第32話 道は続くよどこまでも

20日が過ぎ、ひたすら道を作りながらも、魔物の襲撃は止まらない。

10日目にまた、ビックボアが襲撃して来て、

思わず「〝光線レーザー〟」を唱えてしまい、眉間を撃ち抜いてしまった。

皆にはどうやったのか説明を求められ、

光属性の魔術です。ってだけで押し切った。

12日目にはフォレストディアという鹿の魔物が12頭も押し寄せ、騎士の2人が角で一人は右腕を刺されてもう一人は左足を切り裂かれた。

治癒魔術を使って治療をしたら、かなりびっくりさせてしまった。

それでもフォレストディアは半数の6頭は倒して、残りの6頭は逃げて行った。

次の日13日目にまたフォレストウルフが15頭の群れで襲ってきた。

発見が早かったので馬車の周りに集まり土壁を作ってフォレストウルフの攻撃を防御しながら「〝風刃〟」の連続使用と騎士の剣での攻撃でフォレストウルフは殲滅出来た。

16日目にオウルベアが出た。

こいつは風魔術を使ってきて、羽を羽ばたくとウィンドカッターが飛んでくる。

土壁で防御するがすぐ壊されてしまうので、副団長とエーデルトがウォーターウォールを出してウィンドカッターを防ぐ。

オウルベアは駆足でこちらに向かって更にウィンドカッターを無数に放つ。

ウォーターウォールがウィンドカッターで維持出来なくなる頃にはオウルベアは3m位の距離まで近づいていた。

ここでまた「〝光線レーザー」を出して横に振るとオウルベアの首を切断し、流れたレーザーの軌道上にある木々摩でも切断していた。

エーデルトがそれを見て、

「強力な魔物には有効ですが、使う場所は限られますね。」

すると副団長が、

「オウルベアは物理攻撃が効きづらい魔物ですから助かりました。

しかし、魔法は詠唱が必要ですが、魔術は呪文一言で発現しますからこういう戦闘には極めて有効ですね。」

「そうだよね。 別に触媒で発動するわけだから、指輪とかを触媒にすれば良いんじゃない?」

「ヴァルグード様はこそこの所の事情を勉強させていませんでしたね。

魔術の触媒には主に魔石を使用しますが、大きさにより貯めれる魔力が、違ってくるのです。

指輪に加工出来る魔石では、ウィンドカッターだと5回使用すれば魔石に込めた魔力が無くなってしまいます。

充填に20万ダラ掛かりますから、費用対効果が悪すぎます。」

「なるほどね。自動に魔力を補充は出来ないの?」

「その魔法陣を刻むのは指輪ではスペースがありません。

魔法陣は複雑な上に呪文を書き込まないといけませんから、充填に使う魔法陣は、吸収 変換 接続 補充 充填 と5層に描かれる訳ですから、指輪のような小さい物には刻めません。

これは魔法使いでは出来ないのです。

魔術士の魔力は小さいが繊細に操れないと無理なんです。

魔法使いは針のように魔力を出せません。

出せる魔力の出力が大きいので指の太さになってしまうんです。」

「針のように魔力を出せても刻めない訳ね。

況してや魔法使いは指の太さでは描けないね。」

「なので、詠唱破棄で魔法を発動できる方法を、王宮に居る宮廷魔導師達は研究しています。

ですから呪文一発で魔法と同じ出力の魔術を使えるヴァルグード様は、多分ですが世界に唯一人と思われます。

ソレがバレたら王宮から呼び出しが来ますね。」

これは注意が必要だな。

「ではオウルベアを回収して仕事を始めますか?

工期が2日程遅れてます。

頑張りましょう。」

この日から作業ピッチが上がっていった。

その後は魔物の襲撃もなく進んで行く。

そうして冒頭の20日になっている。

(地図)を頭の中で唱えると航空写真の様に周囲の様子が写し出される。

後20kmのところまで来た。

すると騎士の一人が、

「止まってください!血の匂いがします!」

それを聞いて副団長が

「全員!馬車に集合!」

道の為に土壁を作っていた騎士2名と私、ウィリアムが馬車に向う。

馬車の右手前方を護衛していた騎士が、

「血の匂いを感じませんか?」

皆んなが一斉に匂いを嗅ぎ始め、確かに鉄さびのような匂いを感じる。副団長が

「確かに血の匂いがする。

私とエーデルトで偵察に出ます。

皆はここで何時でも動ける様に、待機していてください。

エーデルト行くぞ。」

「はい」

副団長とエーデルトは馬車から右方向に進んで行った。

私は、騎士達に

「首の高さの土壁を馬車の周りにつくってください。」

「「「了解」」」

一人は左側の警戒に当たる。

土壁が出来上がり、左右に1名づつ警戒担当にあて、残りは休憩をさせる。

2時間ほどして、エーデルトだけが帰って来た。

「この先でゴブリンが集落を作っていました。

以前のスタンピードの生き残りのようです。

副団長が、相談が有るというので、私だけ戻ってきました。」

「騎士1名同行させます、残りの皆んなはここで待って、何かあれば騎士を使いに出します。 良いですね。」

『はい』

「では向かいましょう。」

エーデルト、騎士、私でゴブリンの集落に向う。」

道中で、エーデルトが、

「血の匂いはゴブリンの食事からですね。

多分、避難した村人が被害者ではないかと思われます。」

言いづらそうにエーデルトは話す。

苗床にならなくなった人間を食事にしていたのだろうと思われる。

今頃食事にされると云う事は、そう云う理由しかない。

暫くすると屈んで様子を見ている副団長がいた。

「ヴァルグード様をお連れしました。」

エーデルトの言葉に副団長は

「エーデルト、ご苦労。

ヴァルグード様、ゴブリンはダンジョンから出てしまった以上、繁殖を爆発させる可能性があります。

外に出たゴブリンは、ねずみ算的に増えてしまいます。

このまま此処を放置していれば、直ぐにガルチ村を襲撃するでしょう。

今も100匹以上います。

ここで今根絶やしにしておきましょう。

ヴァルグード様、あの光属性魔術を使って頂けませんか?」

「良いよ! これはガルチ村代官(仮)としても弔い合戦だ。

容赦無しに全力で行くよ。」

そうして、集落に近づくと、人骨が捨てられている穴があってそこにゴブリンが2匹いた。 直ぐに「〝光線〟」を唱えゴブリンの首元に当てる。

首が飛びゴブリン2匹が崩れて穴に落ちて行った。

その穴を過ぎるとテントが無数にあり村人が避難していた場所だとわかる。

そこをガルチ村の戦いで逃げ出したゴブリンが襲撃したのであろうと予想される。

村を追われ避難した先でまたゴブリンに襲われては報われない、さぞ無念だっただろうと思う。

この気持ちをゴブリンにぶつける。

穴を背にして扇状にレーザーを照射するテントにレーザーが当たるとテントが燃え出すが無視して右から左左から右へと3往復ほど照射し続けた。」全てのテントが轟々と燃え上がる、暫く燃え続け消し炭となったその頃には集落に動いているものは無かった。

「根絶やしにしたと思うけど。」

「大丈夫そうです。

動きのあるものはありませんから。」

「あの穴埋められない?」

「私達で綺麗に埋めておきますので、ヴァルグード様は馬車にお戻り下さい。」

「分かった。」

そう言って馬車に戻った。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る