第18話 ガルチ村奪回戦

SIDE:キール

一撃でゴブリンが殲滅してしまったロスラン攻防戦に何故か心に隙間風が吹き荒ぶギルド長のキールです。


懸命に野戦陣地のを作り、襲撃を心配していたのに蓋を開けてみたら冒険者の活躍する場は全く無かった。

良いんだよ。

被害無く街の防衛が出来たのだから、こんなに良い事はない。

良い事なんだが・・・心の隙間風は留まることを知らない。

もういいや。帰って寝よ。


副ギルド長に後始末を任せて、帰って寝た。


翌朝、冒険者ギルドに出勤する。

「おはよう」

「おはようございます。」

「副ギルド長は?」

「副ギルド長は、執務室で仮眠されていると思います。」

「そうか。昨日は大変だったからな。

今日は何人出勤してる。」

「え〜と 解体グループが3名。

受付孃が6名  経理職員3名

調査部職員10名 審査部職員が3名です。」


「分かった。

受付が、昨日の防衛作業依頼の支払い業務でてんてこ舞いになるから職員全員に受付業務の手伝いに回って貰ってくれ。

参加人数は228名 皮袋を用意出来るか?」


「コイン入れの皮袋は、副ギルド長が商業ギルドに作成依頼を500枚依頼してました。

今日取りに行く予定にしていましたから、準備出来ると思います。」


「誰かに取りに行かして、銀貨の両替も一緒にしておいてくれ。

商業ギルドには、あと200枚発注お願いしてくれ。」


「わかりました。」

これで、今日は廻るはず。

今日の業務指示を行ったあと、冒険者ギルドを出て、代官屋敷に向かった。


代官屋敷で、領主様からガルチ村の奪回を明後日決行する旨を聞かされた。

「それで、宿営地の復旧をお願い出来ないだろうか。

ダンジョンが有るという事は、その宿営地にも宿が必要になって来る。


職方ギルドに声を掛けて本格的に開発をしたい。」

「石壁で囲ってしまう感じですか?」

「先に騎士たちに土壁を作らせるそれを石で囲って貰う作業で、冒険者ギルドには、石工や大工の護衛で日替わり2パーティー出して欲しい。」

「分かりました。依頼書の作成はお願いします。」


「もちろん。

それと南門の復旧を明日魔力抜きするからそちらにも魔法使いの手配をお願いしたい。」

「そちらも分かりました。

魔法使いに声を掛けておきます。」

代官屋敷を出て、冒険者ギルドに戻ってみると、そこは戦場だった。


ごった返す受付に辿り着き、声を張り上げる「注目!!先ず、昨日参加した連中は右の3つの窓口に綺麗に並べ!!

魔法使いは野戦陣地の解体依頼がある。

一人20万ダラ受ける奴は、並ぶ時にギルドカード出しとけよ。

それと宿営地の復旧で護衛依頼が来ている。

2パーティーの募集で1パーティーで1日120万ダラだ。 これはC級以上の依頼になる。

参加できるパーティーは受付に声を掛けてくれ。以上」

こうして、支払い業務を手伝いながらその日は終了した。


翌日は魔法使い16名が解体依頼を受けてくれた。

早速、南門で騎士団と合流して、南門の復旧を行って、復旧が終わると南門の扉が開いた。


そうしている内に石工と大工の一団がやって来た。

冒険者もその後ろから見えて来る。

C級冒険者パーティーの春雷の風が引き受けた様だ。

「ギルド長、護衛冒険者は何処だ?」

「あぁ、後ろに来ている」

「職方ギルドの副ギルド長をしているミレックだ。

俺が一団のリーダーを引き受けている。」

「C級冒険者の春雷の風のリーダーのエイトだ。宜しくな。」

「後は追々、紹介してくれ。

騎士達も同行するから急いで門を出よう。」

宿営地に向かう騎士達に職方と冒険者を紹介して、早々に出発してもらった。

明日は、いよいよガルチ村の奪回戦だ。


翌朝、声を掛けたB級冒険者パーティー南門で待つ。

すると、騎士団がやって来た。

「ギルド長、何パーティー同行しそうかな?」と領主様が声をかけて来た。

「少なくとも3パーティーは引き受けてくれましたから、3パーティー以上にはなると思います。」


「分かった。

我々は先に進んでおく。

斥候の出来るグループはいるか?」

「はい。村を監視してた冒険者パーティーがいます。」

「夕方には近くで待機したい。

追いつけるか?」

「大丈夫です。 追い付きます。」

騎士団は、先に進んでいった。


そうして5分後に5パーティーが

集まってくれた。

〝蒼き大地〟

〝静穏の観察者〟

〝炎の財団〟

〝漆黒の軌跡〟

〝蒼碧の戦士〟

以上5パーティーが集まってくれた。


「早速だが。

騎士団がガルチ村に向けて10分前に出発している。

ガルチ村手前1kmに集合する予定なので、少しでも追い付く様に急ぎたい。

良いか?」

『おう』

云っても、B級冒険者パーティーだ。

駆け足で進む。

すると、修復している宿営地で合流することが出来た。


少し休憩を取ってから斥候スカウトのいる

〝静穏の観察者〟と〝漆黒の軌跡〟2パーティーが先行して進む。

ガルチ村の手前1kmのところで騎士団と俺及び3パーティーは2パーティーが戻って来るまで待機していた。

夕日が落ちかかって来た時に、2パーティーは戻ってきた。


「報告します。

ゴブリンは500匹程ゴブリンライダーが50騎

レッドキャップが100匹ホブゴブリンが20匹ゴブリンメイジが20匹ゴブリンジェネラルが4匹確認出来ました。

代官屋敷が覗けなかったので、生存者は不明ですが見える限りではいません。」


騎士団長が

「領主様、生存者が居ないのであれば、魔法である程度数を減らしたほうが良いと愚考いたします。」

「そうだな、無理に近接戦闘をするよりも安全策を取りたい。

しかし、地下室がある可能性も念頭に置かないと行けないから建物を壊す魔法は使えない。

難しいな。ギルド長はどう考える。」


「ゴブリンは夜目も効きますからね。

夜襲を仕掛けてもあまり意味がないし、」

「夜目か、夜間にフラッシュを使って目潰しをするのはどうだろうか。」

「警告を怠らなければ有効だと思います。」

「危険になれば広域魔法で殲滅しよう。

では行動開始は3時間後ゴブリンが寝静まった頃に攻撃する。」


暫くして夜も深くなって来て、領主様から、

「それでは、始めるが先ずは、魔法は無しで剣での攻撃に集中する、では、全員抜剣。」


騎士団長が

「冒険者の皆は打ち漏らした魔物を片付けてくれ、魔法はなるべく使わないように、騎士達は決められたバディから離れず2人一組の移動原則を忘れるな」

そして見張り番のゴブリンを投げナイフで仕留めると騎士団は村になだれ込んだ。


騎士団は10個の小隊が放射線状に散っていき2人一組で民家に突入する。

「ザシュ」という音と、鎧の擦れる「カチャカチャ」の音だけが村に響く。


ある民家に騎士が突入すると

「ドーン」

という音と共に騎士が吹き飛ばされ来た。

〝蒼き大地〟には治癒士ヒーラーがいるので、吹き飛ばされた騎士に向かって貰った。

「〝蒼き大地〟は吹き飛ばされた騎士をこっちに連れてきてくれ。」

『おう』

今の音でゴブリン達は起きたみたいで、奥の民家からワラワラとゴブリン達が出て来た。


〝蒼き大地〟パーティーは吹き飛ばされた騎士とその相方を連れてこちらに来た。

〝蒼き大地〟の治癒士ヒーラー

「何処か痛いところはありますか?」

と尋ねると、その騎士は「顔を」

と言っていたので、よく目を凝らして見ると

鼻から下が焼け爛れていた。


「今から治癒魔法を掛けます。

【我が手に宿りし癒やしの泉よ。

 患者の苦痛を取り払え〝ヒール〟】」

すると徐々に焼け爛れていた所が治って行った。 騎士は、

「ありがとう、痛みが無くなったよ。」

と言って相方に声を掛けて村へと進んで行った。


村からは

「傾注!全員集合!フラッシュ用意!!」

という領主様の声が聞こえる。

「【光よ 煌めく閃光を 顕現せよ。フラッシュ】」

「目を瞑れ!!」

物凄い光が辺を包む。

瞼を綴じていても光っているのが分かる。

そこら中で、ゴブリンの絶叫が聞こえる。


『ギャギャギャギャァ゙~』

目を開けるとゴブリン、レッドキャップ、ゴブリンライダーの乗る狼までのた打ち回っていた。領主は命令を発した。


「殲滅せよ!! 吶喊!!」

騎士達は転げ廻って居るゴブリン達の首や頭を狙って剣を刺してまわっていた。

「良し、俺達は村の周囲に残党がいないか見回ろう。」

『おう』

すると木から堕ちたのであろうゴブリンアーチャーが至るところでうずくまっていた。

それらを剣でトドメを刺す。

弓の弦も切り使えなくする。

そして、領主様と領主屋敷前で合流した。


「どうもゴブリンジェネラルが3匹残って居るみたいで、配下も何匹か残っているみたいだ。」

どれを聞いた騎士団長が

「領主様、代官屋敷なら建物が確りしていますから風魔法で追い出してはと愚考いたします。」


「良し!騎士団長、第1小隊を連れて代官屋敷の探索を開始せよ。」

「畏まりました。 第一小隊2列縦隊で行進開始。」

騎士団長達が各部屋を探索し始める。

すると風魔法で切り刻まれるゴブリン達が窓からみえる。


「退却!!」

騎士団長の声が響き渡る。

すると、騎士達が玄関から出てきた。

その後をゴブリンジェネラルと騎士団長が組合って出て来た。騎士が騎士団長の両脇に立ち組み合っているゴブリンジェネラルの左右脇腹に剣を斜め上方向に刺し上げた。

剣の6割程を、押し込み捻りながら素早く引き抜いた。


騎士団長はゴブリンジェネラルの下腹部に足を入れ思いっきり蹴り出した。

ゴブリンジェネラルは建物の中に倒れ込んだ。

その後ろから違うゴブリンジェネラルがやって来た。

騎士団長はまた玄関で組み合って外に出ると、同じ作業でゴブリンジェネラルを突き刺し騎士団長が建物の中に蹴り出す。


「騎士団長、これで終わりか?」

領主様が騎士団長に尋ねると、

「後1匹が見当たりません。」

と返事が帰って来た。

「後見ていない部屋は何処だ。」

「トイレと厨房です」

「第2小隊は俺と一緒に厨房探索だ。

付いて来い。」


そして厨房から

「ガラガラガッシャン。」

「ウギャーーァ。」

という断末魔が聞こえた。

そして騎士が

「生存者です。

地下に、地下に女子供が生存しています。」

これは、他も探索しなくては。




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