第113話 ガルチ村での話し合い

翌朝、朝食を先に頂いた私は身支度を整えてエントランスに移動すると、エーデルト達は既に待機しており、


「皆、おはよう」


「「「おはようございます」」」


「今日は、麓村の水路を開通させるよ。それと昨日、お祖母様とアグウェル叔父さんからさ、河口付近の浜辺に造船所作ってくれって頼まれちゃったから、それも基礎工事やるかもしれない」


「私達は、護衛をするだけですからどの様な場所で活動されようとも、付いて行くだけです」


「うん。宜しく」


護衛達とエントランスで合流し、屋敷を出ようとすると、お祖母様、アグウェル叔父、ティオーネ叔母が見送りの為に出て来た。


「ヴァルグード、馬車を用意させてるから、門外まで乗って行きなさい」


「アグウェル叔父さん、ありがとう。馬車使わせて貰います。お祖母様、直ぐにとは行きませんが必ず造船所は作りますが場所は僕に任せて下さい」


「もちろんよ。そこまで私も図々しくはありませんよ。ヴァルグードの好きな場所にお作りなさい。後は貴方とアグウェルのお話し合いで決めて下さいな」


「分かりました。アグウェル叔父さん一度お祖父様に会って場所は相談します。勿論、ロスランに近い場所にはしますが、ガルチ村でも利用出来るそんな場所に決めたいと思っています」


「自分の受け持つ村の利益を考えるのは代官として当然だ。お前の好きな様にすれば良い」


「はい。叔母様また来ます。ディアンヌの職授の儀はいつですか?」


「2週間後よ。それまでに戦争が終わっていれば良いのだけど」


「それは、難しいかもしれませんね。では2週間後また来ます。お祖母様、アグウェル叔父さん、ティオーネ叔母様、泊めて頂きありがとうございました」


「気を付けてな」


「無理はしなくて良いのですよ」


「2週間後待っていますよ」


こうして、別れの挨拶をし用意された馬車に乗り込むと城門外まで送って貰い、ロスランを後にした。私が作った道まで戻ると、


「ここら辺りで良いか。皆、僕に触れて。〝転移〟」


私達は、水路の始まりの場所へと転移する。

そして、堤防から、


「火球」


と魔力を目一杯溜めたファイヤーボールを打ち込む。「ドッカーン」破裂音がして周囲に水蒸気と粉塵で何も見えなくなる。


「ゴホッ、ゴホッ」


「ゴホッ、ヴァルグード様、こんなやり方しなくても木板で遮断して最後に引き抜くとかもう少し方法を考えた方が良くは無いですか?」


「うん、そうだね。これは駄目だ。皆、集まって〝浄化〟これで身なりはマシになったか。それじゃ、ガルチ村に戻るよ〝転移〟」


こうして水路を繋いだ私達は、一旦ガルチ村の私の自室へと転移した。


「皆、お疲れ様。水路作りはこれで終了だけどウェルウィンとムスカーノは帝都の原隊に戻る?それとも、僕の護衛として専属になる?」


「「専属で」」


二人口を揃えて、私の専属をと答えてくれた。


「それじゃ、オデットに手続きをして貰う事にするよ。これからも宜しくね」


「「宜しくお願い致します」」


「オデットに報告してくるから2人は兵舎に戻って休んで」


「「畏まりました」」


私達は自室を出るとウェルウィンとムスカーノは兵舎へと移動して、私とエーデルトはオデットの居る執務室へと向かった。

エーデルトが執務室の扉をノックすると、扉が開かれて、執事のウィリアムが顔を出す。


「ヴァルグード様、おかえりなさいませ」


「ただいま、オデットいる?」


「いらっしゃいます。どうぞ」


ウィリアムに招かれ執務室に入るとオデットと濃緑髪と紺碧髪の男性2人がいた。


「ヴァルグード様、お帰りなさい。水路は開通しましたか?」


「開通したよ、でも村の側にね。村の中には引き込んでないよ。その2人は?」


「それでも、井戸もありますし問題ありません。おっと、ご紹介致します。文官として派遣されたアルナート・サヴォワとラッザリオ・リオムールです」


「サヴォワ男爵家3男アルナートと申します。宜しくお願い致します」


「リオムール騎士爵家の次男ラッザリオと申します。以後宜しくお願い致します」


「こちらこそ宜しく」


「ヴァルグード様、用件は水路のお話しだけでしょうか?」


「いやっ、それだけじゃ無いけど……んっ」


「……。ウィリアム、2人を仕事場になる役場へ案内してやってくれ。


「畏まりました。ではお二人共、役場にご案内致します。こちらへ」


アルナートとラッザリオは一礼して、ウィリアムと執務室を出ていく。


「それで、お話しを伺いましょう」


「オデットとエーデルトは俺の能力を知っているね」


それを聞いたオデットが、


「全て知っている訳では無いでしょうが、人外のやらかしを拝見していますので、逆に何が出来ないの知りたいぐらいです」


「確かに、エンシェントドラゴンに転移スキルを伝授されるぐらいですからね」


「なっ、ふう〜。何があってもと言いましたが、どうすればドラゴンに会い、それでいて無事で居るだけでも奇跡ですのに、転移スキルの伝授ですか!驚きを通り越して呆れますね」


「実は、私もヴァルグード様の護衛として、エンシェントドラゴンとお会いしました」


エーデルトはオデットに自慢気に話をする、

。オデットは少し悔しそうに、


「羨ましい。……。一体、何処でどうすればドラゴンに会えるのですか?」


「帝都のダンジョンでね。落とし穴の罠に掛かって落ちた先が何故かマスタールームでそこにダンジョンを管理しているダンジョンマスターがエンシェントドラゴンだったんだ。

しかも、入れたのに出るには転移スキルが無いと言われて、エンシェントドラゴンに教えて貰った。

この話はまた今度ゆっくり話すよ。それより僕の能力で遠視というスキルが有るのだけど、それで西の戦況を見ているとどうも帝国軍は負けるかもしれない」


「と云いますと。」


「火力が王国軍と帝国軍では違い過ぎる。しかも、領都で攻防を繰り広げているけど領都でどれ程の帝国民が残っているか分からないから帝国軍は広域魔法等の思い切った攻撃が出来ない。それに比べ、王国軍が占領したとはいえそもそも自分達の領土では無いし、向かって来るのは全て敵だから攻撃に遠慮が要らない。しかも、爆発の力をうまく使って玉を飛ばしたり、捕虜に括り付けて自爆させたりするから、帝国軍の被害も甚大になってくる。このままだと負けるね」


オデットとエーデルトは顔を見合わせて、溜息を吐く、そして、エーデルトが、


「また、介入されるのですか?」


それを聞いたオデットが、


「止めても無駄なのは分かっていますので、止めませんが、ご領主様の了解は取って下さいね。そうなると、ご家族とは会わずに行かれますか?」


「そうだね。何言われるか分からないし、言ったら止められるでしょ」


「夫人は必ず止めるでしょうね」


「だから、オデットには申し訳ないけど僕の所在問い合わせがあったらダンジョンに潜っているとしておいて欲しい。それと、ウェルウィンとムスカーノを僕の専属護衛として転籍届を出しておいて。それで、エーデルト、ウェルウィン、ムスカーノを連れて西に向おうと思う」


「畏まりました。こちらは上手くやっておきます。それと、ガルチ村の元村人が移住希望を出していますが受け入れて宜しいですか?」


「構わないよ。希望する住居を充てがってあげて、職業も最悪畑はあるから、それも充てがって良いよ」


「畏まりました」


「エーデルト、ウェルウィンとムスカーノを僕の部屋に呼んで来て」


「了解です。服装はどうしましますか?」


「冒険者の装いで、僕の上げた剣やアイテムバックも忘れないように伝えて」


「畏まりました」


「オデット、申し訳ないけど後をお願いね」


「こちらは上手くやっておきます」


こうして、西の戦場に再度赴く為、執務室をを出て自室に戻る。そして暫くすると、エーデルトがウェルウィンとムスカーノを連れて私の部屋へやって来た。


「ちょっとここで待機していて、父上に話をして来るよ」


私は護衛達にそう告げると、遠視で父ティモンを見つけ〝転移〟した。



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