第116話 領都への物資奪取作戦①
「ヴァルグード様、起きて下さい。時間です」
身体を揺すられ目を醒ますと、
「う〜ん。もう時間?」
「未だ少々早いですが、お食事を取って頂こうとご用意しましたので、起きて頂きました。兵舎の食堂から譲って頂いた食事ですので、味は保証出来ませんが、空きっ腹より宜しいかと思いまして」
「ありがとう。頂くよ」
その場にあるデスクの椅子に座ると持って来て貰った食事を食べる。食事を終わらせると、全身に〝浄化〟を掛けてスッキリさせて革鎧を来て小手を装備すると、エーデルトを伴って部屋を出る。すると廊下でウェルウィンとムスカーノが待っていたので合流する。
兵舎から外に出ると、騎士団長とダドリオが待っていた。そして騎士団長が
「ヴァルグード様、集合場所へご案内します」
「お願いします」
こうして全員と合流した俺は、騎士団長の先導されて、集合場所である屋内鍛錬所へと到着した。中に入ると、40人程の人達が集まっていた。
「騎士団長。あの人達は?」
「男爵家と騎士爵家の当主が参加なされています。騎士爵家は皆さん当主が1人で参加されるおつもりの様です。男爵家も当主の方々と1名ずつ騎士をお連れになっている様ですね」
「そうなんだ。やっぱりアイテムバックは貴重なんだね」
「それはもう、高価な品物ですから。騎士爵の方々は元近衛騎士団で、隠居される時に直轄領から切り分けた土地とアイテムバックを下賜されてそこの領主を任された人達です。一応世襲出来ると云われています、村一つですからね税収が落ち込めば返上される方も多いみたいですよ。ですから、この様な機会は是非とも参加したかったと思われます」
「それで、当主自ら参加しているんだ」
そんな話をしながら待っていると、続々と参加者が集まって来た。
騎士爵は各1名で合計25名
男爵家は各2名で16名
うちのリートゥス伯爵家が5名
ヴァイマル伯爵が5名
シェーンブルク伯爵が5名
ノルトハイム子爵が4名
ヴュルテンベルク子爵が3名
ホーエンローエ子爵が3名
ラウジッツ辺境伯家が5名
帝国軍が5名の合計76名が参加する作戦となった。
ラウジッツ辺境伯とアルヴレ方面長が現れて、辺境伯から、
「皆、良く集まってくれた。今からリートゥス伯爵家のヴァルグード君が習得した、転移スキルで皆をブシャール辺境伯領都の領主城へと送って貰い、その後王国軍の物資を奪取して戻って来て貰う。詳細についてはヴァルグード君お願いする。良いか!反論異議があるものは今直ぐ立ち去っても咎めはせん。しかし、奪った物資は各自の褒賞となる。分かったら、退去して良し」
皆、動こうとせず声も発しない。誰からも何の反応も無い為、辺境伯は、
「それでは、皆参加で良いな。くれぐれもヴァルグード君を見下し反抗することの無い様に肝に銘じて欲しい。ではヴァルグード君」
辺境伯に促された私は、
「リートゥス伯爵家が次男のヴァルグードです。これから転移を行って領都の領主城へと向かいます。転移する場所は地上から誰も行けない、城の屋上になります。そこに着きましたら小グループで移動しますので、他の方はその屋上で待機となります。その後、その小グループを交代しながら物資の奪取を行って行きます。
先に順番をお知らせいたします。
騎士爵の皆さんが一番、そして爵位が下から上がる順で作戦を行います。帝国軍の方々は最後とさせて頂きます。その理由は後程お知らせ致します。何かご質問はありますか?」
質問が無いか、発言を促したが誰も声を挙げないので、
「ご質問が無い様ですので、早速領都へ転移します。先ず、リートゥス領軍の皆は僕に触れて下さい。そして、皆さんリートゥスの騎士達に触れて繋がって下さい。では行きます〝転移〟」
皆が接触しているのを確認して領都の領主城へと転移した。屋上に転移すると周囲は月明かりがある為、真っ暗と云う訳ではなかったが、顔が認識出来る程では無かった。
「それでは、極力声を出さない様にお願いします。声を出すのであれば小さな声でお願いします。ここは敵地と云う事をお忘れなく」
私は周囲を遠視で見渡し、当たりをつけては透視を重複発動させて、物資の場所を探る。
そして物資のある倉庫を見つけると、
「それでは始めます。騎士爵の皆さん、人数が多いので、9人先に行きます」
そう言うと、私の身体に接触して貰い。城の裏にある大きな倉庫の中へと転移した。
そこは巨大な倉庫で中は真っ暗なので「光球」を出し周囲を明るくすると、連れて来た皆さんは、
〈これは凄い〉
〈こんなに、麻袋が積み上げられて……。〉
〈うわ〜ぁ。〉
「皆さん。取り放題ですから、どんどん詰めて行って下さい」
物量に固まって、眺めていた皆さんに声を掛けて作業を
そして、入り切らなくなっては、待機している私の下へと戻って来た。
「ヴァルグード君、かなりの食料を詰め込む事が出来た。ありがとう」
〈本当に〉
〈これだけあれば、収穫まで何の心配も要らないな〉
〈この戦争で最初は持ち出しをどうするか頭を抱えたが、それ以上の物資を持ち帰るなんて夢の様だ〉
〈正に、持って来た物資の何十倍も持って帰えるとは、家の者に自慢できる〉
アイテムバックに入り切らない程の物資を詰め込んだ騎士爵の皆さんはホクホク顔で喜んでいた。
「では、皆さん。このままダビン港町の鍛錬所に転移します。僕に触れて下さい〝転移〟」
こうして物資奪取の第一陣をダビン港町へと送り返して、皆の待つ屋上へと転移した。
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