第60話 畑の開墾

6歳の誕生日を迎えたが何もイベントは起きず、今日も父上と周囲の竣工した民家の内見を行っていた。

この建物の内見が終われば、工事完了として、1件につき50万ダラの支払いが待っている。

90軒で締めて4,500万ダラである。

父と代官屋敷に戻り副代官のオデットに90軒の完了を報告した。

「民家の建築が終了したね。 どれも文句無い良い出来で満足だよ。」

すると父ティモンが、

「村の復興としては満足行く出来なんだが、

作物を作る畑が無いのは残念だな。」

「父上、それに関してはこれから始めようと思っています。 明日にでも領主屋敷裏の畑みたいに南側を開墾しようと思っています。」

「それならば、領都から麦や野菜の種籾を用意させよう。」

「御領主様、ヴァルグード様、畑の世話をする者を手配してから種蒔きして下さい。

でないと、ここに居る誰も世話は出来ません。 それと、ウィリアム職方ギルドのカイルを呼び出してくれ代金の支払いをする。」

「畏まりました。」


応接室に職方ギルドのカイルに来て貰い代金の支払いを行う。 父ティモンが、

「職方ギルドのはカイルと云ったか、この度の仕事には満足している。

成功報酬を用意した、金額をこの場で確認することを許す。 持って行きなさい。」

カイルは、テーブルにある大金貨4枚 金貨5枚を確認して革袋に仕舞い、

「確かに受け取りました。」

と言うと、副代官オデットが、

「この領収書にサインをしてくれ。」

と言って書類を2通差し出す。

その2通の領収書にカイルがサインをして、副代官もサインをする。

そして各自1通ずつ持って行く。 最後に私は、

「これまで、ご苦労でした。

また、呼ぶこともあると思います。

その時は宜しく。」

と言って父と共に応接室を後にした。

そして、南側に畑を作るため、父ティモンと南門に向かった。

「父上、この時期は雨が降ると聞いていたのですが、小雨が夜にパラつく程度しか降っていません。 こちらはこの天候が普通なのですか?」

「いや今年は異常だな。それでもボロッカー山地の地下水から井戸や川で水の確保が出来る我が領はまだ良いがね王都より西側の領地は厳しいかも知れない。」

「その水脈も厳しいかもしれません。

井戸水の水位が下がっていると報告を受けています。」

「どこかで大規模な広域魔法を使ったのかも知れないな。

天候が変化する原因は魔法が関わっていることが多い。 大規模な魔法になれば、湿度や気温、風向きさえ変えて仕舞うからな。」

「そうですね。そうなるとエルファルム国かサンスクード王国ですか。」

「おっ!勉強しているな。しかしエルファルム国は無いな。 あそこはエルフの国で他国には興味が無いし、大規模魔法を使う動機が無い。

サンスクード王国は我が帝国と殺り合ってばかりだからな。 奴らが何かしらの大規模魔法を使ったんだろうな。

こっちは東の端だからな、情報が届くのが遅れる。」

「北のミッシア連邦国は大丈夫でしょうか? 小競り合いがあると聞いていますが?」

「あっちは獣人の国だから、魔法を使う種族は少ないし部族単位での行動を優先する。 それで国内の意見が纏まらない、国全体で戦争をおこす体制にはならないから、盗賊や海賊行為が関の山。

それでも被害にあう辺境伯には困った話だがな。」

そんな、会話をしているうちに、南側の畑候補地に到着した。


地面に手を当て、練気力と神力を流せるだけ流して「耕土」と唱える、すると地面が盛り上がりながら、フカフカな畑に変わるが所々ところどころで土が盛り上がらない。

その場所に行ってみると、岩が埋まっているので、「分解」を唱えて岩を砂に変える。

こうして、森の手前まで畑に変えながら進んでいくと、

「森の境界に塀が欲しいな。」

父ティモンがつぶやいた。

「どのぐらいの高さが必要ですか?」

と尋ねると、

「2mあれば良いのだが出来るか?」

「問題ありません。」

そう答えて砂を出して森の境界に2m厚み1mの塀を作って行った。

「父上、畑を囲わなくて良いのですか?」

「残りの囲いは賦役としてさくを作らせよう。 全てを塀にしてしまうと拡張が出来にくくなってしまうからな。」

「畑は出来ましたが、雨が降らないようでしたら水源が欲しいですね。」

「川はこの辺には無いな。 確かこの辺りも掘ればボロッカー山地からの地下水が湧き出ると思うぞ。」

「そうなんですね。 今度探ってみます。」

そう言って畑作りを続けた。


日も落ちてきて畑作りを終わらせて、屋敷に戻ると副代官のオデットが、

「御領主様、ヴァルグード様、今後の村についてお話があります。

現状、ダンジョンの発見によりガルチ村は中継地としての役割と南側の畑で作物も作れる村となっています。

そうなりますとダンジョンのある山には冒険者が集まって来ると思われます。

冒険者ギルドとの話し合いでダンジョン管理は行政側が行うことが決まりました。

管理するには宿泊施設、買い取り施設、武器や防具の店、食事する場所、さらに役所や門番、自警団の官舎を作らないと行けないのですがどう致しますか?」

「あっ、言っていなかったけど、ダンジョン山の天辺に宿泊出来る小屋と商店に使える建物は建築してあるよ。

天辺に上がる階段の麓にも建物を建設してある。」

「私は、聞いておりませんが。」

「うん、伝え忘れてた。」

「エーデルト、貴様からも報告を受けていないが、貴様は今、自警団団長で私は、副代官なのだが、貴様の上司は私ではなかったかな。」 それを聞いたエーデルトが、

「昔も今も、副代官様が上司です。

そして、すっかり報告を忘れておりました。」

「では、後でゆっくりじっくり時間を掛けて報告とやらを聞くとしよう。」

「エーデルト、お前の作った天辺の村と麓の村は一つの村として考えれば良いのだな。」

「はい、ダンジョンに入る道が有りませんでしたので、山頂を削り、その台地から降る階段を設けて、ダンジョンに入れる様にしました。 そこの天辺の村からダンジョンに向かう階段前に門も設置済みです。

麓の村は道に門を設置していますので。ダンジョンまでには2箇所の門を通らないと行けない様になっています。」

「オデット、村の事はヴァルグードとエーデルトに任せて第10小隊を連れて、明日ダンジョン山の視察に向かおうか?」

「そうですね、視察にお供いたします。」

こうして、今後の話し合いより山の現状確認に御領主と副代官が向かうという事で、話し合いは終了した。

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