第115話 領都奪回戦を観に行く
テーブルに手をついたお歴々を纏めて領都にある領主城の屋上へと〝転移〟してお連れすると、父ティモン以外のお歴々は啞然とした顔でテーブルに手をついて固まったまま、その場を動かずにいたが、父ティモンが屋上の縁へと移動を始めると、辺境伯と方面長も動き出し父ティモンの後を追った。
それに追従して他の領主達も部下を連れて辺境伯達を追い掛けて、屋上の縁へと移動して行った。私も父ティモンの側に移動して戦いの様子を伺う。
「ドーン。ドーン。ドーン。」
と大砲を打ち出す音が響き渡り、
「ビュオーン。ビュオーン」
と、城壁に大砲と共に設置された大型バリスタの矢が、城壁に辿り着こうと進んでいる帝国軍の前衛を吹き飛ばしていく。それを見ていた父ティモンが、
「あれじゃ、何も出来ずに兵を消耗するだけだ」
父ティモンの言葉通り、帝国軍は弓矢の射程まで陣を張れず、魔法も届かない距離で何も出来ないでいる。
しかし、王国軍の大砲やバリスタの矢は届いてしまう為、どうにも出来てはいなかった。
すると、暫くして帝国軍は更に後退して、敵の攻撃が届かない所まで退陣してしまった。
父ティモンがそれを観終わりテーブルへ戻ろうとすると、皆もそれに倣ってテーブルへと移動した。
私は結界を解除して、
「皆さん。戻りますのでテーブルに手をついて下さい」
と声を掛けると、皆黙ったままテーブルに手をつく。全員がテーブルに手を付いたのを見届けると、「転移」を発動させて、会議室へと戻った。
会議室へと戻って来ると、皆は定位置へと移動し居住まいを正すと、辺境伯を見詰める。
辺境伯は、
「様々な事が起こり過ぎて言葉を失ってしまったが、このままではブシャール辺境伯領都の奪回は難しいと思う。あの岩を打ち出す筒や、バリスタはいつか打ち出す物が無くなるだろうが、それがいつになるか分からない。そのうちに、周囲に散った王国軍が領都の外側に参集すれば、我が方は挟撃されてしまうであろう。リートゥス卿、特殊スキルをお持ちであるご子息をお借り出来まいか?」
「ヴァルグード、ご指名だがどうする?」
「王国軍は、捕虜を自爆兵器として使用する様な、悪逆非道な
それを聞いた辺境伯が、
「本当に6歳か?リートゥス卿、どの様な教育をすると、この様な聡い子に育つのか、是非ご教授頂きたいものだ」
「ラウジッツ卿、あれは突然変異した特殊個体ですから、教育など全くしておりません。自分で勝手に身に着けておるのです」
「特殊個体とは……。うふっ、おっと失礼。それでは、ヴァルグード君の転移スキルを使った作戦を思案しようではないか」
それを聞いたアルヴレ方面長が手を挙げて、
「発言宜しいかな」
それを辺境伯が許可する。
「アルヴレ方面長、どうぞ」
「今、ロデムラート砦に我ら帝国軍はほぼ全ての兵士達を駐留させてしまっている。ここダビン港町には我が幹部を護衛する、50名程しかここにはいない。帝国軍としてお恥ずかしい限りだが、それで私が言うのもなんだが、以前ヴァルグード君が王国軍から物資を奪取していたと思うがそれを領都でもやってはくれまいか?」
それを聞いた辺境伯が、
「そうか。転移スキルがあればそんな事が可能なのだな。であればヴァルグード君が持っている肩掛けカバンはアイテムバックと云う訳だな。容量はどれ程かな?」
「家1軒程です。ですから、僕の護衛も持っているので連れてい行きます。エーデルト構わないよね」
「勿論同行致します」
「父上、宜しいですか?」
「構わんが、騎士団長も連れて行け」
「ありがとうございます。それで、辺境伯様、ここは富の分配を考えて、各領主の方々にも参加を促してはと思いますが如何ですか?」
「ほう。それは良いな。皆、アイテムバックを持たせて最大5名の参加を許す。2万程の王国兵がいる領都だ。
「畏まりました」
ムスタートと呼ばれた辺境伯の側付き騎士が会議室から出て行く。それを聞いたアルヴレ方面長が、
「帝国軍からも5名出させて頂きたい」
それに辺境伯は賛同する。
「構いませんよ。ヴァルグード君、何名程の同行出来るのかね」
「100名程は大丈夫でと思いますが、やった事がありませんので、多分としか」
「100名か十分だな。それでは、諸卿は準備に取り掛かって頂きたい。残りの男爵家。騎士爵家には私から話をしておく。再集合は屋内鍛錬所にて夜中の12:00とする。以上だ」
こうして会議は終了した。私は父ティモンに連れられて、父ティモンの滞在部屋へと戻って来る。部屋に入ると、ウェルウィンとムスカーノが扉横の壁際に直立して待機していた。
父ティモンは1人掛けのソファーに座り、
「ここにいるメンバーで、ヴァルグードの転移スキルを使い、今夜物資の奪取に向かう、騎士団長は俺のアイテムバックを持って行け。後、1名はどうするか」
それを聞いて以前同行したダドリオを思い出し、
「父上、偵察班のダドリオではどうです?」
「おう、そうだった。あ奴はヴァルグードに同行して転移していたのだったな。エーデルト、読んで来てくれ」
「それは構いませんが、うちの騎士団が何処にいるのか分かりません」
「それもそうだな。騎士団長頼めるか?」
「畏まりました。直ぐに連れて来ます」
そう言って騎士団長は部屋を出て行った。それを見届けて父ティモンは、
「左右の部屋が空いているから2人ずつ別れて、滞在してくれ。出発は深夜12:00だ。遅れるなよ」
「分かりました。僕とエーデルトは右側に、ウェルウィンとムスカーノは左側の部屋で滞在しよう。では父上、失礼します」
「「「失礼致します」」」
こうして、私と護衛達は部屋を出て、左右に別れ、各々の部屋へと入って行った。
部屋に入るとエーデルトが、
「ヴァルグード、深夜の作戦行動ですので、もうお休み下さい」
「分かった。早いけど寝るとするよ。時間になったら起こして」
「畏まりました」
そして私はベッドで横になり、そのまま眠りについた。
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