話 副代官にこき使われる
父ティモンが割り当てられた部屋に入るのを見計らって、その部屋にエーデルトを連れて転移する。
「おわっ。だから突然現れるなよ。びっくりするじゃないか。お前国境の川が湖になっているんだが、お前の仕業だろ!」
「あの時は、自爆兵の事で物資の奪取だけでは、怒りが収まらなかったもので災害級の魔術を放ってしまって、申し訳ありません」
「まあ良いけどな。俺達の治める領地じゃないし、王国もこれで陸路からの侵略がほぼ不可能になったしな。でもこれで、領都の奪回は厳しくなったなぁ。帝国軍が負けなきゃ良いけど」
「地下牢にいた者達は?」
「奴隷兵達だ。王国軍は余程慌てて逃げ出した様で、殺す時間も勿体ないから牢にぶち込んで撤退して行ったらしい。ダビン港町の攻略軍が逃げ込んで来て、兵器を運ぶ人員が確保された様で、不要になったと置き去りにされたそうだ。食料も無いから放っといても、餓死すると思ったんだろう。随分と食事も大して貰って無かったみたいだ」
「そうなんですね。実は、その地下牢に押し込められていた。人々を僕が転移でガルチ村に連れて行ってます。父上、その奴隷兵を貰い受ける訳には行きませんか?肉親が奴隷兵の中にいると思いますので会わせてガルチ村の住民にしたいのです」
「そうだなぁ。ちょっと根回ししてくるか」
「父上は領都奪回に参戦するのですか?」
「いや。俺達の東方領主連合軍は十分な戦果を挙げているからこれ以上は、北方領主連合軍にやっかまれそうなんだよなぁ。だから総司令官の指示があるまでダビン港町まで戻って待機かな」
「そうですか。早く終わると良いですね。それじゃ、今日はガルチ村に戻ります。明日また来ますので、奴隷兵の件宜しくお願いします」
「おう。分かった。頑張ってみる」
父ティモンと打ち合わせを終わらせて、ガルト村へと転移した。村に戻るとオデットが待ち構えていて、
「ヴァルグード様、お願いがございます。避難民の中には職人や商人もおりましたので、それらが使う道具の作成と作業場の建築をお願い出来ませんか? それと小麦を挽く
す。」
「それって、物凄く大変なんじゃ……」
「大変ですが、ヴァルグード様のスキルでしたら、あっという間ですよね」
オデットはこめかみに血管を浮かしながら、引き
「が、頑張ってみる。いやっ、頑張ります」
慌てて代官屋敷の裏にある私の作業場に逃げ込んだ。そして神気鉄と木のパウダーでハンマー、
ハンマーは鍛冶屋が使う大きさ別で5種類、と大工道具用2種類を各20本。
木槌は1種類20本。のみは幅違いを5種類と深さ違いを10種類各20本。
金床は、大小2種類で各20個
ツルハシは100本。
シャベル、スコップ、鎌も各100本。
裁縫針は、太いのと細いので2種類各200本、
刺繍針も同じく2種類各200本。
鍋は、大鍋を20個と家庭鍋を500個、
フライパンも500個一気に頑張って作り、鍋など作った嵩張る物を外に出していたエーデルトに、
「エーデルト、誰か運び出す人呼んで来て」
「畏まりました」
エーデルトを送り出すと私は、避難民用に造った2階建ての各長屋脇にパン窯を作って雨除けに小屋を建築した。
そして、東北の角の空き地に高炉を1基造り、少し開けて6棟の1階を鍛造炉付きの鍛冶場とトイレ、店舗、浴室。2階を居住スペースとした住居兼鍛冶屋を造った。
造り終わったときにはエーデルトが、
「ヴァルグード様、すっかり夜も
「本当だ。真っ暗だね。食事に戻ろう」
代官屋敷に戻って食堂に行くと、オデットが待っていたので、急いで席に着く。
「ヴァルグード様、本日はお疲れ様でした。
不足している物資の調達に領都とロスランに伝令を飛ばしてこちらに商人を呼んで貰えないかお願いしてあります。
商人が着きましたら、立ち合いをお願い致します。それと、木材が不足していますので、明日は、畑の拡張ついでに、木々の伐採をお願いします」
「分かった」
明日もこき使われる事が決定したので、食事を終わらせて直ぐ様、就寝した。
翌朝、ジョギングと素振りを終わらせて、朝食に向かうと、エーデルトが、
「ヴァルグード様、帝都に残している皆をこちらに連れて来た方が良いのでは無いですか?」
と聞いて来たので、
「そうだった!すっかり忘れてたよ!」
俺は食堂に入り朝食を食べるとエーデルトと一緒にダンジョン町のあの宿屋前に転移した。
宿屋に入るとフロントの女性スタッフに声を掛けられる。
「お客様、おかえりなさいませ」
私は、今日で皆をチェックアウトさせると告げる。
「すみませんが今日で、僕の連れて来た者達は領に戻ります。残りの宿泊料はご迷惑代として受け取って下さい」
「宜しいのですか?」
「構いません。エーデルト、僕はここに居るから皆を呼んで来て」
「畏まりました」
エーデルトに皆を呼びに行かせて、私は宿屋のエントランスにあるソファーで
「ありがとう」
とお礼を言うと、女性スタッフはニッコリ笑って、
「ごゆっくり」
と言ってフロントに戻って行った。
紅茶も飲み終えるかと云う所で、エーデルトが皆を引き連れて戻って来た。
護衛騎士のウェルウィン、ムスカーノ、御者のリック
冒険者のサイエン、ウルティアとアミエル、ティナ、コニス、
そしてその家族のエターシャ、ニーシャ、メイリン、ユーリシア
皆を連れて宿屋を出ると、リックが馬車を出して来た。その馬車に、子供達と家族を乗せる。
「狭いけど皆、馬車に入ってね。
直ぐに出してあげるから少し我慢して」
そして人気の無くなった所に移動すると、
「皆!馬車に接触しておいて!〝転移〟」
こうして馬車ごとガルチ村に転移した。
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