代官

第29話 ガルチ村に出発

出発当日になり同行する人員は

副代官として副騎士団長オデット

護衛騎士エーデルトはそのまま村の自警団長になってもらう。

執事ウィリアムは見習いだったが今回私付きになることで正式な執事に就任

メイド3名 アリッサ エマ サリーの3人は村に定住してくれる事になった。

使用人6名の内、テリーとハンスは定住組で残りの4名は家族が居るので今回は保留。

第10小隊の騎士10名は2年の任期で村に滞在して、2年後は別の小隊と入れ替わる。


エントランスに全員が揃い、私と父ティモンが階段を上がって皆を見下ろす。


「今回、不幸のあったガルチ村を復興すべく皆に集まって貰った。

息子のヴァルグードは若干5歳と若輩者だが、身内贔屓ではなく、本物の実力を持って今回の責任者に据えた。

副団長が補佐するので、心配は要らない。

皆にはそれなりの給金も提示している。

不満がある様なら遠慮なく申し伝える様に。俺からは以上だ。  ヴァルグード。」


「今回の復興は村民が不在での作業になります。

全ては自分達だけで生活をしなければいけなくなります。

些細なことが後後の問題にならない様に、皆で励まし合いながら頑張っていきましょう。

では出発します。」


馬車は3台用意していただいた。

2頭曳箱馬車が2台分と2頭曳幌馬車が1台

箱馬車の1台目は、私と副団長オデット、エーデルト最後にウィリアム

箱馬車の2台目は、メイド3名。

使用人は馭者と交代要員で各馬車に2名

騎士は馬で移動という布陣で移動する。

馬車に乗り込もうとしていると、家族が集まって来た。母アリーシアが


「小さいうちから親と離れるなんて、ティモンは本当に薄情だわ。身体には充分気をつけるのよ。私達は直ぐには助けに向かえないのだから。キチンと連絡も寄越すのよ。」


兄カリアスは


「来年王都に国が運営する学園が設立されるそうだ。嫡男はそこに強制で入学らしいので10歳になったら王都に向うことになる。

そうなるとなかなか会えなくなるからちょくちょく戻ってこいよ。」


最後に姉ソフィアが


「ヴァルちゃ〜ん、ヒックッ。ヒックッ。すぐ会いにいぐがら〜。」


「皆んな心配してくれてありがとう。

ちゃんと顔見せに来るから心配しないで!

じゃ、行くね。 出発!」


と言って屋敷玄関から東門似向かって出発した。すると、エーデルトが


「何故、東門なのですか?」


と質問してきた。


「ちょっと東の役所に用事あってね。」

東の役所にはあの後、

中央の役所から騎士爵の役人が行政長をしている。


「もしかして、アイゼルですか?」


「そうなんだ、孤児の引率を頼んでおこうと思って。」


「それは、良いですね。」


そうして、東の役所に到着して受付でアイゼルを呼び出した。

アイゼルが来て、


「今回はどの様なご要件でしょうか?」


「実は、孤児のガルチ村への移住計画の責任者をアイゼルにてお願いしよう思って来ました。」


「えぇ!私がですか?」


「そうです。別途、給金は支給します。父が。」


「分かりました、孤児の件お引き受け致します。」


「それは良かった。来年の春には希望者を募って連れて来れる様に準備しておいて欲しい。」


「畏まりました」


こうして孤児の受け入れ体制を整える準備をアイゼルに任せ、東門に向うと何人かの子供達が馬車の前に飛び出して来た。


「お願いがございます!!」


馭者が慌てて馬車を止め、


「危ないじゃないか!!

轢いてしまうとこだったぞ!!」


女の子3人と男の子1人が馬車の前に座り込んで、行く道を塞いでいる。

副団長オデットとエーデルトが馬車を飛び出し子供達の所に駆け寄る。

副団長オデットが


「危ないぞ! どうしてこんな事をするんだ。」


先頭の女の子を問い詰める。


「私は、孤児院でヴァルグード様ヘ受け答えした、シーラといいます。私達4人は既に成人の儀を受けているのです。

ですから孤児院を出なければ行けないのですが、娼館に売られる予定だったので受け入れ先が決まっていないのです。

男のベリックは職業が農民なので冒険者には不向きで彼も何処にも行けないんです。どうかお願いします。ガルチ村に連れて行って下さい。」


それを聞いたエーデルトが馬車に戻ってきた。


「ヴァルグード様、どうなさいますか?」


「これは、領主の息子としては受け入れない訳には行かないよね。副団長を呼んで。」


「畏まりました。」


エーデルトが副団長を呼びに行く。

入れ違いに副団長オデットが馬車に来る。


「ヴァルグード様、連れて行かれますか?」


「事情を聞いて、こちらの落ち度なのだから受け入れないと不味いでしょ。」


「そうですね。 事情が事情なだけに無視出来ませんが直ぐに従事させる仕事がありませんし移動手段の問題もあります。」


「幌馬車に乗せていくしかないね。」


「しかし、幌馬車には食料が満載です。

人の乗るスペースはありません。」


ここでインベントリの情報を副団長オデットに伝える事にする。


「副団長、誰にも話してないことなんだけど僕は異次元収納スキルを持っているんだ。」


「それはっ!! アイテムバックと同じ機能をスキルで使えるという事ですか!!

そんなスキル聞いた事もありません。」


「でね。道具屋に行ってアイテムバックに似せた鞄を至急買って来てくれないだろうか?

それをアイテムバックと偽って食料を異次元収納に入れて仕舞うから。」


「畏まりました。

私が、購入に行ってきます。」


「取り敢えず、ここで何かする訳には行かないから、移動して東門を出ておくので、鞄を購入して追い駆けて来て欲しい。」


「そうですね。ここに居ては何も出来ませんね。  では、行って参ります。」

そうして副団長は道具屋に向かった。

私は、馬車を出て子供達の所に向うと


「取り敢えず、ここで立ち往生していても、通行の邪魔だし埒が明かないから東門を出て、相談しよう。

馬車の後から付いてきてくれるか?」


子供達は頷く。

馬車に戻り、出発するように指示を出す。

東門を出て北側ヘ進路を変えて暫く行った先で、副団長オデットを待つ。

暫くして副団長が到着した。


「それらしい物は、コレしかありませんでした。」


それは、革製のくすんだ灰色をした肩掛け鞄であった。

それを受け取り副団長は騎士達を先頭の箱馬車の周りに集めた。

エーデルトも馬車を出て副団長の横に並ぶ。

騎士達も馬を降りて2列横隊に並んだ。

その間に私は、馬車を降りて幌馬車に向かう。

幌馬車の幕をめくり、車内に身体を

ねじ込むと「〝インベントリ〟」と唱えて食料品をどんどん放り込む。

その間、副団長オデットが、


「傾注、皆も分かっていると思うが同行者が増えた。孤児院の被害者達で就職も出来ず途方にくれているというので、ガルチ村の住人候補として向かい入れる事になった。

しかし、ガルチ村はまだ復興前であるから、ここで小隊を2つに分けることにする。

ヴァルグード様の護衛任務の班と少女達の護衛の班に分かれて貰う。

というのも、ヴァルグード様はここから直接道を作りながらガルチ村に向う。

かなり危険が伴うので少女達とメイド、使用人はロスランを経由して向かってもらう。

ロスランには小隊長以下5名で、直接は4名が向う。以上」


『了解』


こうして、2班に分けて移動することになった。

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